「試用期間」と「お試し雇用」は何が違う?知らないと危ない雇用契約の落とし穴
杉山 晃浩
第1章:「試用期間」も「お試し雇用」も同じじゃないの?
「正社員として雇う前に、ちょっと様子を見たい」
このような場面で、企業がよく使うのが「試用期間」や「お試し雇用」といった仕組みです。
しかし、この2つは見た目が似ていても、法的な取り扱いはまったく違います。
実際に、
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試用期間中に解雇したらトラブルになった
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お試し雇用のつもりが、無期雇用を主張された
というご相談が後を絶ちません。
今回は、この2つの違いをわかりやすく整理し、ありがちな落とし穴と企業がとるべき対策をお伝えします。
第2章:法的にはこう違う!── 試用期間 vs お試し雇用の比較表
項目 | 試用期間 | お試し雇用(期間限定雇用) |
---|---|---|
雇用形態 | 無期雇用(正社員) | 有期雇用(契約社員など) |
終了時の扱い | 解雇(合理的理由が必要) | 雇止め(原則は契約満了) |
通知義務 | 就業規則・労契法に基づく | 契約期間・更新条件を明記 |
社会保険 | 原則加入 | 労働時間等によって判断 |
想定目的 | 正社員採用前の適性確認 | 採用前提なしの試験雇用 |
ポイントは「無期か有期か」。
「なんとなく試用期間にしておけばクビにしやすい」という誤解は、トラブルの元です。
第3章:ありがちなトラブル事例3選
① 試用期間で「ダメだったから」と一方的に解雇
ある企業では、入社から2カ月で「社風に合わないから」と解雇。
しかし、就業規則に試用期間の定義がなく、解雇理由もあいまいだったため、不当解雇として労働審判へ。
結果、和解金+社会的信用の損失という痛手に。
② お試し雇用のつもりが、更新3回で「無期扱い」に
「試しに3カ月契約で」と始めたが、結局6回更新。
社員が「もう正社員だと思っていた」と主張し、雇止め無効を訴える。
裁判所も「期待権があった」と判断し、事実上の正社員化。
③ 試用期間終了後の手続きがあいまいで混乱
形式上「試用期間3か月」としていたが、本採用通知を出さずに放置。
その後トラブル発生時に「まだ試用中だと思っていた」と主張され、懲戒処分の有効性が問われた。
第4章:企業がやっておくべきリスク対策
これらのトラブルは、少しの準備と書面整備で回避できます。
以下のポイントを押さえましょう。
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試用期間を設ける場合は、就業規則に規定し、「解約権留保」の考え方を盛り込む
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有期雇用の場合は、契約期間・更新条件・本採用の有無を明記した雇用契約書を交付
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試用期間終了時には、**「本採用通知書」や「不採用通知書」**を必ず発行
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就業規則に「試用期間中の評価基準・手続き」を記載し、後から争われないようにする
第5章:どちらを使うべき?目的に応じた使い分けのすすめ
目的がはっきりしていれば、どちらを使うかは明確です。
目的 | 適した制度 |
---|---|
正社員前提で適性を確認したい | 試用期間付き無期雇用契約 |
一定期間だけ様子を見て判断したい | 有期雇用契約(お試し雇用) |
いちばん危険なのは、「とりあえず試用期間ってことにしておこう」と制度設計を曖昧にすることです。
第6章:まとめ──“採用の自由”にも限界あり。契約は慎重に
「気に入らなかったら切ればいい」は、もはや通用しません。
法律は労働者保護を強化する方向に進んでおり、採用の時点からしっかりと制度設計・書面整備・社内周知が求められます。
📝 最後に:杉山事務所の就業規則は“トラブル予防型”
杉山事務所が提供する就業規則は、
これまでに対応してきた数多くの労使トラブル事例をもとに、実務に耐えるよう工夫をこらした「現場主義の就業規則」です。
単なる“雛形の提供”ではなく、
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採用から退職までのあらゆる場面に対応するルールの明文化
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試用期間や解雇、雇止めなど「いざというとき」に役立つ規定
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企業ごとの業種・組織・実態に合わせたカスタマイズ
など、手間とノウハウをしっかり注いでいます。
「何かあってから慌てて見直す」ではなく、何もない今こそ、就業規則を整える絶好のタイミングです。
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