人本経営とは何か? 社長が“知らないまま”では済まされなくなった理由

杉山 晃浩

第1章|「人本経営?聞いたことはあるが…」という社長がほとんどです

「人本経営という言葉、正直よく分からない」
これは、決して珍しい反応ではありません。実際、多くの中小企業の経営者が同じ状態です。

これまで経営は回ってきました。
社員もいて、売上もあり、致命的なトラブルがあったわけでもない。
そのため、「知らなくても困っていない」という感覚を持つのは自然なことです。

問題は、「知らないこと」そのものではありません。
知らないままでも、経営できてしまっていた時代が終わりつつあることです。

最近、こんな変化を感じていないでしょうか。

  • 求人を出しても反応がない

  • 若い人が定着しない

  • 辞める理由が分からない

  • 社員が本音を言わない

これらは偶然ではありません。
人本経営を知らないことが、静かに経営リスクになり始めています。


第2章|人本経営とは何か?一言で言うとこういう考え方です

人本経営とは何か。
難しい言葉を使わずに言えば、こうです。

「人をコストではなく、経営の土台として考える経営」

よく「人を大切にする経営」と混同されますが、それだけではありません。
気持ちの問題ではなく、経営の考え方そのものです。

たとえば、

  • 人件費を「削る対象」と見るか

  • 会社を支える「基盤」と見るか

この違いは、日々の判断に大きく影響します。

人的資本経営という言葉もありますが、中小企業にとって重要なのは、開示や指標ではありません。
社員が安心して力を出せる環境を、意図して作っているか
それが人本経営の核心です。


第3章|なぜ今、人本経営を知らないままでは危険なのか

理由は単純です。
働く側の価値観が、大きく変わったからです。

以前は、「仕事があるだけでありがたい」という時代がありました。
しかし今は違います。

  • ここで働き続けられるか

  • 自分を雑に扱われないか

  • 将来が見えるか

こうした点を、社員も求職者も無意識に見ています。

給料や休日は、もはや最低条件です。
それだけでは「選ばれる理由」になりません。

人本経営を知らないまま経営を続けると、
「なぜ人が来ないのか」
「なぜ辞めたのか」
が分からない状態になります。

これは非常に危険です。
理由が分からなければ、改善のしようがないからです。


第4章|人本経営を知らない会社で、実際に起きていること

人本経営を知らない会社で、よく見られる光景があります。

  • 社員は真面目で、文句も言わない

  • 表面上は大きな問題がない

  • しかし、ある日突然退職を告げられる

社長はこう感じます。
「急に辞めるなんて無責任だ」

しかし社員側から見ると、
「言っても変わらない」
「話しても意味がない」
と、すでに心の中で結論を出していることが少なくありません。

不満や違和感が、退職という形でしか表に出ない
これが、人本経営を知らない会社で起きがちな構造です。


第5章|「人を大切にしているつもり」と人本経営は別物です

多くの社長はこう言います。

「うちは人を大切にしている」
「給料も安くない」
「残業も少ない」

それでも人が辞める会社は、少なくありません。

なぜでしょうか。

人本経営は、気持ちや善意では成り立ちません。
設計があるかどうかです。

  • 判断基準が人によって違わないか

  • ルールが曖昧になっていないか

  • 社員が安心して相談できる仕組みがあるか

「大切にしているつもり」と「伝わっているか」は別問題です。
人本経営は、伝わるように作る経営です。


第6章|人本経営ができている会社は、ここが違います

人本経営ができている会社は、特別なことをしていません。

  • ルールや方針が分かりやすい

  • 社員が話せる場がある

  • 将来の話をする機会がある

その結果、

  • 不満が溜まりきる前に表に出る

  • 問題が小さいうちに修正できる

  • 「辞めるしかない」という結論になりにくい

つまり、人本経営とは
問題が起きない会社を作ることではなく、問題が見える会社を作ること
とも言えます。


第7章|人本経営は「制度を入れること」ではありません

ここで注意が必要です。
人本経営を知った途端、制度導入に走るのは危険です。

  • 人事制度

  • 評価制度

  • 福利厚生

これらはすべて「結果」です。

現状を知らないまま制度を作っても、形骸化します。
「作ったけど使われない」
「逆に不満が増えた」
というケースも少なくありません。

人本経営の出発点は、
社員の状態を知ることです。


第8章|社長が最初にやるべき、人本経営の第一歩

社長が最初にやるべきことは、難しくありません。

  • 社員の声を集める

  • 自分の思い込みを確認する

  • ズレを見える形にする

アンケートや面談など、方法はいくつもあります。
大切なのは、「知ろうとする姿勢」です。

一人で考える必要はありません。
第三者の視点を入れることで、初めて見えることも多くあります。


終章|人本経営を“知らない”こと自体が、経営リスクになる時代

これまで人本経営を知らなくても、経営はできました。
しかしこれからは、「知らないこと」そのものがリスクになります。

人本経営は流行語ではありません。
経営の根本に関わる考え方です。

次に考えるべきは、
「では、自社はどこから手を付けるべきか」という点でしょう。

そのヒントは、すでに社内にあります。
気づくかどうか、動くかどうか。
それが、これからの会社の未来を分けます。

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