労働関係法令で書類送検されたとする記事が増えている気がしませんか?
杉山 晃浩
『労働基準監督署が調査に来るのでどのように対応したらよいか?』といった問い合わせがときどきあります
これまでは『自然体で対応すればよいですよ。労働基準監督官は、いきなり書類送検したりしませんからね。』などとお話ししていました。
一般的な労基署の対応としては次の通りです。
定期監督(調査)⇒違法状態の発見⇒適法状態へ是正対応⇒是正報告⇒完了
特に書類送検などという言葉は出てきませんね。
ところが最近では、労働法令違反に関して書類送検という言葉を聞くことが増えた気がします。
労働情報の専門紙であう労働新聞の記事から少し抜粋してみたいと思います。
36協定が期限切れ 15人違法残業させ送検 立川労基署
この記事を要約すると次のようになります。
東京・立川労働基準監督署は、労働時間違反の疑いで丸はし食品㈱とその代表を東京地検に書類送検した。同社は36協定の期限切れ後にも、15人の労働者に週40時間超の時間外労働をさせた疑いがある。特に、一週間で最大39時間の時間外労働を行わせ、過去にも長時間労働で是正勧告を受けていたにもかかわらず、36協定を更新せずに期限切れとなっていた。過去の違反記録を基に定期監督が行われ、行政指導を挟まずに送検された。労基署は、繰り返される違反と月100時間超の時間外労働を悪質と判断している。
つまり、過去に違法状態にあったものが、一度適正化されたとしても、適法状態を維持していなければ、いきなり書類送検(司法処分)するということです。
ところで、「書類送検」という言葉を理解していますか?
「送検」とは、検察に事件の手続きが送られることです。
送検には2種類あります。ひとつは、「書類送検」と呼ばれる逮捕はされたものの釈放され、あるいは逮捕されずに書類だけが検察に送られる方法です。もうひとつは、逮捕された被疑者の身柄ごと検察に移送される「身柄送検」と呼ばれる方法です。
なお送検されると、記録の送致を受けた検察官が、起訴・不起訴の判断をします。起訴には、正式起訴と略式起訴とがある。起訴された後は、被告人として裁判を受け、判決を待ちます。 裁判での有罪率は約99%といわれていますから、起訴されるイコールほぼ必ず前科が付くということを意味します。
簡単に説明すれば、書類送検後に起訴されれば、有罪となる確率が高く、前科が付きやすいということですね。
地方都市では、書類送検されたことが地元新聞のニュースになります。すると、営業や採用に対してネガティブな効果が働き、会社としては望ましくない方向に物事が進んでいくようになります。そんなことは嫌ですよね。
一般的な事例として、定期監督の流れを取り上げましたが、そうでないケースもあります。
あなたは交通事故の被害者となったときに検察官から次のようなことを聞かれたことはありませんか。
『加害者に寛大な処罰を望みますか?それとも厳罰を望みますか?』
労働基準監督官からすれば、寛大な処罰が是正勧告で、厳罰が書類送検ということです。
先ほど上げた事例ですと、繰り返される違反と月100時間超の時間外労働を悪質と判断したから、書類送検ということになったんですね。
経営者からよく聞かされる言葉があります。
『うちは零細企業だから…』
『就業規則は古いけど…』
『残業なんてどうすれば減るかわからないし…』
これらの言い訳を続けている限り、書類送検されるリスクを持ったままの経営ということになりますね。
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