「賞与が多い会社」より “毎月安心できる会社”が選ばれる時代へ ― 中小企業が今こそ考えたい「賞与改革」という経営戦略
杉山 晃浩
「うちは賞与が多いから、人は辞めないはずだ」
そう思っている経営者は少なくありません。
しかし今、実際には――
- 賞与を出しているのに応募が来ない
- 若手が定着しない
- 初任給競争で負ける
- 人材紹介会社頼みになる
- 「生活が不安です」と退職される
そんな会社が増えています。
昔は、「ボーナス○ヶ月」が会社選びの大きな基準でした。
ですが今の若手は、少し考え方が違います。
彼らが見ているのは、
「年に2回の大きなお金」
よりも、
「毎月、安心して生活できるか」
なのです。
これは単なる価値観の変化ではありません。
物価高、奨学金、家賃、将来不安…。
若い世代を取り巻く環境そのものが変わっているのです。
だからこそ今、中小企業には「賞与改革」という考え方が必要になってきています。
若手社員は「将来の賞与」を信用していない
昔は、
「賞与で頑張りに報いる」
という考え方が一般的でした。
もちろん今でも賞与は嬉しいものです。
しかし若手社員の本音を聞くと、
- 「賞与って会社次第ですよね?」
- 「業績悪いと減るんですよね?」
- 「毎月の手取りが少ない方が困る」
- 「家賃と生活費で余裕がない」
という声が本当に増えています。
つまり、
“未来の大きなお金”
よりも、
“今の生活の安心”
を重視する時代になっているのです。
特に地方では、
- 車代
- ガソリン代
- 家賃
- 奨学金返済
などの固定支出が重く、
「月給が低い会社」
はかなり不利になっています。
スーパーホテルの「賞与改革」が話題になった理由
2026年5月、労働新聞で興味深い記事が掲載されました。
スーパーホテル は、決算賞与の一部を「業績連動手当」として月給に組み込みました。
しかも特徴的なのは、
「一律定額」
にしたことです。
全社員に月2万5000円を支給し、若手への配分を厚くしたのです。
さらに、
34歳まで支給する「若者応援手当」も新設。
結果として、新卒初任給は月30万円レベルまで引き上げられました。
ここで重要なのは、
「単なる賃上げ」
ではないことです。
会社は、
“若手が安心して働ける設計”
を作りにいったのです。
これは非常に大きなポイントです。
中小企業ほど「賞与頼み型」になっていませんか?
実は中小企業には、
「月給は低め。でも賞与で調整する」
という給与設計がかなり多く存在します。
経営者としては、
- 固定費を増やしたくない
- 業績に応じて調整したい
- 利益が出た時に還元したい
という気持ちがあります。
これは経営感覚として間違いではありません。
ただ、採用市場は大きく変わりました。
求職者は、
「この会社で生活できるか」
をかなり現実的に見ています。
求人票で、
- 基本給18万円
- 賞与4ヶ月
と書かれていても、
若手はまず、
「毎月18万円か…」
を見てしまうのです。
ここが、昔との大きな違いです。
「固定費が増えるから怖い」は本当に正しいのか
経営者からよく聞くのが、
「月給を増やすと固定費が怖い」
という言葉です。
確かにその通りです。
しかし今、本当に怖いのは、
“人が採れないこと”
ではないでしょうか。
例えば、
- 人材紹介料100万円
- 採用広告費
- 教育コスト
- 早期離職
- 現場崩壊
- 管理職疲弊
これらの損失は非常に大きいです。
しかも、
「人が辞める会社」
は、さらに採用が難しくなります。
つまり、
賞与を守ろうとして、
会社そのものの未来を失っているケースもあるのです。
若手が辞めない会社は「毎月の安心感」を設計している
最近、採用が比較的うまくいっている会社を見ると、
共通点があります。
それは、
「毎月の安心感」
を設計していることです。
例えば、
- 若手支援手当
- 住宅支援
- 食事補助
- 資格支援
- 資産形成支援
- 企業型DC
- 明確な昇給ルール
などです。
つまり、
「この会社なら将来が見える」
状態を作っているのです。
逆に、
- 評価が不透明
- 昇給が見えない
- 賞与頼み
- 手当が少ない
会社は、
若手からすると不安が強くなります。
ただし、賞与改革は“勢い”でやると危険です
ここは非常に重要です。
「じゃあ賞与を減らして月給を増やそう!」
と単純に進めると危険です。
例えば、
- ベテランとの逆転現象
- 不公平感
- 社会保険料増加
- 人件費硬直化
- 評価制度崩壊
などが起こる可能性があります。
また、
賃金規程や就業規則が整備されていない会社も非常に多いです。
つまり、
賞与改革とは、
“経営設計”
なのです。
単なる給与変更ではありません。
実は「賞与改革」は採用戦略でもある
ここを理解すると、見え方が変わります。
例えば求人票で、
「賞与4ヶ月」
より、
「毎月安定した収入設計」
の方が刺さるケースが増えています。
特に若手は、
- 安定感
- 将来設計
- 可処分所得
- 福利厚生
をかなり見ています。
だからこそ、
給与制度は、
“採用広告”
でもあるのです。
中小企業は「大企業と同じ戦い」をしなくていい
ここも大切です。
大企業と同じように、
単純な給与競争をしても勝てません。
しかし中小企業には、
- 柔軟な制度設計
- 小回り
- 手当設計
- 福利厚生
- 資産形成支援
- 経営者との距離感
という武器があります。
例えば、
企業型DCを活用しながら、
「将来資産形成ができる会社」
を打ち出すだけでも、印象はかなり変わります。
つまり、
“給料の額”
だけではなく、
“安心感の設計”
が重要なのです。
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「賞与を増やすか」
ではなく、
「どう設計するか」
の時代になっています。
もし、
- 若手採用が厳しい
- 応募が減っている
- 定着率が悪い
- 給与制度を見直したい
- 求人で選ばれる会社にしたい
と感じているなら、
一度、給与設計そのものを見直してみる時期かもしれません。
賞与改革は、
単なる人件費の話ではありません。
会社の未来を作る、
“採用戦略”
そのものなのです。