賃上げで補助金最大250万円!第17回持続化補助金を社労士が徹底解説
杉山 晃浩
「賃上げに挑戦したいけれど、資金面が不安」「優秀な人材を採りたいのに採用がうまくいかない」──そう感じている小規模事業者の皆さんに朗報です。
2025年6月13日締切の「第17回小規模事業者持続化補助金」では、賃金引上げ特例を活用することで補助上限が最大250万円になります。
しかし、社労士の目線から見ると、この補助金の真の価値は「お金」だけではありません。賃上げによって従業員の定着率が上がり、離職が減少することで、社内にノウハウが蓄積され、経営の安定と採用力強化につながるのです。
この記事では、補助金の概要から申請の流れ、そして社労士だからこそ伝えたい「補助金の裏にある本当の価値」まで徹底的に解説します。
第1章:小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所と連携して作成した経営計画に基づき、販路開拓や業務改善などの取り組みを支援する制度です。
補助率は基本2/3。つまり、事業費75万円の取り組みに対して50万円が補助されます。対象経費は、以下のような幅広いものです。
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機械装置等費
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広報費(チラシ・パンフレット制作、広告掲載)
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ウェブサイト関連費(新規制作・リニューアル)
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展示会等出展費
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旅費
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新商品開発費
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借料、外注費
対象となるのは、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で従業員5人以下、製造業その他で従業員20人以下の事業者です。
第2章:賃金引上げ特例で何が変わる?
通常の補助金の上限は50万円ですが、「賃金引上げ特例」を使うと最大200万円まで引き上げられます。さらに、「インボイス特例」と組み合わせれば最大250万円です。
賃金引上げ特例の要件は、「事業場内最低賃金を50円以上引き上げる」こと。
これは単なる書類上の約束ではなく、実際に給与体系を見直し、引き上げる必要があります。
例えば、時給900円の事業場であれば950円以上にすることで要件を満たします。賃金引き上げは、従業員への直接的なメリットとなるため、彼らのモチベーション向上にも直結します。
インボイス特例は、免税事業者がインボイス発行事業者に転換した場合に適用されます。この両方を活用すれば、資金面の負担は大きく軽減されます。
第3章:社労士が考える「賃上げ」の本当の価値
社労士の立場から見て、賃上げは単なるコスト増ではなく、企業の持続的な成長の起爆剤です。
まず、賃上げは従業員の定着率を高めます。給与が低くて辞めていく人材は多いもの。賃金を見直すことで、「今の会社で頑張ろう」と思う人が増え、離職が減ります。離職が減れば、結果的に社内にノウハウが蓄積され、効率の良い業務遂行が可能になります。
さらに、職場の士気が高まり、生産性が上がります。給与が上がることで「頑張った分だけ報われる」という意識が生まれ、現場の空気が前向きになります。
第4章:採用力の強化と企業イメージアップ
近年、求職者は給与水準や待遇を非常に重視しています。賃上げを行うことで、求人市場での競争力は格段に高まります。
例えば、地域の求人票を見比べたとき、他社と同じ仕事内容でも時給が50円、100円高ければ、応募が増えるのは自然な流れです。また、賃金引上げは企業の社会的責任(CSR)の一環としても評価され、地域や顧客からの信頼感アップにもつながります。
このように、賃上げは「いい人材と出会う確率」を高め、企業イメージを押し上げる強力なツールになります。
第5章:申請から補助金受給までの流れ
第17回公募のスケジュールは次の通りです。
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公募開始:2025年3月4日
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申請受付開始:2025年5月1日
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申請締切:2025年6月13日
申請の流れは以下の通りです。
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商工会・商工会議所に相談
→ 事業計画を一緒にブラッシュアップ。 -
経営計画書を作成し提出
→ 数字や目的を明確に。 -
採択後に交付申請・決定
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補助事業を実施
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実績報告書を提出
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補助金の請求・受給
途中、経費内容や実績の記録が重要になるため、商工会所属の専門家にアドバイスを受けると安心です。
第6章:採択される計画書の作り方
採択されやすい計画書には共通点があります。
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経営課題が具体的
→ 例:「人材の確保」「作業効率の改善」 -
賃上げの目的と効果が明確
→ 例:「離職率を20%減少」「採用応募数を1.5倍に」 -
実現可能性が高い
→ 計画の実行体制や、スケジュール感を具体的に記載。
社労士としては、特に「賃上げと経営課題の関係性」の記述が重要だと考えます。単なる給与の引き上げではなく、「人材確保」「生産性向上」という経営改善と結びつけて説明することが、採択の鍵です。
第7章:まとめ|補助金の先にある、強い会社づくり
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や設備投資のための資金として魅力的です。しかし、その裏にある「賃金引上げ」の価値は、単なる補助金の額を超える経営効果をもたらします。
賃上げによって社員が定着し、ノウハウが蓄積し、職場が活性化し、採用力が向上する──。これらが揃うことで、経営は安定し、将来の成長に向けた地盤が整います。
社労士としては、補助金の活用をきっかけに、事業者の皆さんが「人を大切にする経営」に一歩踏み出してほしいと願っています。早めの相談、そして計画的な準備で、このチャンスをしっかりつかみましょう。
なお、他の賃金アップに絡む助成金、補助金を利用している場合には、事前に関係機関に併給可否を必ず確認するようにしましょう。