社労士が実感した、適性診断×AIが“採用ミス”を減らす理由 ――「違和感は正しかった」と後から気づく前に

杉山 晃浩

面接は成立している。でも、なぜか引っかかる

面接や会話は、問題なく成立していました。
受け答えは丁寧で、言葉遣いもきれい。
条件面についても、大きなズレはありません。
これまでの経歴を見ても、スキル不足とは言い切れない。

それでも、です。

「なぜか、腹の底で引っかかる」

この感覚を、私は何度も経験しています。
そして今回も、同じ感覚がありました。


その違和感を、私は自分で打ち消してしまった

正直に言います。
今回のケースでは、私はその違和感を自分で打ち消しました。

理由は、とても人間的で、そして危険なものでした。

  • 知っている出身校の名前

  • それなりに聞こえのいい職歴

  • 「この分野は得意そうだな」という先入観

気づかないうちに、私はこう考えていました。

「とりあえず、使える分野で得意なことを任せればいいか」
「細かい部分は、入ってからすり合わせればいい」

今思えば、かなり甘い認識でした。

これは典型的な
ハロー効果(Halo Effect)
――一部の目立つ情報に引きずられて、全体を過大評価してしまう心理状態です。


面接の場では、人は「よく見せる」ことができる

冷静に考えれば、当たり前の話です。

面接とは、
「普段の姿」を見せる場ではありません。
「よく見せる努力」をする場です。

  • 無難な受け答え

  • 角の立たない表現

  • 期待されそうな価値観の提示

これは嘘ではありません。
でも、「本音」でもありません。

特に経験を積んだ人ほど、
面接用の自分を演じることが上手い

経営者や採用担当者は、
その“上手さ”を
「優秀さ」や「人間性の良さ」と錯覚しがちです。


数日後に届いた「辞退メール」

面接から数日後、
一通のメールが届きました。

内容は、とても丁寧でした。
言葉遣いも配慮されており、
こちらを否定するような表現もありません。

ただ、結論は「辞退」。

そのメールを読んだ瞬間、
私はこう思いました。

「やっぱりな……」

不思議なことに、驚きはありませんでした。
落胆よりも、妙な納得感がありました。


辞退も、立派な「採用ミス」である

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。

辞退は、悪ではありません。
誰にでも選ぶ権利があります。

ただし、経営の視点で見ると話は別です。

  • 面接にかけた時間

  • 社内で検討した工数

  • 「来てくれるかもしれない」という期待

これらはすべて、コストです。

入社後すぐ辞めるケースだけでなく、
「内定辞退」もまた、
採用ミスの一形態なのです。


人は、面接だけでは見抜けない

私は社労士として、
多くの採用・定着の現場を見てきました。

その経験から、はっきり言えます。

人は、面接だけでは見抜けません。

それは、見る側の能力不足ではありません。
構造的に、無理なのです。

  • 人は演じる

  • 見る側も期待する

  • 情報は断片的

この状態で
「この人は長く働いてくれるか」
「価値観は合うか」
「ストレスがかかったとき、どう振る舞うか」

これらを正確に判断するのは、ほぼ不可能です。


違和感は間違っていなかった。でも、証拠がなかった

今回、私の「違和感」は結果的に当たっていました。

しかし、問題はそこではありません。

その違和感を、
言葉にできなかったこと
客観的な根拠にできなかったこと

ここに、採用の最大の落とし穴があります。

感覚だけの判断は、

  • 説明できない

  • 共有できない

  • 次に活かせない

結果として、
採用基準は属人化し、
同じ失敗を繰り返します。


適性診断×AIは「決断の代行者」ではない

ここで、よくある誤解を一つ解いておきます。

適性診断やAIは、
採用を決めるためのものではありません。

人を評価するためでも、
優劣をつけるためでもない。

役割は、たった一つです。

「違和感を、言語とデータに変換すること」

  • 価値観のズレ

  • ストレス耐性

  • 行動傾向

  • 環境との相性

これらを可視化することで、
「なんとなく嫌な感じ」を
「この環境では合わない可能性が高い」
という判断材料に変えてくれます。


もし、あのときAIに相談していたら

もし、面接前後で
適性診断とAIによる分析を入れていたら。

おそらく、

  • コミットメントの弱さ

  • 環境変化への耐性

  • 長期在籍リスク

こうした点が、
事前に見えていた可能性があります。

結果は、不採用でも、辞退でも構いません。
重要なのは、

「予測できたかどうか」

ここに尽きます。


採用ミスを減らす会社は、「採る前」に力を使う

採用で疲弊している会社ほど、
採用後の対応にエネルギーを使っています。

  • フォロー

  • 説得

  • トラブル対応

しかし、本当にコストを下げる方法は一つです。

採る前に、見極める

適性診断は、
経費ではありません。
経営リスクを下げるための投資です。


社労士として伝えたいこと

これは、人を疑えという話ではありません。

むしろ逆です。

経営者の優しさは、
仕組みがあってこそ、守られる。

性善説だけで採用を続けると、
一番傷つくのは、
実は社長自身です。


感覚を否定しない。でも、感覚だけで決めない

最後に。

私は、経営者の「勘」を否定しません。
経験に裏打ちされた直感は、
ときに非常に正確です。

ただし、これからの時代は、

勘+適性診断+AI
この三点セットが必要です。

次の採用で、
同じ後悔をしないために。

採る前に、見える化する。

それが、
採用ミスを減らす一番の近道です。

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