2026年6月分 人事労務クイズ~カスハラ対策と従業員保護~
問題 ∼ カスハラ対策と従業員保護 ∼
カスタマーハラスメント(不当な顧客対応)への対策として、企業に最も求められる取り組みはどれでしょうか?
答え
【A】 顧客の機嫌が直るまで、現場に謝罪し続けさせる
【B】 従業員の安全とメンタルを守るための社内体制を整備する
【C】 顧客から受託しているクレームや要求はすべて無条件に受け入れる
【B】 従業員の安全とメンタルを守るための社内体制を整備する
【なぜ今、カスハラ対策が必要なのか?】
カスタマーハラスメントは、単なる「顧客不満の延長」ではなく、従業員の心身を脅かす「重大な労務リスク」です。
対策を怠り現場を孤立させて従業員がメンタル不調に陥った場合、会社は「安全配慮義務違反」として法的責任を問われます。
実際、取引先とのトラブル対応で上司や会社が十分なサポートをせず現場を孤立させたとして、精神疾患を発症した従業員から会社へ損害賠償を求める訴訟が提起された事例もあります。
「現場を一人にしない体制づくり」は、今や企業の義務です。
1. カスタマーハラスメント(カスハラ)の判断基準
クレームとカスハラの境界線は、以下の2つの要素で判断します。
・要求内容の妥当性: 商品の欠陥に対する返金など、正当な要求か。あるいは「担当者の解雇」や「法外な慰謝料」など、不当・過度な要求か。
・手段・態様の相当性: 暴言、威嚇、長時間の拘束、土下座の強要など、社会通念上許容される範囲を超えた言動(手段)が行われているか。
※過去には、配達の遅延に腹を立てて土下座を強要し、その動画を撮影した顧客が「強要罪」で逮捕され、懲役刑(有罪判決)となった刑事事件も発生しています。
2. 企業に義務付けられる「体制整備」と実務ステップ
厚生労働省の指針に基づき、企業は以下の体制を整える必要があります。
・方針の明確化: カスハラに対する企業の断固たる姿勢を就業規則や方針書に明文化し、従業員へ周知します。
・相談窓口の設置: 被害に遭った従業員がためらわずに報告・相談できるルートを整備します。
・対応マニュアルの作成: 初期対応の進め方、一人で抱え込ませない「複数人対応」への切り替えルールなどを事前に決定しておきます。
3. 実務における「3つの現場対応ルール」
・チーム対応への速やかな移行: 現場の担当者一人に対応を任せきりにせず、管理職やチームが速やかに介入します。
・客観的な記録化: トラブルを未然に防ぎ、後に証拠とするため、通話の録音、面談時の複数人によるメモ作成、場合によっては防犯カメラの映像確保を徹底します。
・「お断り基準」の設定: 基準を超えた暴言や不当要求があった場合は、企業の判断として「これ以上の対応は打ち切ります」と毅然と対応を終了できる社内合意を作っておきます。
4. 被害に遭った従業員のメンタルケア
カスハラ被害に遭った従業員は、強い恐怖や「自分の対応が悪かったのではないか」という自責の念に駆られやすい傾向があります。
・組織による肯定: まずは「あなたは悪くない。毅然と対応してくれてありがとう」と組織として従業員を承認・保護することが、メンタル不調の予防に直結します。
・適切な専門家へのつなぎ: 強いショックを受けている場合は、速やかに産業医面談の手配やカウンセリングの案内を行います。
まとめ:顧客を守る前に、まずは「従業員」を守る
カスハラ対策は、単なるクレーム処理のルール決めではありません。貴重な人材がメンタル不調に陥り、退職してしまうのを防ぐための極めて重要な「安全配慮義務」の一環です。
自社のマニュアル等の見直しを行い、まずは相談しやすい環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。