人本経営を支える心理的安全性と面談 ― なぜ“話せる場”がない会社ほど、経営が不安定になるのか
杉山 晃浩
第1章|人本経営が進まない会社に、必ず欠けているもの
人本経営に取り組もうとする企業は増えています。
人材確保が難しくなり、「人を大切にする経営」が重要だという認識は、多くの経営者に共有されるようになりました。
それでもなお、人本経営が思うように進まない会社があります。
制度は整えた。
福利厚生もそれなりに考えた。
それなのに、人が定着しない。現場が疲弊している。
こうした会社に共通して欠けているものがあります。
それが 「話せる場」 です。
社員が本音を話せるかどうか。
困りごとを、問題になる前に出せるかどうか。
この「話せる状態」がなければ、人本経営はどれだけ立派な制度を用意しても機能しません。
第2章|心理的安全性とは「仲がいい職場」のことではない
心理的安全性という言葉を聞くと、
「和気あいあいとした職場」
「優しい上司がいる会社」
をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、心理的安全性の本質はそこではありません。
心理的安全性とは、
不利益を恐れずに意見や不安を口にできる状態
を指します。
・間違いを指摘しても評価が下がらない
・不安を口にしても面倒な人扱いされない
・問題を早めに出しても責められない
逆に、心理的安全性が低い職場では、
・本音を言わない
・様子を見る
・問題を抱え込む
という行動が当たり前になります。
この沈黙は、一見すると「問題がない職場」に見えます。
しかし実際には、経営にとって最も危険な状態です。
第3章|心理的安全性がないと、人本経営は必ず形骸化する
人本経営が目指すのは、
・社員の状態を把握する
・問題を早期に発見する
・納得感のある経営判断を行う
といったことです。
ところが、心理的安全性が低い職場では、
社員は「当たり障りのない答え」しか出しません。
アンケートを取っても、
「特に問題はありません」
「現状に満足しています」
という表面的な回答が並びます。
面談をしても、
本当の不満や違和感は出てきません。
結果として、経営者は
正しい判断をしている“つもり”
になり、実際の現場とのズレが広がっていきます。
心理的安全性がない会社では、人本経営は社長の独り相撲になりやすいのです。
第4章|なぜ「面談」が心理的安全性を左右するのか
心理的安全性を左右する最大のポイントが、面談です。
多くの会社で面談は、
・評価の場
・指導の場
・業務進捗確認の場
として扱われています。
しかし、人本経営の視点で見ると、面談の役割はまったく異なります。
面談とは、本来
社員の状態を把握するための経営装置
です。
・今、何に困っているのか
・どこに不安を感じているのか
・このまま続けられそうか
これらを把握できなければ、経営判断の材料が不足します。
面談がない会社では、
社員の状態が見えるのは「退職の申し出」のときだけ、
というケースも珍しくありません。
第5章|人本経営を壊す「形だけの面談」あるある
面談を実施していても、心理的安全性が高まらない会社には共通点があります。
・面談の目的が曖昧
・評価と面談が混ざっている
・話しても何も変わらない
・忙しさを理由に省略される
社員は、面談の内容よりも
「面談後に何が起きたか」
を見ています。
話したのに何も変わらない。
むしろ言ったことで扱いが変わった。
この経験が積み重なると、社員は学習します。
「話さないほうが安全だ」と。
これでは、心理的安全性は育ちません。
第6章|心理的安全性が高まる面談は、ここが違う
心理的安全性を支える面談には、いくつかの共通点があります。
・評価と切り離されている
・話すテーマが整理されている
・上司がその場で結論を出さない
・内容が経営判断に反映されている
特に重要なのは、
面談の場で「判断を保留できる」ことです。
その場で答えを出そうとすると、
社員は「正解を言おう」として本音を隠します。
一度受け止め、整理し、経営判断に活かす。
このプロセスがあって初めて、面談は心理的安全性を高めます。
第7章|社長一人で「良い面談」を続けるのは難しい
正直なところ、社長一人で質の高い面談を続けるのは簡単ではありません。
・立場上、本音を言いにくい
・話題が経営寄りに偏る
・感情と判断が混ざる
さらに、社長の面談は属人化しやすく、
面談の質が安定しません。
心理的安全性は、
「一度うまくいった」では意味がなく、
継続して担保される必要があります。
そのためには、面談を
個人技ではなく仕組みとして支える視点
が不可欠です。
第8章|オフィススギヤマの経営伴走ができること
オフィススギヤマグループの経営伴走は、
「面談をやりましょう」という話では終わりません。
・面談の位置づけ整理
・テーマ設計
・アンケートとの組み合わせ
・フィードバックの整理
・法令・評価制度との切り分け
これらを一体で支援します。
社労士という立場だからこそ、
心理的安全性を高めつつ、
労務リスクを生まない運用が可能です。
面談が経営に効く状態をつくること。
それが、オフィススギヤマの経営伴走です。
終章|心理的安全性と面談は、人本経営の「基礎工事」
心理的安全性は、雰囲気や性格の問題ではありません。
面談も、人事イベントではありません。
どちらも、人本経営を支える経営インフラです。
この基礎工事を後回しにすれば、
制度は形骸化し、
人本経営は掛け声で終わります。
逆に言えば、
心理的安全性と面談を整えるだけで、
経営の安定性は大きく変わります。
人本経営を本気で進めたいなら、
まず整えるべきは「話せる場」です。