第2回 面接で“落とす時代”は終わった!今どきの「惹きつけ型採用」とは?
杉山 晃浩
1. 面接で候補者に逃げられた日
「またか…」
田中社長は、面接結果報告書を見ながら頭を抱えた。
今回は期待していた人材だった。履歴書も職務経歴書も申し分ない。それなのに、内定を出した翌日には辞退の連絡が入った。
「どうしてうちを選んでくれないんだろう」
理由は明白だった。面接が「企業本位」だったからだ。
2. 面接は「審査」から「共創」へ
昔は、応募者が会社を選ぶ立場ではなかった。仕事が欲しい側が頭を下げ、企業は上から目線でふるいにかけていた。
だが今、時代は変わった。
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候補者も会社を選ぶ。
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良い人材ほど複数社からオファーを受けている。
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面接は「口説きの場」になった。
企業も、選ばれる努力をしなければならないのだ。
3. 惹きつけ型採用とは何か?
「惹きつけ型採用」とは、単なる情報提供ではない。候補者と心を通わせ、一緒に未来を描くプロセスだ。
ポイントは3つ。
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面接はミーティング。
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志望動機は問い詰めるのではなく生み出す。
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面接官は広告塔。会社の未来を語る存在になる。
4. 惹きつけ型面接のストーリー
4-1. アイスブレークで「人」を知る
ある日、田中社長は意識的に面接の冒頭を変えた。
「今日は暑いですね。ところで最近、趣味で何か新しいこと始めましたか?」
そんな世間話から始めた。
候補者の顔が緩み、緊張が解けた。
この瞬間から、本音で話せる空気が生まれる。
4-2. 経歴確認は「5W1H」で具体化する
従来なら「どんな仕事をしていましたか?」と聞くだけだった田中社長。
今回は違った。
「どんな会社で、誰と、どんな方法で、何を、どのくらいの期間やって、どんな目標を持っていたのか?」
深掘りして聞くと、候補者の本当の強みや、今抱えている課題まで見えてきた。
さらに、ここで重要な質問がある。
「なぜ前職を辞めたのか」
この質問は、単なる確認ではない。
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本人の価値観や働く上での大切にしていること
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離職に至った背景や課題感
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次に何を求めているか
これらを理解するためのカギである。
前職の退職理由には、その人の”本音”が表れる。
適切に聞き取り、共感し、必要に応じて誤解や懸念を解消できれば、候補者との信頼関係を一気に深めることができるのだ。
4-3. 活かせる経験を見つける
次に田中社長は、候補者が話した過去のプロジェクト経験に耳を傾けた。
「そのプロジェクトで培った調整力、うちの新規事業立ち上げに絶対活かせますね!」
そう伝えると、候補者の目が輝いた。
さらに田中社長は続けた。
「特に○○さんのように、複数部門をまとめながら結果を出した経験は、うちでは新チームを育てる力になります。ぜひ力を貸してほしい。」
ここで単に”経験”を褒めるのではなく、”会社の未来と結びつける”ことが重要だ。
候補者は「自分の存在がここで価値を持つ」と実感し、入社意欲が高まっていった。
4-4. 未来をイメージさせる
そして最後に、田中社長は会社の未来を情熱的に語った。
「今私たちは、大きな変革の真っただ中にいます。ここから一緒に新しい市場を切り拓きたい。その中心に〇〇さんにいてほしいんです。」
田中社長は、自社の今後のビジョンを熱を込めて話し、具体的なポジションや役割までイメージさせた。
また、キャリアアップの道筋も提示した。
「最初はこのチームのリーダーですが、2年後には事業部長候補として成長していただきたいと考えています。」
ただ「入社してほしい」と伝えるだけではない。
“ここでどんな成長ができるのか” “どんな未来を築けるのか” を明確に描かせることが、候補者の心を動かす最大のポイントだ。
5. 面接官がやってしまいがちなNG行動
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形式的な質問ばかり繰り返す
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経歴書を読みながら適当に相槌を打つ
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志望動機を追及して詰める
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高圧的な態度を取る
これらはすべて、候補者の心を遠ざける。
面接は「試験」ではない。
「共に働く仲間になり得るか」を確かめるミーティングだ。
6. 社労士からのアドバイス
面接で大切なのは、「ここで働く未来」が候補者にリアルに想像できるようにすること。
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自社の未来を語る
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その人が活躍できるイメージを共有する
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心から歓迎していることを伝える
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そして「なぜ前職を辞めたのか」を丁寧に聞き、相手の本音に寄り添う
面接の主役は「会社」ではない。「未来の仲間」だ。
次回【第3回】へ続く!
「辞退ゼロ・早期離職防止!社労士が伝える『面接で心を揺さぶる技術』」
ぜひご期待ください!