『経営者が手に取るならこの一冊』 社員が“自ら動く会社”はどう作られるのか?『アンリ・ジャールの経営物語』を読んで感じたこと
杉山 晃浩
最近、「人が採れない」「社員が育たない」「利益が残らない」「幹部が動かない」といった相談を受ける機会が増えています。
もちろん、景気や人口減少の影響もあります。
しかし、私は中小企業支援の現場で、もう一つ大きな原因を感じています。
それは、
「会社が“社長個人の能力”で回っている」
という問題です。
社長が頑張れば回る。
社長が指示すれば動く。
社長が見ていれば成果が出る。
一見すると、うまくいっているように見えます。
しかし、その状態は非常に危険です。
なぜなら、社長が疲れた瞬間に会社が止まるからです。
私は社会保険労務士として、多くの企業を見てきました。
伸びる会社と、伸び悩む会社には、明確な違いがあります。
それは、
「仕組みで動いているか」
それとも
「気合いで動いているか」
です。
そんな中、今回ご恵贈いただいた一冊が非常に印象的でした。
『アンリ・ジャールの経営物語』との出会い
今回、株式会社アックスコンサルティングの広瀬元義氏より、著書『アンリ・ジャールの経営物語』をご献本いただきました。
タイトルだけを見ると、小説のようにも見えます。
しかし読み進めると、この本は単なる物語ではありません。
経営の本質を、“ストーリー形式”で理解できる非常に珍しい本です。
しかも難しい専門書ではなく、経営者や幹部が「自社に置き換えながら読める」構成になっています。
本書では、
- コンサルタントのアンリ・ジャール
- 会計士のカーン
- アシスタントのリラ
という三人が、さまざまな企業を訪問しながら、「成功する会社」と「失敗する会社」の違いを解き明かしていきます。
私はこの構成がとても良いと思いました。
なぜなら、人は“理論”だけでは動けないからです。
しかし、物語になると、自分ごととして理解しやすくなる。
これは社員教育でも同じです。
「ルールを読め」と言われても人は動きません。
しかし、具体例やストーリーがあると、急に理解が進むのです。
MAPECエンジンという考え方が面白い
本書の中心となる考え方が「MAPECエンジン」です。
これは、
- Marketing(マーケティング)
- Accounting(会計)
- Product(商品)
- Employee(従業員)
- Customer(顧客)
という5つの要素を連動させる考え方です。
私はこの考え方を見て、
「これはまさに、中小企業が苦手としている部分だ」
と感じました。
多くの会社では、
- 売上だけを見る
- 人件費だけを見る
- 採用だけ頑張る
- 広告だけ増やす
という“部分最適”が起こっています。
しかし、本来の経営は全部つながっています。
例えば、採用がうまくいかない会社。
その原因は、本当に「求人票」だけでしょうか?
実際には、
- 人間関係
- 評価制度
- 教育体制
- 給与設計
- 経営理念
- 管理職の言動
- 情報共有不足
など、さまざまな要素が絡み合っています。
つまり、「採用の問題」ではなく、「会社の構造の問題」であるケースが非常に多いのです。
この本は、その“構造”を見る視点を与えてくれます。
「自律型組織」という言葉に強く共感した
本書の中で特に印象的だったのが、
「自律型組織」
という考え方です。
社長が命令して動く会社ではなく、社員一人ひとりが自ら考え、自ら動く組織。
これは、今後の中小企業に絶対必要になると私は感じています。
なぜなら、これからの時代は、
「管理で動かす時代」
ではなく、
「納得して動く時代」
だからです。
特に若い世代は、
- なぜこの仕事をするのか
- なぜこのルールがあるのか
- 自分は何を期待されているのか
を非常に重視します。
つまり、
「意味が見えない会社」
では、人が定着しなくなっているのです。
逆に言えば、
- 方向性が共有されている
- 情報共有がある
- 共通言語がある
- 社員が考える余地がある
会社は強い。
これは、私が日頃取り組んでいる採用定着支援や組織づくりとも完全につながる話でした。
中小企業ほど「構造」を学ぶべき時代
昔は、
「社長のカリスマ」
だけでも会社は回りました。
しかし今は違います。
人口減少。
採用難。
物価上昇。
社会保険料負担増。
働き方改革。
コンプライアンス強化。
つまり、“気合いだけ経営”が通用しない時代になっています。
だからこそ必要なのが、
「再現性のある経営」
です。
誰か一人の才能に依存しない。
偶然に頼らない。
属人的にしない。
この視点を持てるかどうかで、5年後、10年後の会社の未来は大きく変わると思います。
私は社労士として、
- 就業規則
- 人事制度
- 採用定着
- ES向上
- 組織開発
に関わっていますが、結局すべては「会社の構造づくり」です。
その意味で、この本は単なる経営書ではなく、
「会社をどう進化させるかを考える本」
だと感じました。
難しい経営書が苦手な人にもおすすめ
経営書の中には、正直かなり難しいものもあります。
専門用語が多い。
横文字が多い。
理論ばかり。
しかし、この本は違います。
物語形式なので読みやすい。
しかも、
「あるある」
と思いながら読めます。
だから、
- 経営者
- 幹部
- 後継者
- 管理職
には特におすすめです。
私は、「社員に読ませたい」と思いました。
なぜなら、経営者だけが頑張っても会社は変わらないからです。
社員も“経営の視点”を持つことで、会社は大きく変わります。
最後に──「経営は才能ではない」
私はこの本を読みながら、改めて感じました。
経営は、一部の天才だけのものではありません。
もちろんセンスはあります。
しかし、それ以上に重要なのは、
- 正しい視点
- 正しい構造
- 正しい習慣
です。
逆に言えば、ここを整えれば、中小企業でも十分戦える時代です。
「人が育たない」
「社員が動かない」
「利益が残らない」
「採用できない」
もし、そんな悩みを感じている経営者がいるなら、一度この本を手に取ってみてください。
単なる知識ではなく、
「会社を見る目」
が変わるかもしれません。
▼『アンリ・ジャールの経営物語』はこちらから購入できます
広瀬元義さん、素晴らしいご献本をありがとうございました。
