人本経営を定着させる面談には 「やってはいけない型」がある
杉山 晃浩
第1章|面談を頑張っている会社ほど、人本経営が止まる理由
人本経営に取り組もうとする企業の多くが、
「まずは面談から始めよう」と考えます。
1on1を導入し、
定期面談の時間を確保し、
忙しい中でも社員と向き合おうとしている。
この姿勢自体は、間違いなく評価されるべきものです。
実際、「人を大切にしたい」という思いがなければ、面談は続きません。
しかし現場を見ていると、
面談を真面目にやっている会社ほど、人本経営が止まってしまう
という逆説的な状況が起きています。
問題は、面談の回数でも、熱量でもありません。
問題は、無意識のうちに出来上がっている
「やってはいけない面談の型」です。
第2章|やってはいけない型① 面談が「評価の延長」になっている
最も多く見られるのが、このパターンです。
面談のつもりが、
いつの間にか評価や指導の話になっている。
・ここはもっと頑張ってほしい
・この点は改善が必要だ
・評価としてはこう見ている
社長や上司に悪気はありません。
「成長してほしい」「会社を良くしたい」という思いから出た言葉です。
しかし、評価が混ざった瞬間、
社員はこう感じます。
「本音を言うと不利になる」
「正解を言った方がいい」
その結果、面談は
“答え合わせの場”になります。
これでは、人本経営に必要な
「状態把握」や「違和感の早期発見」はできません。
第3章|やってはいけない型② 社長・上司がその場で「答え」を出してしまう
次に多いのが、
面談中に社長や上司が、すぐに結論を出してしまう型です。
・それならこうしよう
・じゃあ次からはこうして
・今回は特例で対応するよ
一見、とても良い上司の対応に見えます。
社員も、その場では「助かりました」と言うかもしれません。
しかし、ここにも落とし穴があります。
その場で答えが出ると、
社員は「これ以上話す必要はない」と感じます。
また、
「軽い話しかしてはいけない」
「重い話は迷惑になる」
という学習も進みます。
人本経営における面談は、
答えを出す場ではありません。
経営判断に必要な材料を集める場です。
第4章|やってはいけない型③ 面談が「ガス抜き」で終わっている
「とりあえず話を聞いている」
「社員の気持ちは受け止めている」
このタイプの面談もよく見られます。
社員は話してスッキリする。
社長も「ちゃんと向き合った」と感じる。
しかし、その後、
経営として何も変わらない。
この状態が続くと、社員は気づきます。
「話しても、結局何も変わらない」
「聞いてもらえるけど、それだけだ」
こうして面談は、
単なるガス抜きになります。
人本経営における面談は、
聞くことがゴールではありません。
経営判断に反映されることが、初めて意味を持ちます。
第5章|やってはいけない型④ 面談の目的が、社内で共有されていない
同じ面談でも、
立場によって捉え方が違うケースがあります。
・社長は「把握のため」
・上司は「指導のため」
・社員は「評価のため」
目的がバラバラなまま行われる面談は、
心理的安全性を確実に下げます。
社員は常に
「この話はしていいのか?」
「どこまで言っていいのか?」
を探りながら話すことになります。
これでは、本音は出てきません。
面談は、
目的が共有されて初めて機能する仕組みです。
第6章|なぜ「やってはいけない型」は、善意から生まれるのか
ここまで挙げた「やってはいけない型」は、
決して悪意から生まれているわけではありません。
むしろ逆です。
・早く解決したい
・社員を不安にさせたくない
・良い社長でありたい
こうした善意があるからこそ、
評価を混ぜ、
すぐ答えを出し、
その場を丸く収めようとします。
しかし、人本経営は
短期的な善意より、長期的な構造を重視します。
「良かれと思って」の判断が、
結果として人本経営を止めてしまう。
これが、面談の難しさです。
第7章|人本経営が定着する面談は、ここが決定的に違う
人本経営が定着している会社の面談には、共通点があります。
・評価と完全に切り離されている
・その場で結論を出さない
・内容が経営判断に必ず反映される
・社員が「話す意味」を実感している
面談は、
コミュニケーションの場ではなく、経営装置として扱われています。
だからこそ、
社員は安心して話し、
経営は早い段階で手を打てるのです。
第8章|社長一人で「正しい面談の型」を守り続けるのは難しい
正直なところ、
社長一人で面談の型を守り続けるのは簡単ではありません。
・忙しさで省略される
・つい答えを出してしまう
・感覚に頼った判断に戻る
これは能力の問題ではなく、構造の問題です。
面談は、
設計し、点検し、修正する必要がある経営インフラです。
終章|「やってはいけない型」を外すだけで、人本経営は動き出す
人本経営を定着させるために、
新しい制度を入れる必要はありません。
面談の回数を増やす必要もありません。
話し方のスキルを磨く必要もありません。
まずやるべきは、
「やってはいけない型」をやめることです。
・評価を混ぜない
・すぐ答えを出さない
・ガス抜きで終わらせない
・目的を共有する
この型を外すだけで、
面談は人本経営を支える力を持ち始めます。
人本経営は、
面談という日常の中で定着します。