2025年改正「短時間勤務制度」1日6時間勤務の原則化──企業が直面する課題と解決法
杉山 晃浩
はじめに
2025年10月から施行される育児・介護休業法の改正では、子育てと仕事の両立を一層支援するための制度が強化されます。その中でも注目すべき改正の一つが、「短時間勤務制度(時短勤務)」における1日6時間勤務の原則化 です。
これまでも育児中の社員には短時間勤務制度を設ける義務がありましたが、時間数の設定はある程度柔軟でした。改正後は「1日6時間勤務」を原則とするルールが明確化され、企業は制度の見直しを迫られることになります。
では、この改正が企業にどのような影響を与え、どんな課題と解決策があるのでしょうか。
第1章 短時間勤務制度の制度概要
現行制度との違い
現行の育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者に対して「1日原則6時間程度の短時間勤務」を可能とする制度を設ける義務がありました。しかし、運用の幅が広く、実際には「7時間」や「5時間」など企業ごとに異なる運用が行われていました。
今回の改正では、「1日6時間勤務」が原則化 され、より一律的な基準が設けられます。
適用対象
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小学校就学前の子を養育する従業員(正社員だけでなく、一定条件を満たす契約社員やパートも対象)
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フルタイム勤務が基本の労働者
企業に求められる内容
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短時間勤務制度を「1日6時間勤務」を原則とする形で整備
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就業規則や育児介護休業規程に明文化
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実際に運用可能な体制を整備すること
第2章 短時間勤務制度がもたらすメリット
短時間勤務は企業にとって「義務」となる一方で、うまく運用すれば多くのメリットをもたらします。
2-1 子育て世代社員の就業継続支援
育児と両立しやすくなることで、離職を防止できます。特に女性社員のキャリア形成を後押しする大きな効果があります。
2-2 離職防止・人材定着への効果
「子どもが小さいから退職」という選択肢を減らし、人材流出を防ぎます。採用コスト削減にもつながります。
2-3 採用競争力の強化
短時間勤務制度の充実は求人での訴求力が高く、「子育てに理解のある会社」として応募者の安心感を得られます。
2-4 エンゲージメントの向上
「制度を使わせてもらえた」という体験が、従業員の会社への信頼や忠誠心を高めます。
第3章 企業が直面する課題
もちろん、制度導入や運用には多くの課題があります。
3-1 人員配置の難しさ
短時間勤務者が増えると、業務時間のカバーが難しくなります。特に現業職やシフト勤務では深刻です。
3-2 業務の切り分け
6時間で終えられるように業務を再設計する必要があります。従来通りの業務量を与えると「時短勤務なのに残業」という矛盾が生じかねません。
3-3 給与・人事制度との整合性
勤務時間が短い分、給与や賞与、昇進への扱いをどうするか明確にしないとトラブルになります。
3-4 他従業員との公平性
「時短勤務の社員の分を他の社員が補っている」と感じると不満が生まれ、職場の雰囲気が悪化します。
第4章 導入に際しての解決法を考えてみよう
4-1 業務プロセスの見直し
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業務を細分化・マニュアル化し、6時間で完結できるように設計する
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繰り返し業務はITツールや自動化を導入する
4-2 人材の多様化活用
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短時間勤務でカバーできない時間帯はパートや派遣を活用
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シフトを柔軟に組み、勤務時間の重なりを工夫する
4-3 勤怠管理システムの最適化
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6時間勤務を正確に記録し、給与計算と連動させる
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時短勤務者とフルタイム勤務者を区別して管理する仕組みを整える
4-4 公平性の担保
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評価基準を「成果」や「能力」に重きを置き、勤務時間だけで判断しない
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時短勤務者でもキャリアパスを描ける仕組みを整備する
4-5 助成金の活用
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「両立支援等助成金」などを利用して、制度導入やシステム整備のコストを抑える
第5章 総括:制度を「形」から「運用」へ
短時間勤務制度は、単に「設置すること」がゴールではありません。実際に従業員が安心して使え、企業としても持続的に運用できる仕組みにすることが重要です。
制度が形骸化すると、「制度はあるが使えない」「利用したら職場の雰囲気が悪くなった」という事態を招きます。これを防ぐには、経営層・管理職の理解と現場での具体的な運用ルールが欠かせません。
おわりに──杉山事務所にご相談ください
2025年改正の短時間勤務制度対応は、単なる就業規則の修正にとどまらず、業務設計・人事評価・勤怠管理システム・助成金活用など幅広い実務を伴います。
杉山事務所では、
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自社の実情に合わせた短時間勤務制度の設計
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就業規則・人事制度との整合性チェック
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勤怠管理体制の構築支援
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助成金活用によるコスト削減
を一括してサポートしています。
「うちの会社ではどうすればいいか」 という段階からでも大丈夫です。
2025年改正に向けて今から準備を始めたい企業は、ぜひ杉山事務所にご相談ください。