2026年8月分 人事労務クイズ~セクシュアルハラスメント対策と懲戒処分の注意点~

問題  ∼ セクシュアルハラスメント対策と懲戒処分の注意点 ∼

法律上、企業に求められているセクハラ対策として、適切ではない措置はどれでしょうか

答え

【A】 相談窓口の設置

【B】 被害者への不利益取扱いの禁止

【C】 加害者の即時解雇

【C】 加害者の即時解雇

1. 法律が企業に義務付ける「セクハラ防止措置」の基本

男女雇用機会均等法に基づき、事業主は以下の措置を講じなければなりません。
・方針の明確化と周知:セクハラを行ってはならない旨の方針を就業規則等に明記し、全従業員に周知・啓発する。
・相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。
・被害者保護と不利益取扱いの禁止:相談や事実確認への協力を理由とした解雇等の不利益な扱いを禁止し、プライバシーを厳重に保護する。
・事後の迅速かつ適切な対応:事実関係を迅速に確認し、被害者への配慮措置と再発防止策を講じる。

2. 実務の落とし穴:「即時解雇」が招く新たな労務リスク

「悪質なハラスメントだからすぐクビだ」と感情的に処分を下すことは、会社にとって非常に危険な選択です。
・懲戒権濫用のリスク:事実確認が不十分なまま処分したり、初犯や言動の程度に対して重すぎる処分(解雇)を下すと、裁判で「不当解雇(懲戒権の濫用)」と判定され、多額のバックペイ(解雇期間中の給与支払)を命じられる恐れがあります。
・「弁明の機会」の付与:懲戒処分を行う際は、加害者とされる人物に対して客観的な事実を突きつけつつ、言い分を聞く「弁明の機会」を与える手続きが不可欠です。
・就業規則に基づく段階的処分:行為の悪質性、継続性、反省の態度などを総合的に判断し、戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇など、就業規則に定められた適切な段階の処分を選択します。

3. 被害者保護と二次被害の防止

加害者への処分の検討と並行して、被害者の安全と安心を確保することが最優先事項です。
・環境の緊急分離:事実確認を行っている段階であっても、必要に応じて席替えや部署の暫定移動、在宅勤務の活用など、両者を接触させない配慮を行います。
・二次被害(セカンドハラスメント)の防止:相談内容が周囲に漏洩しないよう徹底し、噂話や「被害者にも原因があったのではないか」といった不用意な言動から被害者を守ります。

まとめ:感情論を避け「規定と客観的事実」に基づいた対応を

セクハラ対策の本質は、誰もが安心して働ける環境を整えることです。被害者保護を速やかに行うと同時に、加害者への対応についても感情論ではなく「客観的な事実と就業規則」に基づき適正に行うことが、巡り巡って会社を法的なトラブルから守ることになります。