振替休日と代休の違いをわかりやすく解説|知らないと休日手当の未払いに
杉山 晃浩
「日曜日に出勤してもらったから、代わりに水曜日を休みにした」
中小企業では、よくある話です。
ところが、その水曜日の休みを「振替休日」と呼ぶのか、「代休」と呼ぶのかによって、休日手当の計算が変わることをご存じでしょうか。
「どちらも、休日に働いて別の日に休むのだから同じでは?」
そう思うかもしれません。
しかし、労働法ではまったく同じではありません。
会社がこの違いを知らずに給与計算をしていると、本人に別の日の休みを与えていたとしても、休日の割増賃金が未払いになることがあります。
数年間にわたって同じ処理を続けていれば、一人分の間違いでは済みません。複数の社員について過去の勤怠記録を調べ、割増賃金を計算し直さなければならない可能性もあります。
今回は「振替休日」と「代休」の違いを、難しい専門用語をできるだけ使わず、わかりやすく解説します。
違いは「先に決めたか、後で決めたか」
振替休日と代休の違いを、ひと言で表すと次のとおりです。
振替休日は、先に休日を交換すること。
代休は、休日に働いた後で、別の日を休みにすること。
まずは、この違いを押さえてください。
例えば、会社の休日が日曜日で、通常の労働日が水曜日だったとします。
日曜日にイベントがあるため、社員に出勤してもらわなければなりません。
そこで、日曜日が来る前に会社が、
「今度の日曜日を労働日にして、代わりに水曜日を休日にします」
と決め、社員に知らせました。
これは振替休日です。
一方、日曜日に働いてもらった後で、
「昨日は出勤してもらったから、代わりに水曜日を休みにします」
と決めた場合は代休です。
結果だけを見ると、どちらも「日曜日に働いて、水曜日に休む」という形になります。
しかし、事前に休日と労働日を交換したのか、休日に働いた後で休みを与えたのかによって、法律上の取り扱いが変わるのです。
振替休日は、休日と労働日を事前に交換する制度
振替休日とは、もともと休日だった日を労働日にし、その代わりに別の労働日を休日にすることです。
先ほどの例では、日曜日と水曜日を事前に入れ替えています。
正しく振り替えられていれば、もともと休日だった日曜日は「労働日」に変わります。代わりに、もともと労働日だった水曜日が「休日」に変わります。
そのため、日曜日に働いても、法律上は休日労働になりません。
厚生労働省も、休日をあらかじめ他の労働日と振り替えた場合、もともとの休日に働かせても休日労働とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務は発生しないと説明しています。
ただし、会社が勤怠表に「振休」と入力するだけでは、法律上の振替休日になるわけではありません。
就業規則の定めや事前の手続が必要です。
また、正しく振り替えていても、週の労働時間によっては25%以上の時間外割増が必要になることがあります。
「振替休日にすれば、割増賃金は一切不要」と考えるのは危険です。
代休は、休日に働いた事実が残る
代休とは、休日に働かせた後で、その代わりとして別の労働日を休みにすることです。
例えば、会社の休日である日曜日に急な仕事が入り、社員に出勤してもらったとします。
日曜日に働いてもらった後で、会社が、
「昨日は出勤してもらったから、今度の水曜日を休みにします」
と決めました。
これは代休です。
水曜日を休みにしても、日曜日が休日だったことは変わりません。日曜日に休日労働をさせた事実も残ります。
その日曜日が労働基準法上の「法定休日」であれば、会社は原則として35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
「別の日に休ませたから、休日手当は払わなくてよい」
とはならないのです。
ここが、給与計算で最も間違えやすいところです。
社員に別の日の休みを与えることと、休日労働に対する割増賃金を支払うことは、分けて考えなければなりません。
「前もって伝えた」だけでは足りない
振替休日として取り扱うためには、単に休日出勤より前に社員へ伝えればよいわけではありません。
厚生労働省は、休日を振り替える場合の主な条件として、次の点を示しています。
- 就業規則に振替休日に関する定めがあること
- 振り替える休日を具体的に決めること
- 毎週1日または4週間で4日以上の休日を確保すること
- 休日を振り替えることを事前に通知すること
例えば、会社が社員に、
