人件費だけが膨らむ会社に未来はない パーキンソンの法則で読み解く“最低賃金時代の経営改革”
杉山 晃浩
第1章 最低賃金の上昇が突きつける「経営の現実」
最低賃金は、もはや“毎年上がるのが当たり前”の時代になりました。
宮崎でも、ここ数年は5年連続で上昇。
もはや「上がる・上がらない」という議論ではなく、
“どう付き合うか”が経営課題の中心になっています。
問題は、給与が上がっても業務のやり方が昔のままなこと。
同じ働き方・同じ生産性のままであれば、
当然ながら人件費だけが膨らみ、利益は圧迫される構造になります。
一方で、賃上げを実現できない会社は、採用市場で不利になります。
「人が採れない」「人が続かない」という悩みの裏側には、
“時代に合わせた業務設計の遅れ”があります。
では、何を変えればいいのか。
ここでヒントになるのが、あの「パーキンソンの法則」です。
第2章 仕事は時間と人に合わせて膨張する──パーキンソンの法則とは
1950年代、英国の政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンは、
官僚組織を観察してある法則を導き出しました。
「仕事は、与えられた時間と人数を使い切るまで膨張する」
つまり、人を増やせば仕事も増える。
時間を延ばせば、その分だけ仕事が長引く。
これがパーキンソンの法則です。
中小企業の現場を見ていると、この法則が驚くほど当てはまります。
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「忙しいのに利益が出ない」
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「人を増やしたのに残業が減らない」
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「効率化のつもりが、報告書ばかり増えた」
こうした現象は、実はすべて“仕事の膨張”によるもの。
本来必要な業務以外に、確認・報告・承認といった「ムダな構造」が積み重なっているのです。
第3章 人を増やす前に、仕事の設計を見直そう
人手不足に悩む経営者ほど、
「人を増やせば回る」と考えがちです。
けれど実際には、人を増やすほど生産性が落ちることもあります。
理由はシンプル。
人が増えると、情報共有・確認・教育といった“コミュニケーションコスト”が増えるからです。
例:ある介護事業所のケース
人員を増やしたのに、なぜか残業が減らない。
調べてみると、担当者ごとに配膳手順や記録方法がバラバラ。
ベテランは新人に任せきり、情報共有も曖昧でした。
そこで、業務を分解して「誰でもできる標準手順」に整理。
するとベテランはケア業務に集中でき、
利用者満足が向上しながら残業が30%削減されました。
“人を増やす前に、仕事の形を整える”。
この一手が、経営を大きく変える起点になります。
第4章 「ムダ時間」を可視化すると利益が見えてくる
企業の中には、見えないムダがたくさん潜んでいます。
・会議のための会議
・同じ資料を何度も作り直す
・承認待ちで止まる仕事
・メールのやり取りが終わらない
これらは“忙しさ”の正体であり、
会社の利益を静かに食いつぶす影のコストです。
社労士の立場から提案できるのは、
このムダを「可視化」する仕組み。
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職務分析や業務棚卸し
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ESチェックによる停滞・不満の抽出
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業務フロー図によるプロセス設計
可視化すれば、何に時間を使っているのかが明確になります。
実際、業務を数値化しただけで、
「こんなに報告業務に時間を取られていたのか」と驚く経営者は少なくありません。
第5章 賃上げをチャンスに変える“仕組み経営”
最低賃金が上がるたびに「苦しい」と感じる会社もあれば、
「今こそチャンス」と言う会社もあります。
違いは、“仕組みで動いているかどうか”。
仕組みで動く会社は、人件費をコストではなく「投資」と見ています。
業務を整理して、社員一人あたりの付加価値を上げていく。
改善のヒント:
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定型業務は自動化(RPA・クラウド導入)
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成果に連動する評価制度に再設計
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多能工化で人材の柔軟配置
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「時間あたり生産性」で経営を可視化
内科クリニックの例では、受付をオンライン化して待ち時間を短縮。
結果、医師の残業が減り、
空いた時間でスタッフ教育に時間を使えるようになりました。
それが職員満足度と売上の両方を上げたのです。
第6章 働き方改革と賃上げ改革は、同じゴールを見ている
働き方改革という言葉が先行しすぎて、
「早く帰る」ことが目的になっている会社も少なくありません。
本来の働き方改革は、
“時間あたりの生産性を高める”仕組みづくりです。
パーキンソンの法則が示すように、
時間と人を増やすだけでは成果は上がらない。
むしろ、“制約の中でどう成果を出すか”を考えることが改革の本質です。
つまり、働き方改革も賃上げ改革も、
ゴールは同じ――「人が疲弊せずに成果を上げる仕組みづくり」。
第7章 杉山事務所ができる支援──“時間と人”をデザインするパートナーとして
オフィススギヤマでは、
「働き方」と「人件費」を切り離さず、
両輪で最適化する仕組みづくりをサポートしています。
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業務フロー分析・職務再設計
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評価・賃金制度の見直し
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生産性を高める人事制度設計
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助成金活用(業務改善・働き方改革関連)
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ESチェックによる職場診断
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“人件費=投資”を前提とした組織づくり
賃上げを「恐れる経営」から、
賃上げを「伸びる経営」へ。
その転換を仕組みで支えるのが、社労士の役割だと私は思っています。
【まとめ・メッセージ】
最低賃金が上がるのは、避けられない未来です。
けれど、それを恐れる必要はありません。
経営者が時間と人の使い方を変えれば、
人件費の上昇は“成長のサイン”に変わります。
人件費だけが膨らむ会社に未来はありません。
けれど、人を育て、仕組みで時間をデザインする会社には、未来しかありません。
それではどこから手を付けますか?
「忙しいのに儲からない」
「賃上げをしたいけど体力がない」そんな悩みのある経営者の方へ。
オフィススギヤマでは、
働き方改革・評価制度・業務効率化の設計支援を行っています。一緒に、“最低賃金時代を生き抜く経営構造”をつくりませんか。