不採用通知がきっかけで揉める会社の共通点 ──採用対応の“最後の一言”が命取りになる
杉山 晃浩
はじめに|採用トラブルは「入社後」だけで起きるものではありません
「不採用にしただけなのに、なぜか揉めた」
「もう関係のない相手のはずなのに、クレームが来た」
採用の相談現場では、こうした声を珍しく聞きません。
多くの経営者や人事担当者は、採用トラブルというと
入社後の問題を思い浮かべがちです。
しかし実際には、
トラブルの火種は“不採用通知”という出口部分で生まれている
ケースが少なくありません。
採用は入口。
そして、トラブルは出口で起きます。
第1章|なぜ「不採用通知」が揉め事の引き金になるのか
不採用通知は、企業側にとっては
「選考結果を伝えるだけの事務連絡」
かもしれません。
しかし、応募者側にとっては違います。
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時間を使った
-
期待を持った
-
少なからず評価されたいと思っていた
その結果として届くのが、不採用の連絡です。
このとき、
伝え方ひとつで感情は大きく揺れます。
不満や違和感が残ったまま終わると、
それがクレーム、口コミ、さらには法的トラブルへと
発展する可能性をはらんでいます。
第2章|揉める会社に共通する「不用意な一言」
不採用通知がきっかけで揉める会社には、
いくつかの共通点があります。
その代表例が、不用意な理由の明示です。
例えば、こんな表現です。
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「今回は年齢が合いませんでした」
-
「若い方を求めていたため」
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「経験が少ない/多すぎるため」
企業側としては、
「正直に伝えたつもり」
かもしれません。
しかし、これらはすべて
トラブルの火種になり得る表現です。
第3章|「年齢」を理由にした不採用が危険な理由
年齢を理由にした不採用は、
極めてリスクが高い対応です。
理由はシンプルです。
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年齢は個人の属性
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客観的・合理的な説明が難しい
-
差別的と受け取られる可能性が高い
たとえ企業側に悪意がなくても、
受け取る側が「不当だ」と感じれば、
問題は発生します。
重要なのは、
トラブルは「正しいかどうか」ではなく
「どう受け取られるか」で起きる
という点です。
第4章|「総合的に判断した結果」が安全な理由
では、不採用理由はどう伝えるのが正解なのでしょうか。
実務上、最も安全で現実的なのは、
次の表現です。
「選考の結果、総合的に判断した結果、
今回は見送らせていただくこととなりました。」
この表現のポイントは、
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特定の理由に踏み込まない
-
判断基準を限定しない
-
企業側の裁量として完結している
という点です。
「曖昧ではないか」と感じる方もいるかもしれませんが、
不採用理由は詳細に説明する義務はありません。
むしろ、
説明しすぎることのほうがリスクになります。
第5章|「誠実に伝える」と「正直に全部言う」は違う
採用担当者が陥りやすい誤解があります。
それが、
「誠実に対応する=理由を詳しく伝える」
という考え方です。
しかし、誠実さとは、
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相手を尊重すること
-
不必要に傷つけないこと
-
会社と応募者双方を守ること
であり、
すべてを開示することではありません。
特に不採用理由は、
「言わなくていいことは、言わない」
という判断が、結果的に誠実です。
第6章|不採用対応でやってはいけない3つのこと
実務上、特に注意すべきNG対応を整理します。
① 属性に踏み込む表現を使う
年齢・性別・家庭事情などは避ける。
② 担当者の主観を混ぜる
「合わないと感じた」「雰囲気が違った」など。
③ 余計なフォローを入れすぎる
言い訳や補足が、かえって不信感を生むことも。
不採用通知は、
短く・淡々と・丁寧に
これが基本です。
第7章|不採用通知は「最後の採用広報」でもある
不採用になった応募者は、
将来の顧客や紹介者になる可能性もあります。
逆に、
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対応が雑
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理由が不適切
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感情を逆なでされた
こうした経験は、
SNSや口コミで拡散されるリスクもあります。
不採用通知は、
企業の姿勢が最も端的に表れる場面です。
ここで信頼を損なえば、
採用活動全体に影響を及ぼしかねません。
おわりに|不採用対応は「リスク管理」の一部です
採用活動は、
採るまでが仕事ではありません。
採らないと決めたあと、
どう終わらせるかまでが採用です。
不採用通知の“最後の一言”が、
会社を守ることもあれば、
思わぬトラブルを招くこともあります。
だからこそ、
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理由は絞る
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表現は安全に
-
判断は総合的に
この基本を押さえておくことが、
経営者・人事担当者に求められる
現代の採用リスク管理です。