2025年10月分 人事労務クイズ~最低賃金~

問題  ∼ 最低賃金 ∼

月給制の社員について最低賃金を確認する場合、どのように扱うのが正しいでしょうか?

答え

【A】 月給を日数で割って日給と比較する

【B】 月給を所定労働時間で割り、時間給に換算して比較する

【C】 労使が合意していれば換算不要

【B】 月給を所定労働時間で割り、時間給に換算して比較する

最低賃金は「時間額」で決まる
最低賃金は法律上「時間あたりの賃金」で定められています。時給制の労働者なら比較は簡単ですが、月給制や日給制でも必ず時間給に換算しなければなりません。
「月給20万円だから大丈夫」と思っていても、時間給に直すと下回るケースがあるため注意が必要です。

■計算例
例えば月給20万円、所定労働時間が月173時間の場合、
20万円 ÷ 173時間 = 約1,156円/時間。
この金額を各都道府県の最低賃金と比べ、下回らないかを確認します。もし最低賃金が1,200円なら、差額を補填しなければなりません。

■どの賃金が含まれる?
算入できるのは 基本給や職務手当など恒常的に支払われるものです。
一方、賞与・通勤手当・家族手当・精皆勤手当などは対象外。給与明細を確認し、含めるべき項目と含められない項目を区別することが重要です。

■違反したらどうなる?
最低賃金を下回る契約部分は自動的に無効となり、最低賃金額に置き換えられます。
「労使が合意しているからOK」という言い訳は通用しません。使用者は差額の支払い義務を負い、さらに50万円以下の罰金のリスクもあります。

■改正動向に要注意
最低賃金は原則として毎年10月に改定されます。令和7年度改正では、多くの地域で30円以上の引き上げが行われ、全国加重平均はついに1,000円を突破しました。
政府は今後も継続的な引き上げを目標としており、地方と都市部の格差縮小も課題とされています。
その結果、これまで最低賃金を大きく上回っていた企業でも、近年は「気づかないうちに下回っていた」という事例が増えています。
特に中小企業や人件費の割合が高い業種では、昇給や手当の設計を毎年の改定に合わせて見直さなければ、違反リスクが一気に高まる点に注意が必要です。

■実務上のポイント
毎年の改定時期に給与体系を必ず見直す
月給制・日給制も時間給換算を徹底する
人事労務担当者が最新額を周知・システムに反映する

■まとめ
最低賃金は時間単価での比較が原則。下回れば契約は無効となり、差額補填や罰則リスクが待っています。
改定は毎年行われるため、最新額でのチェックを怠らないことが、企業の信頼と従業員の安心につながります。