休日研修に参加させたら給料はいくら必要?振替休日・代休・割増賃金の正しい扱い
杉山 晃浩
「今度の土曜日に、全社員参加の研修を行います」
「研修なので、休日出勤手当は必要ありませんよね?」
社内研修を休日に開催する会社は少なくありません。
平日は通常業務が忙しく、全社員を集める時間が取れない。そこで、比較的予定を合わせやすい土曜日や日曜日に、研修や勉強会を開催するわけです。
会社としては、社員の成長のために時間と費用を使っています。
それにもかかわらず、
「休日に出てもらったうえに、割増賃金まで払わなければならないのか」
と疑問に感じる経営者もいるでしょう。
しかし、研修という名前であっても、会社が参加を命じているなら、その時間は原則として労働時間です。
開催日が休日であれば、通常の賃金だけでなく、休日割増や時間外割増が必要になることもあります。
また、「振替休日を与えた」「後日、代休を取らせた」というだけで、すべての割増賃金が不要になるわけではありません。
今回は、休日に社内研修を実施する場合の賃金、振替休日と代休の違い、割増賃金の計算方法について、中小企業の経営者や人事担当者向けにわかりやすく解説します。
研修でも参加必須なら労働時間
最初に確認すべきことは、その研修時間が労働時間に当たるかどうかです。
労働時間とは、簡単に言えば、社員が会社の指揮命令を受けている時間です。
研修中に商品を作ったり、接客をしたりしていなくても、会社が業務として参加させているなら、原則として労働時間になります。
例えば、次のような研修です。
- 会社が全社員へ参加を命じている
- 対象者を指定して参加させている
- 欠席には上司の許可が必要
- 欠席者へ後日の再受講を命じる
- 研修後にテストやレポートを提出させる
- 受講しなければ担当業務ができない
- 不参加を人事評価へ反映する
- 参加時間を会社が指定している
このような研修は、名称が「勉強会」「自己啓発」「スキルアップ講座」であっても、労働時間と判断される可能性が高くなります。
一方で、本当に自由参加であり、参加しなくても不利益がなく、社員が自由に断れる研修であれば、労働時間に当たらないこともあります。
大切なのは、会社が付けた名前ではなく、実際に参加を義務付けていたかどうかです。
「会社の休日」と「法定休日」は同じではない
休日研修の賃金を計算するためには、その休日が「法定休日」なのか「法定外休日」なのかを確認する必要があります。
労働基準法では、会社は社員に対して、少なくとも毎週1日、または4週間で4日以上の休日を与えなければならないと定めています。
この法律上必要な休日が「法定休日」です。
法定休日以外に会社が定めている休日は「法定外休日」です。
例えば、土曜日と日曜日が休みの会社でも、法律上は両方が法定休日になるわけではありません。
就業規則で日曜日を法定休日と定めている場合は、一般的に次のように整理します。
- 日曜日は法定休日
- 土曜日は法定外休日
どちらも会社では「休日」と呼ばれていますが、研修を実施したときの割増賃金は同じではありません。
法定休日に労働させた場合は、原則として35%以上の休日割増が必要です。
法定外休日に労働させた場合は、直ちに35%以上の休日割増が必要になるわけではありません。
ただし、その研修時間を含めて1日8時間または週40時間を超えれば、原則として25%以上の時間外割増が必要になります。
休日研修の給与を計算するときは、まず自社の法定休日が何曜日なのかを確認してください。
法定休日に研修をしたら35%以上の割増
会社が参加を命じる研修を法定休日に行った場合、その時間は法定休日労働になります。
この場合、原則として1時間当たりの賃金単価に35%以上を上乗せした賃金が必要です。
例えば、1時間当たりの賃金単価が1,500円の社員を、法定休日の研修へ4時間参加させたとします。
基本的な計算は、次のようになります。
1,500円×4時間×1.35=8,100円
通常賃金部分が6,000円、35%の休日割増部分が2,100円です。
ただし、月給制の場合に通常賃金部分をどのように追加するかは、給与体系や月給に含まれる範囲によって確認が必要です。
給与明細上で、
- 通常賃金部分
- 休日割増部分
- 固定残業代との関係
- 就業規則で定めた上乗せ手当
を整理して計算する必要があります。
「月給を払っているから、35%分だけ払えばよい」
と一律に判断しないよう注意してください。
法定外休日なら35%増しとは限らない
次に、土曜日などの法定外休日に研修を実施した場合です。
法定外休日に働かせても、法律上の休日労働にはならないため、直ちに35%以上の休日割増が必要になるわけではありません。
ただし、研修時間を含めて1日8時間または週40時間を超えた部分については、原則として25%以上の時間外割増が必要です。
