最低賃金1,500円は通過点!中小企業が今やるべき「5年後を見据えた経営戦略」
杉山 晃浩
第1章 なぜ「最低賃金1,500円」が“通過点”なのか?
政府は、2020年代のうちに最低賃金の全国加重平均を1,500円まで引き上げる方針を明言しています。2024年度には全国平均が1,055円となり、今後も毎年30円〜50円ずつ上昇することが予想されています。
この流れは一時的な政策ではなく、少子高齢化による人手不足と、賃上げによる消費拡大という経済の構造変化を伴う“既定路線”です。
中小企業は「様子を見る」のではなく、「上がることを前提に設計し直す」段階にきているのです。
第2章 最低賃金の引き上げで、何が“逆ザヤ”になるのか?
最低賃金が上昇すると、若手やパート社員の基本給がベテランと近づく、あるいは追い越すことが起きます。これにより、職場の不公平感やモチベーション低下といった副作用が生まれます。
また、「基本給=最低賃金ギリギリ」で設定していた企業は、他の手当とのバランスが崩れ、人件費全体が上昇します。結果として利益率が圧迫され、資金繰りが悪化する恐れもあります。
第3章 5年後を見据えた中小企業の「持続可能な経営戦略」とは?
持続可能な経営の鍵は「人に頼りすぎない」こと。
属人的な業務を減らし、業務プロセスを標準化・可視化・デジタル化することで、同じ人員でもより高い成果を上げられる体制にシフトすることが求められます。
具体的には、
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アナログ管理からの脱却(紙・FAX・手入力など)
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クラウド型システムの導入
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マニュアル整備・業務分担の見直し
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ツールの併用による情報の一元管理
が必要です。
第4章 給与制度の再設計が会社を救う:今こそ“職能給”から“職務給”へ
年齢や勤続年数で賃金が決まる「職能給」は、最低賃金上昇との相性が悪くなっています。
今後は、「どんな仕事に、どれだけの責任を持ち、どのような成果を出しているか」を基準とした「職務給」への転換が必要です。
職務記述書を作成し、業務内容ごとに評価軸を設定した上で、
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貢献度に応じた昇給・賞与
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チーム単位の成果評価
などを組み合わせることで、納得性のある報酬制度を構築できます。
第5章 値上げできない会社は生き残れない:価格転嫁の3ステップ
賃上げだけが先行し、販売価格に転嫁できなければ経営は成り立ちません。
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自社の価値の言語化:小回り・専門性・スピードなどの強みを明文化する
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顧客との関係強化:定期的な報告・挨拶・ニュースレターで信頼を深める
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価格改定の説明スキル:値上げの理由を“お客様のメリット”視点で伝える
これらを実践することで、取引先との価格交渉も前向きなものになります。
第6章 使える国の支援策で“未来への布石”を打つ
業務改善助成金、人材開発支援助成金、IT導入補助金などは、単なる「一時的な補填」ではなく、「体質改善」のための資金源と捉えるべきです。
たとえば、オフィススギヤマグループでは、以下のような“仕組み”を整備することで、持続可能な経営支援を実現しています:
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基幹システムに「社労夢(エムケイシステム)」を採用
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「ネットde勤怠」「ネットde給与」「ネットde明細」による一元管理
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kintone・Chatworkの活用で社内外情報をスムーズに共有
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RPA導入による定型業務の自動化・省力化
これらのシステムを組み合わせることで、労務・経理・業務管理の効率化と見える化を同時に進めています。
中小企業にとっては、こうした外部パートナーとの連携が“経営支援そのもの”になる時代です。
最終章 「最低賃金に振り回されない会社」が選ばれる時代へ
最低賃金の引き上げは、確かに中小企業にとってプレッシャーです。ですが、それは“変化のきっかけ”でもあります。
・給与制度を見直す ・業務を見える化する ・ツールを活用して人件費を抑制する ・支援制度を最大限活かす
こうした一つひとつの改革を重ねることで、最低賃金1,500円時代を“脅威”ではなく“成長のチャンス”と捉えることができるはずです。
オフィススギヤマグループでは、そうした取り組みを一緒に進める経営者の皆様を全力で支援しています。
「変化に対応する力」が、次の5年、10年の未来を決めます。
中小企業が生き残る道は、もう走り始めています。