2026年12月、iDeCoと企業型DCの上限は同じになる それでも「選択制DC」が有利な理由
杉山 晃浩
第1章|2026年12月改正で何が変わるのか
― iDeCoと企業型DCが“横並び”になるインパクト
2026年12月、確定拠出年金の世界で大きな制度改正が行われます。
それは、iDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型DCの掛金上限が同じ金額になるという改正です。
これだけ聞くと、多くの経営者はこう感じるでしょう。
「じゃあ、もうiDeCoでも企業型DCでも同じじゃないか」
「わざわざ会社で制度を入れる意味はあるのか?」
確かに、“上限額”だけを見れば横並びになります。
しかし、社労士の立場から見ると、この改正は
「どれを選んでも同じ」ではなく、
「違いがよりハッキリ見える改正」です。
第2章|「上限が同じ=条件が同じ」ではない
年金制度の話になると、多くの人が
「いくらまで積み立てられるか」だけで判断しがちです。
しかし、本当に見るべきポイントは別にあります。
それは、
「そのお金は、どの段階のお金なのか」
という点です。
同じ38,000円でも、
-
税金を払った後の38,000円
-
税金を払う前の38,000円
では、意味がまったく違います。
2026年12月改正は、
この違いを見抜けるかどうかで、
社員の将来資産に大きな差が出る改正です。
第3章|iDeCoは「税引後のお金」で積み立てる制度
まずはiDeCoについて、シンプルに整理しましょう。
iDeCoは、
自分の給料から、手取りのお金を出して積み立てる制度です。
流れはこうです。
-
給料をもらう
-
税金・社会保険料を払う
-
残った手取りの中からiDeCoを拠出する
確かに、iDeCoには
「掛金が全額所得控除になる」という大きなメリットがあります。
ただし、忘れてはいけないのは、
スタート地点はあくまで“手取り”だということです。
インフレが進む時代、
手取りの中から将来資産を確保するのは、
正直ラクではありません。
第4章|企業型DCは「税引前のお金」を使える制度
一方、企業型DCは仕組みがまったく違います。
企業型DCでは、
税金や社会保険料がかかる前の給与を使って積み立てます。
つまり、
-
給与が確定する前に
-
先に将来資産として確保する
という構造です。
同じ38,000円でも、
-
iDeCo:税金を払った後の38,000円
-
企業型DC:税金を払う前の38,000円
この差は、毎月見ると小さく感じるかもしれません。
しかし、10年、20年と積み上げると、
無視できない差になります。
第5章|選択制DCが持つ“決定的な強み”とは何か
ここで登場するのが、選択制DCです。
選択制DCを一言でいうと、
「給与として受け取るか、
将来のために回すかを、
社員自身が選べる企業型DC」
です。
重要なのは、
社員が“税引前の給与”を投資に回せる点です。
-
給料をもらってから考えるのではない
-
もらう前に、将来分を確保できる
これが、選択制DCの最大の強みです。
第6章|同じ38,000円でも、将来の差はこうして広がる
毎月の差は、数千円かもしれません。
しかし、積立は「時間」を味方につける仕組みです。
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税引前で投資できる
-
投資期間が長くなる
-
複利が効く
この3つが重なると、
将来の差は静かに、しかし確実に広がります。
多くの社員は、
「今の手取り」を基準に物事を考えます。
だからこそ、
手取りを減らさずに将来へ回せる仕組みには、
大きな価値があります。
第7章|選択制DCは「制度」ではなく「設計」で決まる
一方で、
選択制DCには「怪しい」「危ない」という声があるのも事実です。
しかし、問題は制度そのものではありません。
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無理な掛金設計
-
制度説明不足
-
導入後の放置
こうした運用の問題が、
選択制DCの評価を下げています。
2026年のように制度改正が入る年こそ、
定期フォローがない制度は危険です。
第8章|まとめ|2026年12月改正は「選び方」を問う改正
2026年12月改正は、
単なる上限金額の話ではありません。
問われているのは、
-
税引前か、税引後か
-
今か、将来か
-
放置か、継続フォローか
という考え方の差です。
iDeCoも、企業型DCも、
どちらも正しい制度です。
ただし、
選択制DCは、使い方次第で“結果が大きく変わる制度”です。
社員の将来に、本気で向き合うなら、
2026年12月は、その分かれ目になります。