人材をコストと見るか、投資と見るかで 採用・定着の設計は180度変わります
杉山 晃浩
はじめに|人材の見方が、そのまま会社の未来になります
「人件費が重い」
「できれば人は増やしたくない」
経営者の方から、よく聞く言葉です。
この感覚自体は、決して間違いではありません。
人材は、確かにコストとして数字に表れます。
しかし、ここで一つ大きな分かれ道があります。
人材を“コスト”としてしか見ていないか、
それとも“投資”として設計しているか。
この違いが、
採用・定着・組織の安定性を、180度変えていきます。
第1章|人材を「コスト」と見る会社の採用設計
人材をコストとして捉えている会社では、
採用の考え方に共通点があります。
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できるだけ安く採りたい
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早く戦力になってほしい
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教育に時間やお金をかけたくない
その結果、採用設計はこうなります。
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求人票は条件中心
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面接はスキル確認がメイン
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ミスマッチが起きても「仕方ない」
一見、合理的に見えますが、
この設計には大きな落とし穴があります。
第2章|コスト思考が招く「採っては辞める」ループ
人材をコストと見る会社では、
次のような現象が起きやすくなります。
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思ったより育たない
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現場が「使えない」と感じる
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本人は「聞いていた話と違う」と感じる
結果、早期離職が発生します。
しかし経営者側は、こう考えがちです。
「最近の若者は我慢が足りない」
「人が定着しないのは仕方ない」
ですが、現場を見続けてきた立場から言えば、
問題の多くは採用設計にあります。
コスト思考の採用は、
「合うかどうか」より
「使えるかどうか」を優先してしまうのです。
第3章|人材を「投資」と見る会社の採用設計
一方で、人材を投資と捉えている会社は、
採用の発想が根本的に違います。
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長く働いてもらう前提
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育てる時間も計画に入れる
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入社後の姿を具体的に描く
その結果、採用設計はこう変わります。
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仕事のリアルを事前に見せる
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合わない人は無理に採らない
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面接は相互理解の場になる
ここで重要なのは、
「採る前から、定着を考えている」
という点です。
第4章|投資思考の会社は「採用の入口」を丁寧にする
人材を投資と考える会社ほど、
採用の入口に時間をかけます。
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会社見学を行う
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業務説明を丁寧にする
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大変な点も正直に話す
一見すると、
「効率が悪い」「遠回り」に見えるかもしれません。
しかしこれは、
後工程の失敗を減らすための合理的な投資です。
人口減少時代において、
採用のやり直しは最も高いコストになります。
第5章|定着率の差は「人材観」の差
人が定着する会社と、
人が辞めていく会社。
この差は、制度や待遇以前に、
人材に対する基本的な見方にあります。
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人を「入れ替え可能な部品」と見るか
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人を「育てる資産」と見るか
前者では、
辞めても「また採ればいい」という発想になります。
後者では、
「辞めさせないために何が必要か」を考えます。
この違いが、
定着率・現場の雰囲気・生産性に直結します。
第6章|2030年を見据えると「投資思考」しか残らない
人口減少が進むこれからの時代、
人材の確保はますます難しくなります。
この状況で、
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採っては辞め
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採っては辞め
を繰り返す余裕はありません。
2030年を見据えたとき、
人材を投資と捉える企業しか生き残れない
と言っても過言ではありません。
これは理念の話ではなく、
経営戦略の話です。
第7章|投資思考は「甘さ」ではありません
誤解されがちですが、
人材を投資と考えることは、
「優しくすること」ではありません。
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期待する役割を明確にする
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合わない場合は採らない
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成長を前提に関わる
むしろ、
責任ある関わり方です。
投資とは、
回収を前提とした行為だからです。
第8章|採用定着士が見る「人材投資」の本質
採用定着士の視点から見ると、
人材投資の本質はこうです。
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採用を単発で終わらせない
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定着までを一つのプロセスで考える
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組織と人のズレを減らす
人を集めるだけでは、
企業は強くなりません。
人が残り、育ち、力を発揮すること
これこそが、真の人材投資です。
おわりに|人材観を変えた瞬間、採用は変わります
人材をコストと見るか、
投資と見るか。
この視点を変えただけで、
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採用のやり方
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面接の意味
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定着への向き合い方
すべてが変わります。
採用がうまくいかないと感じたとき、
求人方法を変える前に、
まず人材の見方を見直してください。
そこから、
採用・定着の再設計は始まります。