あなたの職場では「過半数代表者の適切な選出手続き」をしていますか?

杉山 晃浩

最近、労働基準法における過半数代表者の適切な選出手続きが行われているのかということが話題に上ることが増えてきました。
単純に、年度初めで36協定書の提出が多いからかもしれません。
それ以外に、民間企業を介した手続き業務や業務用クラウドシステムの入力時にも、過半数代表者の選出方法を聞かれることやチェックが厳しくなってきています。

オフィススギヤマグループでは、以前より労働者代表の選出方法の周知、各種協定書などの整備を常態として提供しているため、あまり気にかけていませんでした。多分、杉山事務所の関与先にいきなり労働基準監督官が訪問し、臨検を開始したところで過半数代表者について指摘を受けることがないので、世の中の動きに疎いのかもしれません。

実際、弊所のサービスから他の社労士事務所のサービスに乗り換えた事業所から突然連絡が入りました。『●●ってありますか?(守秘義務履行のため、●●は各自で想像してください)』との問いに、当時の担当者は『ありません』と答えるのみでした。
弊所のサービスの流れであれば、しっかり管理しているので、全く問題ないのですが、お値段方のサービスに移ってしまうと大変なことになるんですね。残念なことです。

そのようなことはとりあえず横に置いておいて、「過半数代表者の適切な選出手続き」ができていないとどのような弊害があるのかをお伝えします。

◆書類送検事例1◆
愛媛県松山市の四国青果株式会社とその工場長が、労働基準法第32条違反の疑いで書類送検されました。この会社は、違法な時間外労働を労働者2人に強いたとされ、2021年11月から2022年2月の間に最大月105時間33分の時間外労働があったことが明らかになりました。また、36協定の締結時に過半数代表の選出が民主的手続きを経ず行われたため、協定は無効と判断されました

◆書類送検事例2◆
山口県岩国市の縫製業Y・M株式会社とその労務管理責任者が、ベトナム人技能実習生2人に対して違法な時間外・休日労働を強いた疑いで書類送検されました。最長で月135時間の時間外労働が確認され、そのうち15時間が休日労働でした。同社は36協定を届出ていましたが、実習生を過半数代表に一方的に選出していたため無効と判断されました。この問題について岩国労働基準監督署は労働時間規制を超えた違法行為とし、監督を強化しています。

どちらの事例も近年のものです。

ちなみに、過半数代表者の選出方法が無効となることは、各種の協定書の効力も無効となることです。例えば、変形労働時間制の労使協定書が無効になれば、労働基準法の原理原則が適用されます。つまり、残業が発生する余地が出てくるということになります。
例えば、宮崎日本大学中学高校では、学園側が指名した教職員1人を代表者にして協定書を作成し、労基署に提出していました。『学園側が指名』することは、民主的な選出方法ではないため無効です。そして、1000万円を大きく超える未払残業代が発生したことになります。詳細については、朝日新聞デジタル『不適正な労使協定で教職員の時間外賃金未払い 是正勧告受け謝罪』をご覧ください。

ちょっとしたことですが、「過半数代表者の適切な選出手続き」に手を抜くととんでもないしっぺ返しがやってきます。
ご注意ください。

お問い合わせフォーム

労務相談、助成金相談などお気軽にご相談ください。