例えば、月曜日から金曜日まで毎日8時間働いた社員が、土曜日に4時間の研修へ参加したとします。
月曜日から金曜日までで、すでに週40時間働いています。
そのため、土曜日の研修4時間は週40時間を超える時間となり、原則として25%以上の時間外割増が必要です。
1時間当たりの賃金単価が1,500円であれば、基本的な計算は次のようになります。
1,500円×4時間×1.25=7,500円
通常賃金部分が6,000円、25%の時間外割増部分が1,500円です。
一方、平日に休日があり、その週の合計労働時間が40時間以内で、1日8時間も超えていない場合は、法律上の時間外割増が発生しないこともあります。
ただし、就業規則や賃金規程で、
「会社の休日に勤務した場合は35%の休日手当を支払う」
など、法律を上回る取り決めをしている会社では、その規程に従う必要があります。
法律上の最低基準だけでなく、自社の就業規則も確認してください。
振替休日なら休日割増は不要になることがある
振替休日とは、あらかじめ休日と労働日を入れ替えることです。
例えば、日曜日に研修を行う代わりに、事前に水曜日を休日として指定します。
正しく振り替えられていれば、日曜日は労働日となり、水曜日が休日になります。
そのため、もともと法定休日だった日曜日に研修を実施しても、法律上の休日労働にはならず、35%以上の休日割増は原則として発生しません。
ただし、会社が口頭で、
「日曜日に研修をするから、後で都合のよい日に休んでください」
と伝えただけでは、適切な振替休日にならない可能性があります。
振替休日として処理するには、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 就業規則に休日振替の根拠がある
- 研修を行う前に休日を振り替えている
- 振替先の休日を具体的に決めている
- 社員へ事前に通知している
- 毎週1日または4週間で4日以上の休日を確保している
つまり、
「日曜日は研修ですが、振替休日は後で決めます」
では不十分です。
「9月6日の日曜日を労働日とし、9月9日の水曜日を休日とする」
というように、研修前に働く日と休ませる日を具体的に入れ替えておく必要があります。
振替休日でも25%の時間外割増が必要になることがある
適切に休日を振り替えれば、必ず割増賃金がゼロになるわけではありません。
特に注意したいのが、振替日が別の週になる場合です。
例えば、月曜日から金曜日まで毎日8時間働き、日曜日に8時間の研修を行ったとします。
代わりの休日を翌週の水曜日に振り替えると、日曜日を含む週の労働時間は48時間になる可能性があります。
日曜日と水曜日を事前に正しく振り替えていれば、日曜日の研修は法定休日労働になりません。
しかし、その週は40時間を8時間超えています。
そのため、週40時間を超えた8時間について、25%以上の時間外割増が必要になる可能性があります。
「振替休日にしたから、割増賃金は一切不要」
という理解は危険です。
可能であれば、同じ週の中で休日を振り替えると、週40時間を超えるリスクを抑えやすくなります。
ただし、変形労働時間制を採用している会社では計算方法が異なる場合があります。勤務制度を確認したうえで判断してください。
代休を与えても休日割増は消えない
振替休日と混同されやすいのが代休です。
代休とは、休日に働かせた後で、その代わりとして別の労働日を休みにすることです。
例えば、法定休日の日曜日に研修を行い、研修が終わった後で、
「日曜日に出てもらったから、次の水曜日を休みにします」
と決めた場合です。
これは事前の振替ではなく、事後の代休です。
水曜日を休みにしても、日曜日に法定休日労働をさせた事実は消えません。
したがって、日曜日の研修時間については、原則として35%以上の休日割増が必要です。
会社が、
「別の日に休ませたのだから、休日手当は必要ない」
と考えていると、休日割増の未払いが発生します。
また、代休を有給扱いにするか無給扱いにするかは、就業規則や賃金規程、これまでの会社の取り扱いなどによって変わります。
次の2つは、分けて考えてください。
- 法定休日に研修を実施したことに対する休日割増
- 後日与える代休日の賃金をどう扱うか
代休は、休日労働の割増賃金を消す制度ではありません。
22時以降の研修には深夜割増も必要
研修が夜遅くまで続く場合は、深夜割増にも注意が必要です。
22時から翌朝5時までの時間帯に労働させた場合、原則として25%以上の深夜割増が必要です。
例えば、法定休日の研修が21時から23時まで行われた場合、22時から23時までの1時間は、
- 法定休日割増35%以上
- 深夜割増25%以上
の両方が問題になります。
この場合、その1時間については、合計60%以上の割増となります。
