評価面談が“地雷”になる瞬間──公平理論で考える「納得度のない評価」の共通点
杉山 晃浩
第1章 なぜ「評価面談」は毎年ギスギスするのか
「またこの時期が来たか…」
評価面談の季節になると、管理職の顔が曇る。
一方で社員も、「どうせ頑張っても変わらない」と、半ばあきらめ顔。
制度はしっかり作ったはずなのに、運用の現場はいつもピリピリしている。
これ、実はどこの企業にもある“あるある”です。
原因は単純。
評価制度の不備ではなく、「納得感」を生む対話が足りないからです。
どんなに緻密な制度でも、人が運用する以上、“伝え方”を間違えると、火薬庫のように不満がくすぶります。
第2章 公平理論とは──人は損得より“バランス”で動く生き物
アメリカの心理学者アダムスが提唱した「公平理論」は、今も人事の現場で生き続けています。
人は、自分の努力(インプット)と報酬(アウトプット)のバランスを、他人と比較して判断する。
この「比較」が、“公平”の感覚を生み出すという考え方です。
たとえば、
「同じくらい残業しているのに、自分だけ評価が低い」
「新人なのにボーナスが自分と同じ」
こうした“相対的不公平感”が、人のやる気を大きく下げてしまう。
面白いのは、人は「損したくない」よりも、「不公平だと感じたくない」生き物だという点です。
評価制度で問題が起きるのは、この心理を見落としているときなのです。
第3章 面談で火種が生まれる“3つの地雷ワード”
評価面談で、悪気なく地雷を踏む瞬間があります。
それが以下の3つの言葉です。
①「他の人と比べて…」
→ 比較対象を出すことで、社員は“公平な評価軸”を失います。
「比べたら負け」「上司はえこひいきしている」と感じやすくなります。
②「上からの指示で…」
→ 権限の所在を曖昧にすると、評価者への信頼が一気に崩れます。
「どうせ自分には関係ない」と、部下は上司の言葉をシャットアウトします。
③「次はもっと頑張ってほしい」
→ 目標設定の具体性がなければ、“頑張り”の基準が見えません。
社員の頭の中には「じゃあ今の努力は何だったの?」という疑問だけが残ります。
公平理論の観点から見れば、これらの言葉は「自分の努力が正しく扱われていない」と感じさせる“火種”なのです。
第4章 納得感を高める“説明の順序”がある
評価面談では、“結果”を伝える前に“プロセス”を共有することが大切です。
順序としては、
1️⃣「どんな基準で評価したか」
2️⃣「本人の努力をどう見ていたか」
3️⃣「結果としてどう判断したか」
この流れが鉄則です。
多くの上司は「結果」から話してしまう。
すると、社員は「もう決まっている話だ」と感じ、聞く耳を閉ざしてしまいます。
逆に、プロセスから説明する上司には“誠実さ”が伝わる。
社員が納得するのは、「評価が高いから」ではなく、「ちゃんと見てもらえていた」と感じた瞬間なのです。
第5章 公平理論が崩れると職場で何が起きるのか
公平理論が崩れると、最初に壊れるのは“信頼”です。
上司への不信感は、やがて職場全体の空気を濁らせます。
「どうせ頑張ってもムダ」
「上の人は自分たちを見ていない」
そんな諦めムードが広がると、優秀な人から先に離れていく。
残るのは“指示待ち”と“不満分子”です。
評価制度そのものが悪いのではありません。
“公平感”が保てていない面談の積み重ねが、職場の空気を腐らせるのです。
第6章 制度より“対話力”を整える時代へ
制度をつくることより、制度を“伝える力”が問われる時代です。
公平理論は、単なる理屈ではなく「人を納得させるためのコミュニケーション法」でもあります。
評価者がこの理論を理解していれば、
・どんな言葉が不公平感を招くか
・どんな説明順が信頼を生むか
を意識しながら面談ができる。
どんなに優れた評価制度も、“対話力の弱い管理職”が運用すれば、たちまち逆効果です。
第7章 “公平”を伝える力を鍛えよう──杉山事務所の支援メニュー
評価面談は、制度運用のゴールではなく「信頼構築のチャンス」です。
杉山事務所では、公平理論をベースにした評価者研修・面談力トレーニングを実施しています。
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評価の伝え方で社員のモチベーションが変わる
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面談の順序で信頼関係が築ける
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公平感の共有で離職を防げる
制度はできている。
あとは、現場が“使いこなせるか”です。
「うちの管理職にもう少し“伝える力”をつけたい」
そう感じた経営者の方は、どうぞご相談ください。
制度を生かすのは“人”です。
その力を育てることが、企業の未来を変える第一歩になります。