「理解している」と「守れる」は別問題 ──二重課程理論で事故ゼロをつくる職場改革
杉山 晃浩
誰もケガを望んでいない。
なのに、労災は起き続ける──なぜか?
その答えは、「知識」と「行動」の間に
深くて大きなギャップがあるからです。
現場ではよく聞く言葉があります。
「言うべきことは言っているのに、守ってくれない」
「教育もマニュアルも整備した。なのに事故が起きる」
これは担当者の努力不足ではありません。
人間の脳の仕組みにふれると、むしろ当然のことなのです。
◼1章|二重課程理論とは?
人間の意思決定は2つの処理方法で動いています。
| システム | 特徴 | 職場でよくある動き |
|---|---|---|
| システム1(直感・自動) | 速い/無意識/楽 | つい近道を選ぶ、確認を省く |
| システム2(理性・熟考) | 遅い/負荷大/エネルギー消費 | 手順やルールを守る |
安全・品質・情報管理など
「守るべきこと」の多くはシステム2頼み。
しかし、人はエネルギーが必要な行動を続けられない。
だから…
「知っているのに、できない」
という現象が起きます。
◼2章|危険が日常化すると何が起きる?
ヒヤリ・ハットの放置が
「慣れ」という名の麻酔を生みます。
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毎日同じ危険があっても、事故は起きなかった
-
だから「大丈夫」と感じてしまう
-
いつか重大事故になる
これを心理学では
正常性バイアスと呼びます。
「昨日が大丈夫だったのだから今日も大丈夫」
そうではないのに、脳が勝手に判断してしまう。
◼3章|製造現場で起きがちな悪循環
私が支援した企業で、こんな事例がありました。
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手順書を守らず作業 → 怪我寸前
-
上司:注意するが、深掘りせず終了
-
本人:「たまたま」「気をつけます」
この時点では終わっていません。本当の問題はここから。
✔ 注意される=システム2に一瞬スイッチ
✕ しかし仕組みは変わらない
↓
元に戻る(システム1)
つまり…
「叱責」では、人は変わらない。
むしろ
“言ってもムダ”という文化が育つ危険性があります。
◼4章|行動を変える唯一の方法
人は「楽な方」へ流れます。
だから、職場改善の鉄則はこうです👇
悪い行動はできないように
良い行動は自然に選ばれるように
つまり 環境設計がすべて。
▼例
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工具は必ず取りに戻らないと取れない配置
-
異常行動はすぐに管理者へ通知
-
手順通りを“早く・楽に”できる工程設計
これは教育より強い。
◼5章|DXが「安全の空気」をつくる
最近、多くの現場でDXが導入されています。
効果は安全以上──
| Before | After |
|---|---|
| 点検漏れ/報告忘れ | 自動通知・自動記録でゼロに |
| 「守ってるか分からない」 | 実行度が可視化 |
| 形式だけの指導 | 行動データを基に改善 |
| 「やらされ感」 | 成功が共有され誇りに変わる |
努力頼みの安全から
仕組みで守れる安全へ。
これが事故ゼロを生む土台です。
◼6章|成功が伝染する職場は強い
ある新人が、
手順通りに完璧な作業を行ったとします。
管理職がその場で
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具体的に称賛する
-
社内で共有する
-
仲間が称賛する
その瞬間、
良い安全行動が
「自分を誇れる行動」に変わる。
人は報われた行動を繰り返す生き物だからです。
この成功が、チームに次々と伝染していく。
これが行動科学の力です。
◼7章|事故ゼロはゴールではなく「副産物」
本当に事故が減ると何が起きるか?
📈定着率が上がる
📈採用が強くなる
📈顧客・ご家族の信頼が上がる
📈生産性が上がる
📈管理工数が減る
📈“うちで働きたい”と思われる
そう、
「人が辞めない会社」になる。
これほどの経営効果は他にありません。
◼8章|経営者が動けば現場は変わる
事故ゼロの現場は
勝手には生まれません。
✔ 意思決定
✔ 投資
✔ 優先順位
✔ 評価制度
✔ 管理職育成
すべては経営者の判断から始まります。
安全は現場だけの責任ではない。
未来を守る経営判断そのもの。
◼9章|オフィススギヤマが伴走します
私たちは以下を一体で支援します👇
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行動科学:人が守れる仕組み
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DX導入:ヒューマンエラーを封じ込める環境
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組織開発:成功が伝染する企業文化
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人事制度連動:安全行動を正しく評価
📍対象:製造/介護/医療/物流/建設 他
📍目的:事故ゼロ・定着率向上・採用力強化
📩事故ゼロの未来は、一緒に創れます
「教育してるのに守られない…」
そんな状況で悩む経営者の皆さまへ。
まずは一度、ご相談ください。
変わる方法は、必ずあります。