社外監査役とは?どんな法人に監査役・監事が必要なのか経営者向けにわかりやすく解説
杉山 晃浩
「うちの会社には、監査役を置かなければならないのでしょうか」
「登記簿に監査役の名前は載っていますが、何をしてもらえばよいのでしょうか」
「税理士に決算を見てもらっているので、監査役はいなくても大丈夫ですよね」
中小企業の経営者から、このような質問を受けることがあります。
監査役という言葉は知っていても、取締役や税理士と何が違うのか、どのような会社に必要なのかを説明できる人は、意外に多くありません。
親族や知人に頼んで、監査役として登記だけしている会社もあります。
しかし、監査役は単なる名誉職ではありません。
会社の外から経営に加わる社外監査役であっても、監査役としての権限と責任を負います。
また、株式会社では「監査役」と呼びますが、医療法人、社会福祉法人、一般社団法人などでは「監事」と呼ばれます。
呼び方が違うだけでなく、設置義務、人数、資格、兼任、親族関係などのルールも法人ごとに異なります。
今回は、監査役と社外監査役の役割、どのような法人に監査役・監事が必要なのかを、できるだけ専門用語を使わずに説明します。
監査役は、税理士の代わりではない
監査役とは、簡単にいえば、取締役が会社を適切に経営しているかを確認する役員です。
株式会社の監査役は、取締役の仕事の進め方を監査します。
会社のお金が適切に使われているか、法令や定款に反する経営判断が行われていないか、会社に大きな損害を与える行為がないかなどを確認します。
必要に応じて取締役や従業員へ報告を求めたり、会社の業務や財産の状況を調査したりします。
取締役会がある会社では、原則として取締役会にも出席し、必要があれば意見を述べます。
ここで間違えやすいのが、税理士や会計監査人との違いです。
税理士は、税務申告や税務相談などを行う専門家です。
会計監査人は、公認会計士または監査法人として、会社の計算書類などが適正かを監査します。
一方、監査役は会社の役員です。
会計面だけでなく、取締役の仕事の進め方そのものを監査することが基本です。
「税理士が決算書を見ているから、監査役は何もしなくてもよい」ということにはなりません。
ただし、非公開会社では、定款によって監査役の監査範囲を会計に限定している場合があります。
自社の監査役が会計だけを見るのか、取締役の業務全体を見るのかは、会社の定款を確認しなければ分かりません。
社外監査役とは、会社と一定の距離がある監査役
社外監査役は、監査役のうち、その会社や子会社の取締役、従業員などとして業務を動かしてきた人とは一定の距離があり、社外の立場から監査を行う人です。
ただし、会社の外にいる人を選べば、誰でも法律上の社外監査役になれるわけではありません。
現在の関係だけでなく、過去にその会社や子会社の取締役・従業員などでなかったか、親会社や兄弟会社との関係、配偶者や近い親族の関係なども確認する必要があります。
「会社から給与をもらっていないから社外」
「社長と血縁関係がないから社外」
という単純な判定ではありません。
社外監査役を選任するときには、本人の職歴、会社との取引関係、親族関係などを確認し、会社法上の要件を満たすか専門家へ相談することが必要です。
監査役と社外取締役は何が違うのか
社外取締役と社外監査役は、どちらも会社の外から経営に関わりますが、基本的な役割が違います。
社外取締役は、取締役会の一員として経営判断に参加します。
新規事業を始めるか、設備投資を行うか、役員をどう選ぶかなどについて意見を述べ、決議に加わります。
一方、社外監査役は、経営判断をする取締役の仕事を監査する立場です。
取締役と一緒に決定する人というより、その決定過程や仕事の進め方に問題がないかを確認する人です。
簡単に整理すると、次のようになります。
- 社外取締役は、社外の視点を持って経営判断に参加する
- 社外監査役は、社外の視点から取締役の仕事を監査する
もっとも、社外監査役は「間違い探し」だけをする人ではありません。
問題が大きくなる前に質問や意見を伝え、健全な会社経営を支えることも大切な役割です。
すべての株式会社に監査役が必要なわけではない
「株式会社なら、必ず監査役が必要」と思われることがありますが、これは正確ではありません。
