なぜアスパラだけが育ったのか? 事務所農園で見えた「健康経営のヒント」
杉山 晃浩
第1章|「今年はなぜか育たない」事務所農園の違和感
当事務所では、健康経営の一環として無農薬の事務所農園に取り組んでいます。
スタッフと一緒に土を耕し、野菜を育て、収穫したものを私が調理してふるまう。そんな取り組みを続けてきました。
ところが今年は様子が違いました。
カリフラワー、春菊、スナップエンドウなど、どれも思うように育ちません。
「寒さの影響ですかね…」
「土が疲れているのかもしれませんね」
そんな会話が自然と出てきます。
一方で、昨年植えたアスパラガスだけは、驚くほどしっかりとした茎を出してくれました。
なぜか一つだけ“うまくいっている”。
この違和感が、今回の気づきの出発点でした。
第2章|昨年の成功体験が通用しなかった理由
思い返せば、一昨年の事務所農園は非常に順調でした。
トマトも唐辛子もよく育ち、なんと12月まで収穫が続きました。
しかし昨年は一転、トマトがほとんど育たないという結果に。
原因の一つとして考えられるのが「連作障害」です。
同じ場所で同じ作物を育て続けると、土壌の栄養バランスが崩れ、病害も発生しやすくなります。
つまり、「うまくいったやり方をそのまま続ける」ことが、逆に失敗の原因になることもあるのです。
これは経営にも通じる話です。
過去にうまくいった採用方法、評価制度、教育のやり方。
それらが今も通用するとは限りません。
むしろ、成功体験に縛られることで変化に対応できなくなる。
その危うさを、農園は教えてくれました。
第3章|なぜアスパラガスだけは育ったのか?
では、なぜアスパラガスだけは順調に育ったのでしょうか。
実は、昨年のアスパラガスはほとんど収穫できませんでした。
細く、食べるには少し物足りない状態だったのです。
しかし今年は違います。
太く、しっかりとした芽が出てきました。
アスパラガスは多年草であり、土の中で根をしっかりと育てることで、翌年以降に本領を発揮します。
つまり、昨年は「育っていなかった」のではなく、
「見えないところで準備をしていた」ということです。
この“時間差”こそが重要です。
すぐに結果が出ないものに、どれだけ投資できるか。
これが成果の分かれ道になります。
第4章|健康経営も“土づくり”で決まる
健康経営というと、福利厚生の充実や制度導入をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、農園を通じて感じたのは、
本質は「土づくり」にあるということです。
どんなに良い種を植えても、
どんなに高価な肥料を使っても、
土壌が整っていなければ育ちません。
企業も同じです。
・信頼関係がない
・コミュニケーションが不足している
・ルールが形だけになっている
この状態で制度だけ導入しても、定着しません。
就業規則や人事制度も、本来は“土壌設計”です。
そこを整えずに施策だけ打っても、効果は限定的です。
第5章|「育たない理由」を外部要因にしていないか?
野菜が育たないとき、私たちはこう考えがちです。
「寒かったから」
「天候が悪かったから」
もちろん、それも事実です。
しかし、それだけで終わらせてしまうと、次につながりません。
経営でも同じです。
「人が来ないのは景気のせい」
「若手が育たないのは世代の問題」
こうした外部要因に原因を求めるだけでは、何も変わりません。
重要なのは、
「自分たちがコントロールできる部分は何か」を考えることです。
第6章|事務所農園が生み出した“見えない価値”
この取り組みで得られたのは、野菜だけではありません。
スタッフ同士の会話が増え、
「次は何を植えようか」
「どうすればうまくいくか」
といった前向きな議論が自然に生まれます。
収穫した野菜を一緒に食べることで、
共通体験も増えていきます。
これは制度では生み出せない価値です。
心理的安全性やチームの一体感は、
こうした日常の積み重ねから生まれるものだと実感しています。
第7章|来年に向けた“土壌改良”という意思決定
現在、スタッフとは「来年はアスパラガスを増やそう」という話をしています。
そして同時に、土壌改良にも取り組む予定です。
短期的な収穫ではなく、
中長期での成長を見据えた投資です。
これは健康経営も同じです。
一度制度を導入して終わりではなく、
継続的に改善し、育てていくものです。
第8章|健康経営は「始めること」より「育てること」
多くの企業が、健康経営に「取り組むこと」自体をゴールにしてしまいます。
しかし本当に重要なのは、
それを「育て続けること」です。
アスパラガスも、1年目は成果が見えません。
それでも手をかけ続けた結果、2年目に価値が現れます。
健康経営も同じです。
目に見えない部分にどれだけ向き合えるか。
それが企業の未来を左右します。
第9章|まとめ|アスパラガスが教えてくれた経営の本質
今回の事務所農園から、いくつかの学びを得ました。
・成果はすぐには出ない
・見えない部分がすべてを決める
・成功体験は再現されないこともある
・継続が価値を生む
そして何より重要なのは、
健康経営は“やるかどうか”ではなく、
“育てられるかどうか”で決まる
ということです。
もし、これから健康経営に取り組もうと考えているのであれば、
まずは「土づくり」から始めてみてください。
きっと、数年後に大きな違いとなって現れるはずです。