就業規則の教科書:新米経営者と人事担当者のためのトラブルなしマニュアル 第4回: 「就業規則の更新・専門家の活用法:持続可能な職場作りのために」

杉山 晃浩

はじめに

就業規則の作成は、企業運営における最初の大きなステップですが、それだけで終わるわけではありません。就業規則は定期的に更新することが必要です。時代の変化、法改正、企業の成長に合わせて、就業規則を見直していくことが求められます。特に、法令の変更に伴って、就業規則を適切にアップデートしないと、企業が法的リスクを負うことになりかねません。

また、就業規則を作成するだけでなく、専門家のサポートを活用することも重要です。社労士や弁護士など、専門家の知識を借りることで、より正確で企業にとって最適な就業規則を作成することができます。

今回は、就業規則の更新方法専門家の活用法について詳しく解説します。初心者の経営者や人事担当者の方々に向けて、わかりやすくお伝えしていきます。


1. 就業規則の更新が必要な理由

1-1. 法改正への対応

就業規則は、企業の内規であると同時に、法令遵守のための重要なツールでもあります。労働基準法や労働契約法、健康保険法など、労働関連の法令は定期的に改正されることがあります。これらの法改正を反映させていない就業規則は、企業にとって法的リスクを伴うことになります。

例えば、育児・介護休業法働き方改革関連法などの新しい法律が施行された際、その内容を就業規則に反映させていなければ、従業員に正しい情報を提供できないことになります。また、法改正によって企業に義務付けられる対応が増えることもあるため、定期的に就業規則を見直し、最新の法律に適応した規定を盛り込むことが非常に重要です。

1-2. 企業の成長に合わせた見直し

企業が成長するにつれて、従業員数が増えるだけでなく、業務内容や運営方針も変わることが多くなります。たとえば、初めは少人数で運営していた企業が、成長とともに多くの従業員を抱えるようになった場合、フレックスタイム制度シフト勤務テレワークなどの新しい働き方に対応した規定が必要になります。

また、新たな福利厚生や職場の取り決めが必要となる場合もあります。採用時の条件昇進・昇給の基準など、企業が変化する環境に適応した就業規則を作成することが大切です。


2. 就業規則の更新方法

2-1. 定期的なレビューの実施

就業規則を一度作成したら、それで終わりというわけではありません。年に1回程度、定期的に見直しを行うことが重要です。法改正や企業の状況に合わせて、就業規則を更新するタイミングを決め、定期的にレビューを行うようにしましょう。

レビューの際には、従業員からのフィードバックや実際の運用状況も参考にすることが有効です。たとえば、従業員が休暇を取得しにくい、残業が多すぎるなどの問題があれば、その原因を特定して就業規則を改善することができます。

2-2. 法改正のチェックと反映

毎年、政府や厚生労働省から発表される法改正情報に目を通し、それに応じて就業規則を見直すことが大切です。特に、労働基準法労働契約法の改正、最低賃金の変更などは企業に大きな影響を与えるため、必ず確認し、適切に就業規則に反映させましょう。

また、労働時間の管理方法休暇の取り決めに関して、新たに法的要件が追加されることもあります。これらの法改正に関して、労働基準監督署などの公式情報を参考にして、規定を見直していく必要があります。


3. 専門家の活用法

3-1. 社労士(社会保険労務士)の活用

社労士(社会保険労務士)は、企業の労務管理に特化した専門家であり、就業規則の作成や更新をサポートするプロフェッショナルです。社労士を活用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 最新の法令に基づいた規定作成: 社労士は労働法に関する深い知識を持っており、最新の法令に基づいて適切な規定を作成できます。

  • 企業の実情に合わせたカスタマイズ: 社労士は、企業の業種や規模、従業員数に応じて、最適な就業規則をカスタマイズしてくれます。

  • トラブル回避のためのアドバイス: 社労士は過去に様々な企業でトラブル解決に携わっており、実務経験を活かして、トラブルを未然に防ぐためのアドバイスを提供してくれます。

3-2. 弁護士の活用

企業が法的なリスクを避けるためには、弁護士のサポートも重要です。弁護士は、労働契約に関する法律的な観点から、より詳細で法的に安全な規定を作成することができます。特に、解雇や労働争議などが予想される場合には、弁護士の意見を仰ぐことで、企業が法的に正しい判断を下すことができます。

弁護士に依頼する際は、社労士と連携を取ってもらい、法的な観点からも問題ない就業規則を作成していくとよいでしょう。


4. 就業規則を更新する際のポイント

4-1. 従業員とのコミュニケーション

就業規則を更新する際には、従業員への説明会を開いたり、意見を聞いたりすることも大切です。従業員が自分たちの働き方にどのようなルールが適用されているのかを理解していることは、企業の運営にとって非常に重要です。更新後に従業員からフィードバックを受けて調整を行うことも検討しておきましょう。

4-2. 柔軟性を持たせる

就業規則は、企業の方針に沿って整備するべきですが、企業環境や労働市場の変化に柔軟に対応できるように設計することも重要です。例えば、テレワークの導入フレックスタイム制度など、変化する時代に合わせて、就業規則の内容を更新する柔軟性を持たせることが大切です。


まとめ

就業規則は、企業の運営において非常に重要な役割を果たします。作成後も定期的な更新と、法改正への対応が欠かせません。さらに、就業規則の作成や更新を専門家に任せることで、より正確で企業にとって最適な規定を作成することができます。社労士や弁護士などの専門家を活用することで、企業は法的なリスクを最小限に抑えつつ、従業員が安心して働ける環境を提供することができます。

今後、企業は変化する社会や法令に合わせて、柔軟に就業規則を見直し、持続可能な職場作りを進めていきましょう。

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