現在の会社法では、取締役一人だけの株式会社を作ることもできます。小規模な株式会社で取締役会を置いていない場合、監査役を置かない機関設計も可能です。
一方、次のような株式会社では、原則として監査役が必要になります。
取締役会を置いている株式会社
取締役会設置会社は、原則として監査役を置かなければなりません。
ただし、公開会社ではない株式会社が会計参与を置いている場合など、例外があります。
また、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、監査役を置きません。それぞれの委員会が監査機能を担うからです。
そのため、取締役が複数いるかどうかだけでは判断できません。
登記事項証明書や定款を見て、「取締役会設置会社」となっているかを確認する必要があります。
会計監査人を置いている株式会社
会計監査人設置会社も、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社を除き、原則として監査役が必要です。
なお、会計監査人とは顧問税理士のことではありません。
公認会計士または監査法人が、会社法に基づいて計算書類などを監査する機関です。
会社法上の「大会社」
会社法上の大会社とは、原則として、資本金が5億円以上、または負債の合計額が200億円以上の株式会社です。
公開会社である大会社では、一定の委員会型の会社を除き、監査役会と会計監査人を置く必要があります。
公開会社ではない大会社でも、会計監査人が必要になります。
会社が成長し、増資や借入れによって基準を超えた場合、必要な機関が変わる可能性があります。以前作った定款や登記のままでよいとは限りません。
「公開会社」は上場企業という意味ではない
経営者が最も間違えやすい言葉の一つが「公開会社」です。
一般的な会話では、公開会社と聞くと、株式市場に上場している会社を想像します。
しかし、会社法上の公開会社は、上場会社と同じ意味ではありません。
簡単にいうと、発行するすべての株式について、譲渡するときに会社の承認を必要とする制限を設けているかどうかがポイントです。
すべての株式に譲渡制限がある会社は、一般に「非公開会社」と呼ばれます。
一部でも譲渡制限のない株式があれば、会社法上の公開会社に該当します。
上場していない中小企業でも公開会社に該当する可能性がありますし、上場していないから確認不要ということではありません。
自社が公開会社か分からない場合は、定款の「株式の譲渡制限」に関する条文を確認してください。
監査役会を置く会社では、社外監査役が必要になる
監査役会を設置する会社では、監査役は3人以上必要です。
さらに、その過半数は社外監査役でなければなりません。
3人の監査役を置く場合、少なくとも2人は社外監査役にする必要があります。また、常勤の監査役も選ばなければなりません。
監査役会を置かない一般的な中小企業では、監査役を必ず社外の人にしなければならないとは限りません。
ただし、法律上の義務がないことと、社外の人を選ぶ意味がないことは別です。
社長の親族や長年の部下が監査役になっている場合、取締役へ厳しい意見を伝えにくいことがあります。
会社の外で経営や労務、会計、法務などの経験を持つ人を選ぶことで、監査の独立性や実効性を高められる可能性があります。
株式会社以外では「監事」が必要になることがある
監査する役員が必要なのは株式会社だけではありません。
法人の種類によっては、「監査役」ではなく「監事」という名称が使われます。
一般社団法人
理事会を置く一般社団法人と、会計監査人を置く一般社団法人は、監事を置かなければなりません。
理事会を置かない一般社団法人については、機関設計によって監事を置かない形も考えられます。
一般社団法人だから必ず監事が必要、または不要と決めつけず、定款と登記事項証明書を確認する必要があります。
一般財団法人
一般財団法人では、その機関設計上、評議員、評議員会、理事、理事会、監事などを置きます。
一般社団法人とは設置ルールが異なるため、同じように考えてはいけません。
医療法人
