2026年7月分 人事労務クイズ~職場におけるハラスメント防止措置(事業主の義務)~

問題  ∼ 職場におけるハラスメント防止措置(事業主の義務) ∼

法律で企業に義務付けられているハラスメント防止措置として、正しいものはどれでしょうか

答え

【A】 被害者をすぐに配置転換する

【B】 相談窓口を設置し、苦情処理体制を整備する

【C】 ハラスメントに関する社内研修を行わない

【B】 相談窓口を設置し、苦情処理体制を整備する

【なぜハラスメント防止措置の整備が必要なのか?】
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、すべての企業(中小企業も含む)において、ハラスメント防止のための「雇用管理上の措置」を講じることが義務付けられています。
ハラスメントは従業員のメンタル不調や離職に直結するだけでなく、企業の社会的責任やブランド価値にも関わる重要課題です。
「措置を講じない」ことは明確な法律違反であり、最悪の場合、高度な是正勧告に従わなかったとして企業名が公表されるリスクもあります。

1. 法律が企業に義務付ける「4つの柱」
厚生労働省の指針に基づき、企業は以下の措置を必ず講じなければなりません。
・方針の明確化と啓発: ハラスメントを行ってはならない旨の方針を就業規則などに規定し、従業員に周知する。
・相談窓口の設置と適切な対応: 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。
・事後の迅速かつ適切な対応: 事実関係を迅速に確認し、被害者への配慮措置と行為者への適正な措置、再発防止策を講じる。
・プライバシー保護と不利益取扱いの禁止: 相談者のプライバシーを守り、相談を理由とした解雇などの不利益な取扱いを禁止する。

2. 実務の落とし穴:「形だけの窓口」にしないためのステップ
「相談窓口は一応あるが、誰も使わない」という状態は、実務上の大きなリスクです。
窓口を機能させ、早期解決につなげるための具体的なステップは以下の通りです。
・相談員の適切な選定と「二次被害」の防止:
相談員には、男女双方を配置し、労働者が相談しやすい配慮を行います。
また、相談を受けた担当者が「あなたにも原因があったのでは?」といった不用意な発言をすることで、被害者がさらに傷つく「二次被害」を防止するため、
相談対応マニュアルの整備や相談員向けの研修実施が不可欠です。
・相談の心理的ハードルを下げる工夫:
「ハラスメントかどうかわからないグレーな段階でも、不満や違和感があれば相談してよい」というアナウンスを全社に繰り返し行います。
また、対面だけでなく、メールやチャット、匿名での相談も受け付けるなど、アクセスしやすい複数のルートを用意します。
・外部窓口(社労士・外部相談機関)の検討:
「社内の担当者には、人間関係のしがらみやプライバシー漏洩が心配で話しづらい」という従業員のために、
社外の社労士や専門の相談窓口を設置することは、心理的安心感を高める極めて有効な選択肢です。
・相談を受けた後の「社内連携フロー」の事前決定:
相談窓口が機能しない原因の一つに「相談を受けた後、どう動けばいいかわからない」という担当者の迷いがあります。
相談員だけで抱え込まず、人事労務部門、経営陣、あるいは産業医へと、どのようなルートで情報を繋ぎ、事実確認やケアを行うかという「対応フロー」をあらかじめ明確に定めておきます。

3. ハラスメントとメンタルヘルスの密接な関係
ハラスメントが発生している職場では、従業員のストレス値が高まり、休職者が増加します。
・早期対応による「不調の未然防止」:
苦情処理体制がしっかりと機能していれば、ハラスメントがエスカレートする前に食い止めることができ、従業員のメンタルヘルスを守ることができます。
・産業医とのシームレスな連携:
相談窓口でのヒアリング時に「強い精神的ストレスを感じている」と判断された場合は、速やかに産業医面談などの医学的サポートにつなげる連携ルートをあらかじめ作っておきます。

まとめ:制度づくりは「会社の防衛策」
「苦情処理体制」を整備することは、従業員のためだけでなく、会社を不要な紛争や訴訟リスクから守るための強力なセーフティネット(危機管理体制)でもあります。

自社のハラスメント防止規定や相談窓口が、単なる「お飾り」になっていないか、この機会に見直してみませんか?