“感じのいい人”ばかり採用してませんか?──確証バイアスが招く採用ミス
杉山 晃浩
第1章 「面接では良かったのに…」が続くのはなぜか
面接のときは明るくて印象がよく、会話もスムーズ。
「この人なら安心して任せられる」と感じた――にもかかわらず、
入社してみると仕事が続かない、指示待ちになる、周囲と合わない。
こうした“採用のズレ”は、応募者の演技力でも、運でもありません。
原因は、採用する側の無意識の思い込みにあります。
採用の現場では、「自分の期待に合う情報」だけを信じ、
それに合わない情報は無意識に見落とすという現象が起きます。
心理学ではこれを「確証バイアス」と呼びます。
第2章 確証バイアスとは──“信じたいことしか見えなくなる”心理
確証バイアスとは、
自分の信じていることを裏づける情報だけを集め、
反対の情報を軽視する心理的傾向のこと。
採用面接では、次のような形で表れます。
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「明るい人=営業向き」
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「笑顔が多い=コミュニケーション能力が高い」
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「有名企業出身=能力が高い」
面接官は客観的に判断しているつもりでも、
実際は「自分が期待している人物像」に当てはまるかどうかを見ています。
つまり、応募者を評価しているようで、実は“自分の理想像”を確認している。
この瞬間、面接は「相手を見る場」から「自分を再確認する場」へと変わってしまいます。
第3章 採用ミスを生む「確証バイアスあるある」
① 直感採用
「話していて気が合う」「雰囲気がいい」――この“感覚採用”が最も危険です。
面接序盤で「この人、良さそう」と思った瞬間、質問の目的が変わります。
以後の質問は“確認作業”となり、本人の課題を深掘りできなくなります。
② 経歴の過信
「前職が大手だから」「同業で経験があるから」――。
そう思って採用した人ほど、現場のスピード感に合わず苦労します。
経歴ではなく、「その経験をどう活かしたいか」を見る必要があります。
③ 自分と似た人を選んでしまう
「感覚が合う」「話が通じやすい」人を無意識に選びがち。
結果、社長や管理職のコピーのような社員ばかりが集まり、
多様性が失われます。
④ 違和感のスルー
「少し気になるけど、たまたまだろう」と都合よく解釈。
この“違和感の無視”こそが、後々の離職トラブルにつながります。
第4章 確証バイアスを防ぐ「面接の仕組み」づくり
① 質問内容を標準化する
応募者ごとに質問が違えば、比較ができません。
全員に同じ質問を行い、感覚ではなく“回答内容”で判断することで、
公平な選考が可能になります。
② 採用基準を“見える化”する
「感じがいい」「誠実そう」といった曖昧な印象ではなく、
“求める人物像”を行動や価値観レベルで言語化します。
例:「責任感がある=最後までやりきる」「柔軟性=他部署と協働できる」。
③ 面接官を複数にする
2名以上の面接官がいれば、バイアスを打ち消せます。
小規模企業では、社外パートナー(採用定着士・社労士)の同席も有効です。
④ 採用結果を振り返る
過去に活躍した人・早期離職した人の傾向を分析。
「感じが良かった人」ではなく、「成果を出した人」の共通点を見極め、
採用基準をブラッシュアップします。
第5章 社労士ができる支援──“感覚採用”から“仕組み採用”へ
社労士は、「感覚に頼らない採用」の設計を支援できます。
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採用基準の策定支援(人物像・スキル・価値観の言語化)
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面接質問表・評価シートの作成
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面接官研修(心理バイアス・質問技法・評価トレーニング)
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採用後の定着支援(OJT設計・フォローミーティング運用)
採用の精度は、感覚ではなく構造で上げる。
これは、人の“印象”に左右されやすい中小企業ほど重要な視点です。
第6章 「感じの良さ」より「働く強さ」を見極めよう
採用の目的は、“良い人”を採ることではありません。
仕事を通して成長し、会社の未来を支える人を見つけること。
「いい人だったのに、合わなかった」ではなく、
「最初は控えめだったけど、期待以上に育った」――。
そんな採用こそ、本当に価値ある採用です。
応募が来ないから即採用だけがNGじゃない!
もしあなたが、
「うちはいつも“感じのいい人”を採って失敗する」と感じているなら、
それは応募者ではなく、評価の仕組みの問題かもしれません。
オフィススギヤマでは、
採用基準の策定・面接設計・評価研修・定着支援まで、
一貫した“仕組み採用”をサポートしています。感覚ではなく、構造で採用を成功させる。
本気で採用を変えたい経営者の方は、ぜひご相談ください。