医療法人には、原則として理事3人以上と監事1人以上を置く必要があります。都道府県知事の認可によって、理事の人数に例外が認められる場合がありますが、監事は医療法人の運営を監査する重要な役員です。
医療法人の監事については、医療法だけでなく、定款や寄附行為、所轄都道府県の取扱いも確認する必要があります。厚生労働省「医療法人の機関について」
社会福祉法人
社会福祉法人にも監事が必要です。
監事は理事の職務執行を監査し、必要な調査や報告を行います。
理事、評議員、監事などの兼務や親族・特殊関係者に関する制限もあるため、単に理事長の知り合いを選べばよいわけではありません。厚生労働省「社会福祉法人の経営組織」
NPO法人
NPO法人は、理事3人以上と監事1人以上を置くことが基本です。
監事は理事や職員を兼ねることができません。所轄庁が公開している手引きと定款を確認し、適切な手続で選任する必要があります。
このように、「法人だから監査役が必要か」という質問だけでは答えられません。
最初に法人の種類を確認し、その法人に適用される法律と定款を見る必要があります。
名前だけの監査役では会社を守れない
法律上必要だからという理由で、親族や知人に監査役への就任を頼み、毎年の決算書へ印鑑を押してもらうだけになっていないでしょうか。
監査役が取締役会の資料を受け取っていない。
会社でどのようなトラブルが起きているか知らない。
勤怠や賃金の問題を確認したことがない。
監査報告の内容を本人が理解していない。
このような状態では、監査役を登記していても、監査が機能しているとはいえません。
監査役には、会社の状況を知るための情報が必要です。
取締役会資料、決算関係書類だけでなく、重大な苦情、労務問題、事故、内部通報、行政機関からの指摘なども、適切に共有しなければなりません。
監査役本人にも、必要な質問をし、問題があれば意見を述べる姿勢が求められます。
社長に何でも賛成する人ではなく、会社を守るために必要な異論を言える人を選ぶことが重要です。
社外監査役には、会計以外の視点も必要になる
会社の経営リスクは、決算書だけに現れるとは限りません。
未払い残業、ハラスメント、労災事故、情報漏えい、許認可違反、採用時の説明不足などが、後から大きな損失になることがあります。
特に、人の問題は表面化するまで見えにくく、発覚したときには退職者や休職者が増えていることもあります。
そのため、社外監査役の候補者には、会計や税務の専門家だけでなく、法務、人事労務、業界実務などに詳しい人も考えられます。
ただし、一人の監査役がすべての分野に詳しい必要はありません。
分からない問題を抱え込まず、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、社会保険労務士などと連携できることが大切です。
会社の規模や課題に合った専門性を組み合わせ、監査体制全体で会社を見る発想が必要です。
まずは自社の定款と登記を確認してください
監査役や監事が必要かを確認するときは、少なくとも次の資料を準備しましょう。
- 最新の定款
- 登記事項証明書
- 株主名簿
- 直近の貸借対照表
- 現在の役員名簿
- 法人設立時や役員変更時の議事録
古い定款しか見つからない場合や、定款と登記の内容が違っている場合は、早めに専門家へ相談してください。
そこで今回、オフィススギヤマグループでは、読者プレゼントとして、
をご用意しました。
法人の種類を選び、株式会社の場合は取締役会、公開・非公開、大会社、会計参与、会計監査人、現在の機関設計などを入力すると、確認すべきポイントが表示されます。
さらに、監査役・監事を「名前だけ」にしないための8項目診断も付けています。
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この診断シートだけで法的な結論を出すことはできません。
しかし、自社が何を確認すべきかを整理し、専門家へ相談するための準備としてご活用いただけます。
監査役や監事は、登記簿の役員欄を埋めるための存在ではありません。
会社の中では言いにくい問題を早く見つけ、経営者に必要な意見を伝え、会社を健全に成長させるための重要な役員です。
「必要だから置く」だけで終わらせず、「会社を守るために、どう機能してもらうか」まで考えてみてください。