退職金2,000万円でも税金ゼロ!? 退職所得控除を味方にする方法

杉山 晃浩

第1章:そもそも「退職所得控除」って何?

定年退職や転職、会社都合での退職時に支払われる「退職金」。
長年の労働の集大成とも言えるこのまとまったお金には、実は特別な“税制優遇”が用意されています。

それが「退職所得控除」です。
これは、退職金に対して一律で税金がかかるのではなく、ある一定額までは課税対象から差し引いてもらえる仕組みのこと。給与所得などと比べて非常に優遇されており、適切に活用すれば数千万円の退職金に対して、税金ゼロということもあり得ます。

なぜそこまで優遇されているのでしょうか?

理由は簡単です。
退職金は「長期間勤めたことに対する労い」として支払われるものだから。生活資金、老後の資金として大切に使うべき性質のお金です。だからこそ、国も“なるべく税金をかけずに渡してあげよう”という配慮をしているのです。


第2章:退職所得控除の計算方法をやさしく解説

では、実際の控除額はどうやって計算するのでしょうか?

【基本ルール】

  • 勤続年数が20年以下:年数 × 40万円

  • 勤続年数が20年超:800万円 +(21年目以降の年数 × 70万円)

例えば、43年間勤務して退職する場合:

  • 20年分:40万円 × 20年 = 800万円

  • 残り23年分:70万円 × 23年 = 1,610万円

  • 合計:2,410万円が控除される

さらにここが重要ですが、
退職金からこの控除額を引いた金額に1/2をかけたものが、「課税退職所得」となり、これに所得税・住民税がかかるのです。

▶シミュレーション

  • 退職金:2,200万円

  • 控除額:2,410万円

  • 課税退職所得:(2,200万円 – 2,410万円) × 1/2 = 0円

このように、条件次第では2,000万円を超える退職金でも税金がかからないのです。


第3章:退職所得控除を最大限に活かす3つのポイント

① 勤続年数の「数え方」に注意!

退職所得控除での勤続年数は、1年未満の端数を切り上げて計算されます。
たとえば、勤続年数が42年8ヶ月で退職した場合は、43年とみなされます。退職時期が1ヶ月違うだけで控除額が大きく変わることもあるため、事前に確認しておくと安心です。

② 退職金を「複数回」に分けて受け取る場合の落とし穴

退職金を退職時と、その後役員退職金として分けて受け取るケースがあります。この場合は、退職所得控除額を分割して適用する必要があるため、全額が非課税にならないことも

複数回にわたる退職金支給を検討する場合は、必ず税理士や社労士に事前相談を。

③ 役員退職金と一般退職金の違い

一般社員と異なり、役員退職金は“損金算入の可否”や“妥当性の検証”が税務調査の対象になります。
役員退職金の額や支給の根拠(就業規則や退職金規程)が不明確だと、税務署から「一部損金否認」とされるリスクがあります。退職金の適正設計とともに、規定類の整備も不可欠です。


第4章:見直しが迫る退職金税制、今後の動向に要注意!

2025年度(令和7年度)以降、政府では「退職所得控除の見直し」も議論されています。

特に注目されたのが、21年目以降の加算額を現在の70万円から40万円に引き下げる案。これが実現すれば、長く勤めた方ほど控除額が減り、課税所得が増えることになります。

たとえば同じ43年勤務・退職金2,200万円の例で試算すると…

  • 【現行制度】:控除額2,410万円 → 課税所得0円 → 税金0円

  • 【見直し案】:控除額1,720万円 → 課税所得240万円 → 税金約38万円

「長く勤めた人が損をする」という逆転現象が起きかねないわけです。
しかもこの改正、主に大企業勤務者が対象になるため、サラリーマン増税と批判されています。


第5章:まとめ 〜退職金を守るには“今”の制度理解がカギ〜

退職金に税金がかかるのか、かからないのか。それは単に金額だけでなく、勤続年数や受け取り方の違い、制度設計の有無などによって大きく左右されます。

そして、今後税制が改正されるとすれば、「退職金を受け取る時期」も戦略的に選ぶ時代が来るかもしれません。

✅退職金をどう設計するか
✅どのタイミングで退職するか
✅退職金規程などを整備できているか

これらをしっかり確認しておくことが、将来の税金リスクを減らす第一歩です。


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