カスハラ対策を“制度”に落とし込む 保険営業マンの現場から見えた経営インフラの必要性

杉山 晃浩

「また自分が謝るのか」と思った、あの日の訪問先

保険営業マンの佐藤さん(仮名)は、
その日も謝罪から仕事が始まりました。

契約内容は間違っていない。
説明も、書面も、すべて整っている。
それでも、顧客の怒りの矛先は「担当者」である佐藤さんに向けられます。

「君が担当だろ」
「前もそう言ったよね?」

佐藤さんは深く頭を下げ、
その場を収めるために言葉を選びました。

帰りの車の中で、ふと浮かんだのはこの疑問です。

「なぜ、いつも自分が矢面に立つのだろう」


なぜ保険営業マンがカスハラの矢面に立つのか

― 業界特有の構造と期待

保険業界では、
営業マン=会社の顔、という意識が非常に強くあります。

  • 長期契約で築かれる関係性

  • 定期訪問による近さ

  • 「何かあったら担当者に言えばいい」という期待

この構造が、
営業マンをクレーム・不満・感情の受け皿にしてしまいます。

本来は会社として判断すべきことも、
「とりあえず担当者が謝る」
という形で処理されがちです。


一時対応が積み重なると、何が起きるのか

― 「その場を収める」判断の限界

佐藤さんは、悪気なくこう考えていました。

「ここで揉めたくない」
「自分が少し我慢すれば済む」

その場を収めるための一時対応。
しかし、それが積み重なると、次のような現象が起きます。

  • 顧客側が「言えば通る」と学習する

  • 社内で判断基準が共有されない

  • 前例が前例を呼び、要求がエスカレートする

一時対応は、静かに会社の立場を弱くします。


カスハラが“個人問題”にされる会社の特徴

― 属人化・沈黙・我慢

佐藤さんの会社では、
クレーム対応は自然と特定の営業マンに集中していました。

  • 対応がうまい

  • 感情を荒立てない

  • 我慢強い

いわゆる「強い人」です。

「あの人なら大丈夫」
この言葉が、属人化を生みます。

さらに、
「わざわざ上に報告するほどでもない」
という空気が、エスカレーションを止めます。

結果、
問題は個人の中で完結し、
会社としての学習が起きません。


【事例】

善意の対応が、会社を苦しめたケース

ある顧客から、
契約外の特別対応を求められた佐藤さんは、
「今回だけです」と応じました。

上司には簡単に口頭報告をしたものの、
記録には残りませんでした。

数か月後、同じ顧客が再び同様の要求をします。

「前はやってくれたじゃないか」

会社としては断りたい。
しかし、前例がある以上、強く出られない。

こうして、
営業マンの善意は、
会社にとっての足かせに変わっていきました。


経営者が気づきにくい“静かな経営リスク”

― 離職・ブランド毀損・内部疲弊

この構造を放置すると、
次のようなリスクが現れます。

① 営業マンの消耗と離職

「もう対応しきれない」
そう言って去っていくのは、
経験豊富で顧客対応力の高い人材です。

② 会社ブランドの毀損

「この会社は、強く言えば何とかなる」
そんな評判は、確実に広がります。

③ 問題が見えないまま蓄積する

表に出ないトラブルほど、
後で大きな火種になります。


なぜ「制度」に落とし込む必要があるのか

― 人に任せないという経営判断

ここで重要なのが、
カスハラ対策を“制度”にするという発想です。

制度とは、

  • 判断基準

  • 境界線

  • エスカレーションルール

  • 記録と共有

を、あらかじめ決めておくことです。

これにより、

  • 営業マンが一人で背負わない

  • 判断がぶれない

  • 顧客にも一貫した対応ができる

ようになります。


カスハラ対策は“経営インフラ”である

― 一時対応との決定的な違い

経営インフラとは、
止めてはいけない仕組みのことです。

電気や水道がなければ、
仕事は成り立ちません。

同じように、
カスハラ対策がなければ、現場は守れません。

一時対応は「その場しのぎ」。
経営インフラは「前提条件」。

この違いを理解することが、
これからの経営には欠かせません。


外部支援を組み込むという選択

― なぜ社内完結では限界があるのか

とはいえ、
社内だけで制度を整えるのは簡単ではありません。

  • 利害関係が絡む

  • 感情が入る

  • 判断が甘くなりやすい

だからこそ、
第三者の視点が生きてきます。

外部が関与することで、

  • 判断を会社の方針として整理できる

  • 現場と経営の間に立てる

  • 制度として定着させやすい

という効果があります。


杉山事務所が担える役割

― 経営インフラ構築の伴走者として

杉山事務所では、
カスハラ対策を単なるトラブル対応ではなく、

  • 経営インフラの一部として設計

  • 現場が使える形に落とし込み

  • 継続的に運用を支援

することを重視しています。

「問題が起きたら考える」ではなく、
「起きても崩れない仕組みを持つ」。

それが、
人と会社を同時に守る方法です。


まとめ

カスハラ対策を制度にした会社だけが、現場を守り続けられる

保険営業マンの現場で起きていることは、
決して特別な話ではありません。

  • 人に任せる

  • その場で収める

  • 記録しない

この積み重ねが、
会社を静かに弱くしていきます。

人に任せない。
仕組みに任せる。

カスハラ対策を“経営インフラ”として持つこと。
それが、これからの時代に選ばれ続ける会社の条件です。

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