中小企業の未来を変えるインターンシップ活用術 ― 採用・育成・業務改善の一石三鳥戦略 第5回:学生の声が企業の未来をつくる!インターンがもたらす採用力とブランド力
杉山 晃浩
インターンシップは、単なる「体験学習」や「人材育成」にとどまらず、企業の“採用力”と“ブランド力”の向上に直結する極めて戦略的な取り組みです。
特に中小企業においては、インターンを通じて「認知され」「記憶に残り」「共感される」ことで、採用市場における存在感を高めることができます。
今回は、学生の声を通じて可視化された企業の魅力や、インターンがもたらす社外評価・採用活動への波及効果について、具体例とともに掘り下げていきます。
1.インターン生の“生の声”は、企業の魅力を言語化してくれる
企業側にとって「自社の魅力を発信する」のは、意外と難しいものです。なぜなら、日々の仕事に追われている中で、自社の強みや独自性を改めて考える機会が少ないからです。
ところが、インターン生は“初めての視点”で職場を観察します。
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「社員同士の距離が近くて話しやすかった」
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「自分の提案に耳を傾けてもらえて驚いた」
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「小さい会社だからこそ色々なことに挑戦できた」
こうした学生の声は、企業のブランディングにおける「お客様の口コミ」のような力を持ちます。
企業紹介パンフレットや採用ページに、実際のインターン体験者のコメントを載せるだけで、訴求力は格段に上がります。特にZ世代の学生は「リアルな声」に敏感であり、同世代の評価を非常に重視する傾向があります。
2.SNS時代の今、学生の発信が“広報チャンネル”になる
最近では、多くの学生がインターンの様子をSNSで発信しています。
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Instagramのストーリーズで社内の雰囲気を紹介
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X(旧Twitter)で学びや気づきを発信
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TikTokで職場の一日ルーティンを軽快に紹介
これらは、企業が広告費をかけずに「就活市場」で露出できる絶好の機会です。特に地方企業や業界的に認知度が低い企業にとっては、“無名の壁”を超える突破口となります。
ある宮崎県の小規模IT企業では、インターン生が撮影・編集したショート動画が2万再生を突破し、「ここ面白そう!」と地元大学の複数名から問い合わせが殺到しました。
このように、学生自身が広報担当になる仕組みは、今後の採用活動で無視できないトレンドとなっています。
3.参加者=“将来の応募者”という強力な母集団形成
採用活動において重要なのは、
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自社に関心のある層
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自社の価値観に共感している層
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入社後のギャップが少ない層
こうした“相性の良い人材”をいかに集めるかです。
インターンシップは、まさにそのための仕組みです。
実際、企業の中には、
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「新卒採用者の7割以上が元インターン生」
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「内定辞退率がインターン経験者は1割以下」 といった成果を出しているところもあります。
短期であっても、「職場の人と話したことがある」「仕事の現場を見たことがある」という経験は、応募・選考・入社のすべてのフェーズで心理的ハードルを大きく下げてくれます。
4.学校・行政・地域からの信頼も得られる
インターンシップは学生との接点を生むだけではなく、
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大学や専門学校との関係構築
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高校進路指導部からの紹介
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地元自治体や商工会との連携強化
といった、「地域社会との関係資産」にもつながります。
例えばある食品製造業では、地域の高校と連携してインターンシップを年2回実施。結果として、高校からの紹介枠ができ、毎年コンスタントに若手人材を採用できる体制が整いました。
また、インターンを受け入れていること自体が、企業の「地域貢献」「人材育成」に対する取り組みとして評価され、助成金や補助事業の対象になることもあります。
5.インターン経験者の“クチコミ採用”が拡がる
インターンを経験した学生は、
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同じゼミの友人
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アルバイト先の仲間
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学内のキャリアセンター などに、自然と自社のことを話すようになります。
これは、**学生版リファラル採用(紹介採用)**のようなものです。
実際に、ある飲食業の企業では、1人のインターン生の紹介で2名の学生がその後応募。いずれも入社後の定着率が高く、社内でも「インターン紹介ルートは信頼性がある」と評価されています。
このように、1人の受け入れが“広がり”を持ち、時間差で複数のリードを生むことも珍しくありません。
6.ブランド価値の「内側」も強くなる
インターンによるブランド力強化は、社外だけでなく、社内にも影響を及ぼします。
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「うちの会社に学生が興味を持ってくれている」という誇り
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「教える立場」としての社員の自覚と成長
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「採用は人事だけの仕事ではない」という空気の醸成
これらが相乗的に働き、結果として「自分たちの会社を良くしていこう」という当事者意識が育ちます。
企業ブランドとは、単なるロゴやキャッチコピーではなく、**社員一人ひとりの意識と行動からにじみ出る“文化”**でもあります。インターンはその文化の土壌を豊かにする役割を果たすのです。
まとめ:インターン生は“未来の味方”になる
インターンシップは、受け入れる側が「教える・見せる・伝える」場であると同時に、企業にとっては、
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企業理解を深めてくれる発信者
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働く価値を再確認させてくれる触媒
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応援者としてのネットワーク拡張
といった“未来を共に創る存在”にもなり得ます。
単なる人数合わせの実習や、表面的な体験に終わらせるのではなく、**「人材戦略」かつ「ブランディング戦略」**として捉えることが、これからの中小企業の差別化の鍵となるでしょう。
次回は、実際にインターンシップを導入した企業が、どのように社員の働きがいや業務改善に結びつけたか――その具体的な“未来創造”のエピソードをご紹介します。
▼ 第6回:「インターンが職場を変えた日。社員の誇りと行動が変わった“気づき”の瞬間」