書類選考から始める会社ほど、応募者の6割を失っています ──中小企業がまずやるべきは「電話」でした
杉山 晃浩
はじめに|応募が来ないのではなく、逃しているだけかもしれません
「求人を出しても応募が来ない」
「良い人がまったく集まらない」
多くの中小企業の経営者や人事担当者から、こうした声を聞きます。
しかし、実際の現場を見ていると、応募自体は一定数来ているのに、採用につながっていないケースが非常に多いのです。
原因は、給与や休日、福利厚生でしょうか。
もちろん無関係ではありませんが、もっと手前に“見落とされがちな致命点”があります。
それが、応募後の最初の対応=書類選考から始めていることです。
第1章|応募者の6割は「書類を出す前」に消えています
採用サイトから応募が入ったあと、
「では、履歴書と職務経歴書を送ってください」
この一言で、約6割の応募者がそのままフェードアウトします。
理由は単純です。
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書類を準備するのが面倒
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仕事が忙しく後回しになる
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他社から先に連絡が来た
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そもそも“そこまで本気ではなかった”
これは応募者の質の問題ではありません。
人間の行動心理として極めて自然な反応です。
にもかかわらず、企業側はこう考えがちです。
「書類すら出さないなら、やる気がない」
「それなら採らなくていい」
しかし、その判断の裏で、
本来は会えば印象が良かった人材を大量に取り逃している可能性があることを、どれだけの会社が自覚しているでしょうか。
第2章|なぜ企業は「まず書類」を求めてしまうのか
書類選考を先にする理由を聞くと、多くの企業はこう答えます。
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効率がいいから
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忙しくて全員に会えないから
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大手もそうしているから
一見、もっともらしい理由です。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
大手企業は、
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知名度がある
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待遇差が大きい
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応募者が企業を選ぶ前に、企業が選ぶ立場にある
という前提条件を持っています。
一方、中小企業はどうでしょうか。
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応募者は複数社を同時に検討している
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企業名で選ばれているわけではない
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最初の対応で「この会社、感じがいいかどうか」を見られている
同じフローを使うこと自体が、すでに不利なのです。
第3章|中小企業の採用は「選考」ではなく「営業」に近い
中小企業の採用は、実は営業活動に非常によく似ています。
営業で考えてみてください。
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問い合わせが来た
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何日も放置する
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まずは資料請求だけ求める
この営業スタイルで、成約は取れるでしょうか。
採用も同じです。
応募が来た瞬間が、応募者の関心が最も高いタイミングです。
このタイミングで企業側がやるべきことは、
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選別
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判断
ではありません。
接点を持つこと、安心感を与えることです。
第4章|なぜ「まず電話」なのか
電話を最初に入れる目的は、合否を決めることではありません。
目的は次の3つです。
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応募してくれたことへの感謝を伝える
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応募者の温度感を知る
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会社の雰囲気を伝える
書類では分からないことが、電話では見えてきます。
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話し方
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受け答え
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応募理由のリアルさ
特に在職中の応募者は、
日中に電話に出られないことがほとんどです。
それ自体をマイナス評価にするのは、完全な誤りです。
出なければ、
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昼休み
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夕方以降
に改めてかけ直す。
それでもつながらなければ、メールに切り替える。
この当たり前の配慮ができているかどうかで、企業の印象は大きく変わります。
第5章|電話がつながらない=不誠実、ではありません
「何度も電話しているのに出ない」
「連絡がつかない応募者はどうするのか」
この悩みもよく聞きます。
結論は明確です。
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電話は応募当日に2回
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翌日に1回
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合計3回程度まで
それ以上は追わない。
その後は、メールで会社見学や業務説明の案内を送る。
それでも反応がなければ、
ご縁がなかったと判断する
この線引きが重要です。
しつこさは、採用熱心ではなく、
企業リスクになりかねません。
第6章|書類選考は「不要」ではありません
ここで誤解してほしくないのは、
書類選考そのものを否定しているわけではないという点です。
問題は「順番」です。
おすすめの流れは次の通りです。
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電話での初期接触
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会社見学・業務説明
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その上での書類選考
書類は、落とすための道具ではなく、
確認するための資料として使う。
この位置づけに変えるだけで、
採用の景色は大きく変わります。
第7章|順番を変えるだけで、採用はここまで変わる
実際に、順番を変えた企業では次の変化が起きます。
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面接辞退が減る
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ミスマッチが減る
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採用までのスピードが上がる
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結果的に定着率も上がる
「採ってもすぐ辞める」
という悩みも、実は入口設計の問題であることが少なくありません。
第8章|応募者対応は「仕組み」で決めなければ続きません
ここまで読んで、
「理屈は分かるが、忙しくてできない」
そう感じた方もいるでしょう。
だからこそ重要なのが、
応募者対応のマニュアル化・仕組み化です。
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誰が
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いつ
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どの手段で
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どこまで対応するのか
これを人ではなくルールで決める。
採用は、属人化した瞬間に再現性を失います。
おわりに|採用が変わるのは「最初の一本」を変えたとき
応募が来ないのではありません。
人がいないのでもありません。
逃しているだけです。
求人条件を変える前に、
採用広告を増やす前に、
まず見直すべきは「応募後の最初の一本」です。
書類ではなく、電話から。
その小さな一歩が、
中小企業の採用を大きく変えていきます。