はぐくみ基金だけでは、社員の資産は増えません ― インフレ時代に“選択制企業型DC”を足さない会社の現実
杉山 晃浩
第1章|インフレで、社員の「お金の常識」はすでに壊れ始めている
ここ数年、社員の生活感覚は確実に変わっています。
同じ給料をもらっていても、「楽になった」と感じる人はほとんどいません。
理由はシンプルです。
物価が上がり続けているからです。
預金に置いておけば安心。
コツコツ積み立てていれば将来は何とかなる。
こうした「お金の常識」は、インフレが進む中で静かに崩れています。
社員は数字を見ていなくても、
「このままで本当に大丈夫なのか?」
という感覚を、日常生活の中で持ち始めています。
第2章|はぐくみ基金は悪くない。むしろ良い制度です
ここで誤解してほしくないのは、
はぐくみ基金は悪い制度ではないという点です。
むしろ、中小企業にとっては、
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導入しやすい
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社員に説明しやすい
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福利厚生として分かりやすい
非常によくできた制度です。
「企業年金は難しそう」と感じていた会社が、
最初の一歩を踏み出すには、これ以上ない仕組みだと思います。
問題は制度そのものではありません。
はぐくみ基金“だけ”で止まってしまうことです。
第3章|それでも、はぐくみ基金「だけ」では資産は増えにくい理由
はぐくみ基金は、
基本的に「積み立てて守る」仕組みです。
これは安定という意味では大きなメリットですが、
インフレが続く状況では弱点にもなります。
お金の額面は減っていなくても、
実際の価値は目減りしていくからです。
社員の立場から見ると、
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損はしていない
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でも、増えている実感もない
という状態が続きます。
結果として、
「将来に備えているはずなのに、不安が消えない」
という矛盾が生まれます。
第4章|社員は静かに感じている
「この会社にいて、将来は大丈夫なのか?」
この不安を、社員はあまり口に出しません。
ただ、
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転職情報を見る
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資産形成の話題に敏感になる
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福利厚生を比較する
こうした行動には、確実に表れています。
賃上げをしても、
「ありがたいけど不安は残る」
という感覚が消えないのはなぜか。
それは、
将来に対する“設計”が見えないからです。
企業年金は、
社員に対するメッセージでもあります。
第5章|選択制企業型DCは「投資型」という“別の軸”を持っている
ここで登場するのが、
選択制企業型DC(確定拠出年金)です。
難しく考える必要はありません。
はぐくみ基金が
「守る仕組み」だとすれば、
選択制DCは
「増やす可能性を持つ仕組み」です。
社員自身が選び、
自分の将来に向けてお金を動かす。
この「投資型」という軸が、
インフレ時代には重要になります。
第6章|はぐくみ基金+選択制DC
この組み合わせが“現実解”である理由
ここで重要なのは、
どちらか一方ではないという点です。
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はぐくみ基金=守りの土台
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選択制DC=上乗せの選択肢
この組み合わせによって、
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無理をしない
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押し付けない
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それでも将来を描ける
制度設計が可能になります。
社員ごとに選べる、
という点も大きな強みです。
第7章|やらないリスクと、やりすぎるリスク
社長が押さえるべき判断ポイント
もちろん、
「とにかくDCを入れればいい」
という話ではありません。
やらないリスクもあれば、
無理な設計をするリスクもあります。
社長が判断すべきポイントは、実は3つだけです。
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本当にやる必要があるか
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どこまでやるか
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誰に任せるか
制度の中身をすべて理解する必要はありません。
第8章|まとめ|インフレ時代、社員が報われる会社の条件
はぐくみ基金は、
スタートとして非常に優秀な制度です。
しかし、インフレ時代においては、
それだけでは社員の資産は増えにくい。
守りに加えて、
選べる未来を用意できるかどうか。
それが、
これからの会社が問われるポイントです。
企業年金は、
お金の話であると同時に、
会社の姿勢を示すメッセージでもあります。