就業規則の教科書:新米経営者と人事担当者のためのトラブルなしマニュアル 第2回: 「給与・労働時間・休暇の基本ルールを正しく作る」

杉山 晃浩

はじめに

就業規則を作成する際に、最も重要な要素の一つが給与、労働時間、休暇に関するルールです。これらは企業の運営に直結する部分であり、従業員の働きやすさや企業の安定性に大きな影響を与えます。給与や休暇、労働時間に関するルールが曖昧であると、後々トラブルの原因になることが少なくありません。

今回は、給与、労働時間、休暇に関する基本的なルールをどのように定めるか、またその重要性についてわかりやすく説明していきます。初心者の経営者や人事担当者にも理解しやすいように、ポイントを押さえて解説します。


1. 給与に関する基本ルール

1-1. 給与の支払い方法と支給日を明確にする

最初に、給与の支払い方法と支給日をきちんと定めることが重要です。給与は従業員が最も関心を持つ部分であり、給与の支払い方法や支給日が不明確だと、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば、従業員が「給料がいつ支払われるのか分からない」と不安を感じることは、企業側にとっても避けるべき事態です。

支払い方法には、現金支払い、銀行振込、口座振替などがありますが、会社としてどの方法を採用するかを明確にしておきましょう。また、支給日も定めておく必要があります。多くの企業では月末締め、翌月10日払いなど、規定の日に給与を支払いますが、この支給日も就業規則に明記することが重要です。

1-2. 給与の内訳を明確にする

給与には基本給、手当、賞与など様々な要素が含まれます。これらの内訳を就業規則に明記しておくことが大切です。たとえば、残業代、交通費、食事手当、資格手当など、どのような手当が支給されるのかを明確に定めておきましょう。

給与の内訳が曖昧だと、従業員が「自分の給与に何が含まれているのか分からない」と感じ、後々のトラブルの原因になります。特に残業代については、残業時間をどのように計算するのかをきちんと規定しておくことが重要です。

1-3. 給与の見直しについて

給与の見直しについても、就業規則に盛り込んでおくべきです。昇給や賞与について、どのタイミングで見直しを行うのか、どのような基準で評価を行うのかを明確にすることで、従業員にとっても公平感が生まれ、モチベーションが向上します。


2. 労働時間の基本ルール

2-1. 勤務時間と休憩時間の規定

労働時間に関しては、勤務時間休憩時間をきちんと定めておくことが重要です。勤務時間が長すぎると過労につながり、従業員の健康や会社の業績にも悪影響を与える可能性があります。一方で、勤務時間が不明確だと、従業員がどれくらい働くべきか迷ってしまうことがあります。

通常、企業では1日8時間、週40時間が標準的な勤務時間とされていますが、会社の方針により柔軟に設定することも可能です。たとえば、フレックスタイム制度シフト勤務など、業務内容に応じて柔軟に対応できるようにすることも一つの方法です。

また、休憩時間の規定も重要です。一般的に、労働基準法では1日の勤務時間が6時間を超える場合に最低30分の休憩を取ることが求められています。就業規則には、休憩時間の長さや、どのタイミングで休憩を取るかを決めておくと良いでしょう。

2-2. 残業とその取り決め

残業に関する取り決めは、特に重要です。残業代を支払うかどうか、またどのように残業を計算するかは、就業規則に明確に記載する必要があります。

残業代の支払い方法についても、時間外労働の割増賃金を支払うことが法律で定められており、これを守らない場合は、企業が罰則を受ける可能性があります。通常、残業代は時間単位で支払われる形になりますが、その計算方法(例えば、基本給に基づく計算や、時給換算など)も就業規則に記載しておくとよいでしょう。

2-3. フレックスタイム制度やシフト勤務

フレックスタイム制度やシフト勤務を導入している企業では、労働時間の柔軟性を高めることができます。これらの制度では、勤務時間を一定の範囲で自由に調整できるため、従業員のライフスタイルに合わせた働き方が可能となります。

フレックスタイム制度やシフト勤務の導入には、労働時間の上限や勤務時間帯の管理が必要ですので、そのルールを就業規則に記載し、従業員に十分に説明しておくことが重要です。


3. 休暇の基本ルール

3-1. 有給休暇の取り決め

有給休暇は、従業員に与えられた法的権利です。労働基準法により、従業員には一定の勤務年数に応じた有給休暇が付与されます。例えば、6ヶ月勤務後に10日間の有給休暇が与えられるのが一般的です。

有給休暇の取り決めに関しては、どのように申請を行い、どのように取得するかを明確に定めておく必要があります。例えば、事前申請制にするか、希望に応じた取得を認めるかなど、企業の運営方針に合わせて規定します。

3-2. 特別休暇や産休・育休

有給休暇だけでなく、特別休暇産休・育休の規定も就業規則に含めておくべきです。特別休暇は、慶弔休暇病気休暇育児休暇などが含まれます。これらの休暇に関して、取得条件や申請方法を明確にしておくことで、従業員が安心して利用できるようになります。

また、産休・育休に関しても、法的に保障されている休暇であるため、企業はこれらの休暇をどのように取り決めるかを就業規則に定めておくことが重要です。


まとめ

給与、労働時間、休暇に関する基本的なルールをしっかりと定めることは、企業の安定した運営従業員の安心した働き方を実現するために欠かせません。これらのルールが曖昧だと、後々のトラブルや不満が生じ、企業の成長に支障をきたすことがあります。

次回は、解雇・退職の際の手続きハラスメント対策について詳しく解説します。就業規則をしっかりと整備し、トラブルのない職場作りを進めていきましょう。

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