転倒・腰痛・ヒヤリハット… 高齢社員の事故が増える会社に足りない視点
杉山 晃浩
「ベテランだから安心していたんです」
労災事故が起きた会社で、よく聞く言葉です。
長年働いている。
現場を知っている。
作業にも慣れている。
だから大丈夫。
そう思っていた高齢社員が、ある日突然、
- 転倒
- 腰痛
- 骨折
- 熱中症
- ヒヤリハット事故
を起こしてしまう。
最近、こうしたケースが増えています。
しかも問題は、単なる“本人の不注意”では終わらないことです。
高齢社員の事故は、会社の職場環境や働かせ方そのものが原因になっているケースも少なくありません。
高齢社員の事故が増えている理由
今、多くの職場で高齢化が進んでいます。
背景にあるのは、
- 少子高齢化
- 人手不足
- 採用難
- 定年延長
- 70歳就業時代
です。
特に地方企業では、「高齢社員がいないと現場が回らない」という会社も増えています。
その一方で、年齢とともに身体には変化が起きます。
例えば、
- 筋力低下
- 視力低下
- バランス感覚低下
- 疲労回復力低下
- 判断速度低下
などです。
これは本人の努力不足ではありません。自然な変化です。
つまり、“昔と同じ働き方”を続けること自体が危険になっている場合があるのです。
事故は「突然」起きているわけではない
実は、多くの事故には前兆があります。
例えば、
- 最近つまずきやすい
- 階段を怖がる
- 動きが遅くなった
- 腰を押さえることが増えた
- 「疲れた」が増えた
こうした小さなサインです。
しかし現場では、
「まだ大丈夫」
「ベテランだから問題ない」
「本人も何も言わない」
として見過ごされることが少なくありません。
さらに怖いのが、“慣れ”です。
長年同じ作業をしていると、危険への感覚が鈍くなることがあります。
その結果、ヒヤリハットを放置し、大きな事故につながるケースもあります。
事故が増える会社には“共通点”がある
実際に、事故が多い会社には共通点があります。
人手不足で無理をさせている
今、多くの会社が人手不足です。
その結果、
- 重い物を持たせる
- 長時間労働
- 休憩不足
- 無理なシフト
などが起きています。
特に真面目な高齢社員ほど、「会社に迷惑をかけたくない」と無理をしてしまいます。
これが危険なのです。
「昔のやり方」を変えていない
昔は問題なかった作業でも、今の高齢化した職場では危険になることがあります。
例えば、
- 段差
- 滑りやすい床
- 暗い通路
- 手作業運搬
- 無理な姿勢
などです。
「今まで事故がなかったから」ではなく、“これからも安全か”という視点が必要です。
ヒヤリハットを共有できない
危険な会社ほど、ヒヤリハットが共有されません。
- 「これくらい大丈夫」
- 「言うほどではない」
- 「迷惑をかけたくない」
そんな空気があると、小さな危険が埋もれていきます。
そして、ある日突然、重大事故になります。
高齢社員の事故は“会社リスク”になる
高齢社員の事故は、本人だけの問題ではありません。
会社には、“安全配慮義務”があります。
つまり、安全に働ける環境を整える責任です。
もし事故が起きれば、
- 労災対応
- 人員不足
- 現場混乱
- 生産性低下
- 若手不安
- 採用悪化
など、多くの問題につながります。
さらに、熟練者が離脱すると、技能伝承にも大きな影響が出ます。
つまり、事故1件で会社全体が弱ることもあるのです。
事故を防ぐ会社は「高齢社員を戦力」として見ている
一方で、事故を減らしている会社もあります。
その共通点は、
「高齢社員を戦力として大切にしている」
ことです。
無理をさせない設計をしている
例えば、
- 作業分担
- 補助器具
- 時短勤務
- 休憩確保
- シフト配慮
などをしています。
「頑張れ」ではなく、“安全に働ける”設計をしているのです。
「経験」を活かす役割を作っている
高齢社員には、現場経験があります。
だからこそ、
- 若手教育
- 安全確認
- 品質管理
- クレーム対応
など、“経験を活かす役割”を持ってもらうことで、無理な負担を減らせます。
小さな異変を共有している
事故を防ぐ会社は、コミュニケーションがあります。
- 最近疲れていないか
- 腰は大丈夫か
- 危ない場所はないか
を自然に話せる空気があります。
つまり、“安全文化”があるのです。
必要なのは「高齢者対策」ではない
これから必要なのは、単なる高齢者対策ではありません。
本当に必要なのは、
「安全に活躍できる職場設計」
です。
- 高齢社員戦力化
- 健康経営
- 安全配慮
- 働き方改善
- 組織づくり
これらを一体で考える必要があります。
そして、高齢社員が安心して働ける会社ほど、若手社員も定着しやすくなるのです。
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「事故が起きてから」では遅い時代へ
高齢社員の事故は、本人だけの問題ではありません。
会社の、
- 職場環境
- 人員配置
- 働かせ方
- 安全文化
が大きく影響しています。
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