2025年改正「保育支援」義務化──企業内保育所とベビーシッター補助、現実的な選択肢とは?

杉山 晃浩

はじめに

2025年10月に施行される育児・介護休業法改正では、育児期の柔軟な働き方の制度化が企業に義務づけられます。その中には「保育施設の設置・運営」や「ベビーシッター利用の支援」といった 保育支援 も含まれており、企業が選択肢の一つとして整備すべき対象になっています。

これまでは「保育支援=大企業がやるもの」という印象が強かったかもしれません。しかし今回の改正により、中小企業でも何らかの対応を考えなければならない状況になりました。

本記事では、企業内保育所とベビーシッター補助のメリット・課題を整理し、中小企業にとって現実的な選択肢は何かを考えていきます。


第1章 保育支援義務化のポイント

今回の改正では、事業主は「3歳から小学校就学前の子を養育する従業員」に対して、柔軟な働き方を可能にする複数の制度を用意することが義務化されます。その中の一つが 保育支援制度 です。

制度の例としては以下が挙げられます。

  • 企業内保育所の設置・運営

  • ベビーシッター派遣の手配・費用補助

  • 近隣保育施設との提携利用支援

企業はこれらを「選択肢」として従業員に提示し、就業規則や福利厚生規程に明文化する必要があります。


第2章 企業内保育所の導入メリットと課題

メリット

  • 社員の安心感・定着率アップ
    子どもを社内で預けられる安心感は非常に大きく、特に復職率向上に直結します。

  • 採用広報でのアピール材料
    「企業内保育所あり」は求人票で強い訴求力を持ちます。

  • 出勤率の安定
    子どもを職場近くで預けられるため、遅刻や欠勤の減少が期待できます。

課題

  • 設置・運営コストが高い
    専用スペースや人員確保が必要で、数千万円単位の投資が発生するケースもあります。

  • 利用者数が限定的
    社員数や利用希望者が少ないと、費用対効果が見合わない可能性が高いです。

  • 小規模事業所では現実的でない
    特に中小企業では「設置は理想だが実際には難しい」というのが現実です。


第3章 ベビーシッター補助のメリットと課題

メリット

  • 導入が比較的容易
    外部のベビーシッターサービスと提携し、利用時に費用補助を行う形で導入可能です。

  • 柔軟性が高い
    保育園の送迎、病児対応、行事の日など多様なニーズに対応できます。

  • 初期投資が不要
    保育所のような大きな設備投資は必要なく、小規模企業にも取り入れやすいです。

課題

  • 費用負担のルール設定が必要
    1時間あたりの補助上限、月額上限などを明文化しなければ不公平感が出ます。

  • 公平性の問題
    利用できる社員とそうでない社員が分かれると不満が生じやすいです。

  • 急な利用対応の限界
    地域によってはベビーシッターの確保が難しい場合もあります。


第4章 導入に際しての工夫を考えてみよう

4-1 助成金の活用

厚労省の「両立支援等助成金」や「企業主導型保育事業」などを利用することで、導入コストを抑えられます。

4-2 共同利用モデル

単独で企業内保育所を運営するのが難しい場合、近隣企業やグループ会社と共同設置する方法もあります。

4-3 他制度との組み合わせ

ベビーシッター補助に加え、短時間勤務制度・時差出勤制度を整えることで、総合的な子育て支援体制を構築できます。

4-4 利用条件の明確化

補助額の上限や利用対象者の範囲を規程に明記し、透明性を確保することが重要です。


第5章 中小企業がとるべき現実的な選択肢

結論として、多くの中小企業にとって現実的なのは ベビーシッター補助や外部サービスの活用 です。

  • 大規模な企業内保育所はハードルが高い

  • 外部サービスとの提携であれば導入が容易

  • 補助額の調整でコスト負担をコントロールできる

無理に完璧な制度を整備する必要はなく、「実際に利用できる制度」をつくること が重要です。


第6章 総括:形だけでなく実際に使える制度に

保育支援の義務化は、単に「法令対応」というだけでなく、採用や定着、企業イメージに直結する大きなテーマです。

しかし、制度が形骸化すれば「利用できない制度」になり、従業員の不満を増幅させかねません。
だからこそ、自社の実情に合わせた制度設計と運用ルールが必要になります。


おわりに──杉山事務所にご相談ください

2025年10月の改正は目前です。
「企業内保育所のような大規模な取り組みは無理」と考えてしまうかもしれませんが、実際には ベビーシッター補助や外部提携を組み合わせることで、十分に法令対応が可能です。

ただし、補助のルール作成や就業規則・福利厚生規程の整備、助成金の活用には専門的な知識が不可欠です。

私たち 杉山事務所 は、

  • 保育支援制度の設計(保育所・シッター補助の比較検討)

  • 就業規則・規程への反映

  • 助成金活用によるコスト削減

をトータルでサポートしています。

「うちの会社に合った制度が分からない」 という段階からでも大丈夫です。
2025年改正に向けて今から準備を始めたい企業は、ぜひ杉山事務所にご相談ください。

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