「今度の日曜日は出勤してください。代わりの休みは、仕事が落ち着いてから決めます」
と伝えたとします。
日曜日より前に伝えてはいますが、代わりに休ませる日が決まっていません。
これでは、休日と労働日を事前に交換したとは言いにくく、振替休日として認められない可能性があります。
次のような曖昧な決め方は避けましょう。
- いつか休ませる
- 本人の都合がよい日に休んでもらう
- 今月中のどこかで休んでもらう
- 繁忙期が終わってから休ませる
- 後日、本人に休みたい日を申請してもらう
「8月16日の日曜日を労働日とし、8月19日の水曜日を休日とする」
というように、働く日と休ませる日を具体的に決めておくことが重要です。
そもそも「法定休日」とは何か
振替休日と代休を正しく理解するには、「法定休日」という言葉も知っておく必要があります。
労働基準法では、会社は社員に対して、少なくとも毎週1日、または4週間で4日以上の休日を与えなければならないと定めています。
この法律上必要な休日が「法定休日」です。
例えば、土曜日と日曜日が休みの会社でも、法律上の法定休日は、そのうちの1日です。もう1日は、会社が独自に設けた「法定外休日」となります。
法定休日に働かせた場合は、原則として35%以上の休日割増が必要です。
一方、法定外休日に働かせた場合は、必ず35%の休日割増になるわけではありません。ただし、その結果として1日8時間または週40時間を超えれば、原則として25%以上の時間外割増が必要になります。
つまり、同じ「休日出勤」という言葉でも、
- どの日が法定休日なのか
- その週に何時間働いたのか
- 変形労働時間制などを採用しているか
- 休日を事前に振り替えていたか
によって、必要な割増賃金が変わります。
就業規則に法定休日が明確に定められていない会社では、まず休日の定め方から確認する必要があります。
「土日が休みだから、どちらも法定休日だろう」
「日曜日に働いたら、必ず35%増しだろう」
といった理解だけで給与計算をすると、間違いが起きる可能性があります。
振替休日でも、25%の割増が必要になることがある
ここは、経営者や給与計算担当者に特に注意していただきたいところです。
振替休日として正しく手続をすれば、もともとの休日に働いても休日労働にはなりません。
しかし、振替によって週の労働時間が40時間を超えた場合は、40時間を超えた部分について時間外労働の割増賃金が必要になることがあります。
例えば、月曜日から金曜日まで、毎日8時間働く会社を考えてみましょう。
通常であれば、1週間の労働時間は40時間です。
その週の日曜日を出勤日にして、翌週の水曜日を振替休日にすると、日曜日を含む週の労働時間は48時間になる可能性があります。
日曜日と水曜日を事前に正しく振り替えていたとしても、日曜日を含む週は40時間を8時間超えています。
この場合、休日労働に対する35%以上の割増は発生しなくても、週40時間を超えた8時間について、25%以上の時間外割増が必要になることがあります。
「振替休日にしたから、割増賃金は一切不要」
という思い込みは危険です。
可能であれば、同じ週の中で休日を振り替えるほうが、労働時間の計算はわかりやすくなります。
ただし、変形労働時間制などを採用している場合は、一般的な週40時間制とは計算方法が異なることがあります。自社の勤務制度に合わせた確認が必要です。
代休日を無給にしてよいのか
代休を与えた日の賃金をどうするかについても、よく質問を受けます。
代休は、本来は労働日だった日を後から休みにするものです。その日を有給にするか無給にするかは、就業規則や賃金規程、これまでの会社の取り扱いなどによって変わります。
時給制や日給制の社員について、代休日を無給として扱うケースはあります。
月給制の場合も、就業規則等に根拠があれば賃金を控除できる場合がありますが、会社が長年にわたって有給扱いにしてきた場合などは注意が必要です。
また、代休日を無給にしたとしても、法定休日に働かせたことに対する割増分まで消えるわけではありません。
給与計算では、次の3つを分けて考える必要があります。
- 休日に働いた時間に対する通常の賃金
- 休日労働や時間外労働に対する割増賃金
- 代休日を有給にするか無給にするか
これらを一緒に考えてしまうと、
「休日出勤した日に給料を払ったから、割増分は不要」
「代休を無給にしたから、休日手当と相殺できる」
といった誤った処理につながります。
休日出勤には36協定の確認も必要