1時間当たりの賃金単価が1,500円であれば、通常賃金部分を含めた基本的な金額は次のようになります。
1,500円×1時間×1.60=2,400円
研修後の懇親会が長引き、22時を過ぎるケースもあります。
ただし、懇親会の時間が労働時間になるかどうかは、参加が強制されているか、業務上の役割があるかなど、実際の状況によって判断が変わります。
研修と懇親会を分けて考えることも必要です。
休日研修には36協定も関係する
法定時間外労働や法定休日労働をさせるためには、原則として36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
研修であっても、労働時間に該当するなら通常の仕事と同じです。
「売上を生まない研修だから36協定は関係ない」
とはなりません。
休日研修を実施する前に、次の点を確認してください。
- 36協定を締結しているか
- 労働基準監督署へ届け出ているか
- 協定の有効期間が切れていないか
- 休日労働をさせることが協定に含まれているか
- 研修時間を含めて時間外労働の上限を超えないか
- 研修の開始時刻と終了時刻を記録しているか
割増賃金を支払えば、何時間でも休日研修を実施できるわけではありません。
36協定、時間外労働の上限、社員の健康管理まで含めて考える必要があります。
研修時間を勤怠へ記録していない会社は要注意
休日研修を行う会社では、研修の開始時刻と終了時刻を正確に記録してください。
「9時頃から12時頃まで」
「研修は半日」
といった曖昧な記録では、正しい給与計算ができません。
また、研修終了後にレポートを作成させる場合は、その作成時間も労働時間になる可能性があります。
例えば、研修自体が3時間でも、その後30分かけて報告書を作成しているなら、合計3時間30分として管理する必要があります。
確認すべき時間には、次のようなものがあります。
- 研修の開始・終了時刻
- 研修前に義務付けた準備時間
- 確認テストの時間
- レポートや感想文の作成時間
- 会社が参加を義務付けた移動や待機時間
- eラーニングの実際の受講時間
固定残業代を支払っている会社でも、実際の労働時間の把握は必要です。
研修時間を勤怠へ記録しないまま「固定残業代に含まれている」と処理することは避けてください。
無料の「休日研修 賃金・割増率判定シート」をご用意しました
休日研修の賃金計算では、
- 法定休日か法定外休日か
- 振替休日か代休か
- 1日8時間を超えるか
- 週40時間を超えるか
- 深夜時間があるか
- 通常賃金部分を別途追加するか
を分けて確認しなければなりません。
そこで今回、必要事項を入力すると、適用される割増率と追加賃金の目安を自動計算できるExcel形式の、
をご用意しました。
シートへ次の内容を入力します。
- 参加が業務上必須か
- 法定休日か法定外休日か
- 研修時間数
- 事前に振替休日を特定・通知したか
- 後日、代休を与える予定か
- 深夜時間数
- 1時間当たりの賃金単価
- その日の研修前の労働時間
- 研修前までの週労働時間
- 週の法定労働時間
- 通常賃金部分を別途追加するか
- 36協定を確認したか
入力内容に応じて、次の金額を自動計算します。
- 通常賃金部分
- 法定休日割増額
- 時間外割増額
- 深夜割増額
- 給与へ追加する金額の目安
法定休日・法定外休日・振替休日・代休ごとの割増率も、一覧表で確認できます。
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※メールが届かない場合は、迷惑メールフォルダもご確認ください。
社員を育てる研修だからこそ、正しく支払う
休日研修は、社員を成長させ、会社の将来をつくるための大切な取り組みです。
しかし、社員の成長を理由に、休日や時間外の研修を無給にしてよいわけではありません。
社員から見れば、休日は家族と過ごしたり、体を休めたりする大切な時間です。
会社の指示でその時間を研修へ使ってもらうなら、会社は労働時間を正しく記録し、必要な賃金を支払う責任があります。
休日研修を計画するときは、次の順番で確認してください。
- 研修は参加必須か、本当に自由参加か
- 研修日は法定休日か法定外休日か
- 事前に休日を振り替えるのか
- 研修後に代休を与えるのか
- 1日・1週間の労働時間は何時間になるか
- 深夜時間が含まれるか
- 36協定と給与計算に問題がないか
「研修だから賃金は不要」
「代休を与えたから割増賃金は不要」
「振替休日にしたから残業代は不要」
という思い込みは、未払い賃金につながります。
社員の成長を大切にする会社だからこそ、社員が提供した時間にも正当な価値を認める必要があります。
休日研修を実施する前に、自社の休日区分、就業規則、36協定、勤怠管理、給与計算を一度確認してみてください。
【参考資料】