法定労働時間を超えて働かせたり、法定休日に働かせたりする場合には、原則として36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
36協定を一度届け出れば、いつまでも有効というわけではありません。
通常は有効期間が定められているため、更新や届出を忘れていないか確認する必要があります。
また、36協定を届け出ていても、そこに定めた時間数を自由に超えられるわけではありません。
休日出勤が多い会社では、次の点を確認してください。
- 現在の36協定が有効期間内か
- 労働基準監督署へ届出済みか
- 休日労働をさせることが協定に含まれているか
- 対象となる社員の範囲が合っているか
- 時間外労働の上限を超えていないか
- 実際の勤怠記録と協定内容が一致しているか
振替休日や代休の処理だけを直しても、36協定が期限切れでは十分とはいえません。
「うちの会社は昔からこうしている」が危ない
振替休日と代休の問題は、社員から指摘されるまで気づきにくいのが特徴です。
会社側は別の日に休みを与えているため、悪いことをしている意識がありません。
社員側も、
「別の日に休めたから、これでよいのだろう」
と思っていることがあります。
しかし、退職した社員が労働基準監督署や専門家へ相談したことをきっかけに、過去の処理が問題になるケースがあります。
特に、次のような会社は注意が必要です。
- 休日出勤後に休ませているのに、すべて「振休」と記録している
- 振替日を決めずに休日出勤させている
- 就業規則に振替休日の定めがない
- 法定休日が何曜日なのか社内で決まっていない
- 振替休日が翌週になっても、週40時間超を確認していない
- 代休を与えれば休日割増は不要だと思っている
- 勤怠システムと給与計算ソフトの区分が一致していない
- 36協定の有効期限や届出状況を確認していない
- 店長や現場責任者の判断だけで休日を変更している
- 口頭で休日を変更し、記録を残していない
一つでも思い当たる場合は、勤怠表だけでなく、就業規則、雇用契約書、給与明細、36協定までまとめて確認することをおすすめします。
無料の「振替休日・代休 かんたん判定シート」をご用意しました
ここまで読んで、
「うちの処理は振替休日なのか、それとも代休なのか」
「休日手当の計算が合っているか不安になってきた」
という方もいらっしゃると思います。
そこで今回、会社の休日管理を10項目で確認できるExcel形式の「振替休日・代休 かんたん判定シート」を作成しました。
各質問に「はい・いいえ・該当なし」のプルダウンで回答すると、現在の運用状況を自動で判定します。
確認できる主な内容は、次のとおりです。
- 休日と労働日を事前に交換しているか
- 振替日を具体的に決めているか
- 就業規則に振替休日の定めがあるか
- 必要な休日数を確保しているか
- 法定休日を明確にしているか
- 35%以上の休日割増を確認しているか
- 週40時間超の時間外割増を確認しているか
- 36協定や勤怠記録が整っているか
診断結果に応じて、次に確認すべきことも表示されます。
給与計算担当者だけでなく、経営者、人事責任者、店長、現場責任者にも使っていただける内容です。
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大切なのは、呼び方ではなく実際の手続
勤怠表に「振休」と入力しているから、法律上も振替休日になるわけではありません。
大切なのは、会社がどのような名前を付けたかではなく、
- 休日出勤より前に決めたか
- 働く日と休む日を具体的に交換したか
- 就業規則に根拠があるか
- 法律上必要な休日を確保したか
- 労働時間と割増賃金を正しく計算したか
という実際の手続です。
振替休日は「先に交換」。
代休は「後でお休み」。
まずは、この違いを経営者、人事担当者、給与計算担当者、現場責任者の全員で共有してください。
休日管理を正しくすることは、単に法律違反を防ぐためだけではありません。
「働いた分の賃金を、会社がきちんと計算してくれている」
という社員の安心と信頼にもつながります。
振替休日と代休は、言葉だけを見ると小さな違いに思えるかもしれません。
しかし、処理を間違えたまま放置すると、未払い賃金、労働基準監督署への対応、退職者とのトラブルなど、大きな問題に発展する可能性があります。
「これまでずっと同じ処理をしてきたから大丈夫」と考えず、この機会に一度、自社の休日管理を点検してみてください。
【参考資料】