「もう来なくていい」が一番危ない メンタル不調社員対応で会社が壊れる理由
杉山 晃浩
「最近入った社員が、急に来なくなったんです…」
ここ数年、このような相談が本当に増えました。
- 朝になると動けない
- LINEが返ってこない
- 涙が止まらない
- 出社途中で動けなくなる
- 他社員とトラブルになる
- 突然「辞めたい」と言い出す
中小企業の経営者や人事担当者にとっては、かなり衝撃です。
しかも困るのは、
「どう対応していいかわからない」
という点です。
さらに厄介なのが、経営者側には悪気がないケースが多いことです。
「励ましたつもり」
「喝を入れたつもり」
「普通の指導のつもり」
だったのに、あとから
- パワハラ
- 労災
- 休職トラブル
- 退職強要
- 安全配慮義務違反
などの問題に発展してしまうケースがあります。
だからこそ、今の時代は“感情対応”ではなく、“会社としての対応ルール”が必要なのです。
「甘え」なのか「病気」なのかを会社が決めてはいけない
中小企業では、どうしてもこういう言葉が出やすいです。
- 「最近の若い子は弱い」
- 「気合いが足りない」
- 「みんな我慢している」
- 「社会人なんだから」
気持ちはわかります。
実際、経営者も現場も余裕がありません。
人手不足の中で、他社員がカバーしているケースも多いでしょう。
しかし、ここで会社側がやってはいけないのが、
「これは甘えだ」
と決めつけることです。
本当にメンタル疾患がある場合、本人も苦しんでいます。
しかも、メンタル不調は“見えない病気”です。
骨折のように目に見えません。
だからこそ、周囲が誤解しやすいのです。
ここで感情的に対応すると、一気に問題が悪化します。
社長の「一言」で会社が危険になる時代
昔は、
「根性が足りない!」
で済んでいた時代もあったかもしれません。
しかし、今は違います。
特に危険なのが、次のような発言です。
- 「そんなことで休むの?」
- 「みんな我慢している」
- 「気合いで乗り切れ」
- 「迷惑なんだよ」
- 「もう来なくていい」
これらは、あとから見ると、
- パワハラ
- 退職強要
- 精神的圧迫
と受け取られる危険があります。
しかも今は、
- 録音
- LINE保存
- SNS投稿
が普通の時代です。
「そんなつもりじゃなかった」
では済まなくなっています。
特に中小企業は、口コミダメージが大きいです。
採用難の時代に、
「あの会社は危ない」
という評判が広がると、応募そのものが止まります。
つまり、メンタル不調対応は“人事問題”ではなく、“経営問題”なのです。
一番危ないのは「放置」です
経営者が忙しい会社ほど、
「とりあえず様子を見る」
になりがちです。
しかし、実はこれが危険です。
例えば、
- 明らかに元気がない
- ミスが急増
- 遅刻・欠勤増加
- 攻撃的になる
- 無反応になる
などの兆候が出ているのに、会社が何もしないと、
「会社は異常を把握していたのに放置した」
と言われるリスクがあります。
これが後に、
- 労災申請
- 訴訟
- 安全配慮義務違反
へ発展することもあります。
もちろん、会社は病院ではありません。
診断もできません。
しかし、
「気づいた後にどう動いたか」
は重要なのです。
試用期間だから自由に切れる…は危険
中小企業で非常に多い誤解があります。
それが、
「試用期間だから辞めてもらえる」
という考えです。
確かに、試用期間中は本採用拒否が認められるケースもあります。
しかし、
- 手順
- 記録
- 指導履歴
- 配慮
- 面談
などが不十分だと、後で問題化することがあります。
特に危険なのが、
「メンタル弱そうだから」
という曖昧な理由です。
これは極めて危険です。
会社としては、
- 何が問題だったのか
- どのような指導をしたのか
- 改善機会を与えたのか
などを整理しておく必要があります。
感情論ではなく、“記録”が重要なのです。
周囲社員が壊れるケースも増えている
実は、経営者が見落としやすいのがここです。
メンタル不調者本人だけでなく、
“周囲社員”も疲弊していきます。
例えば、
- カバー業務増加
- 愚痴の受け皿化
- 現場の空気悪化
- 管理職疲弊
- 他社員の不満増加
です。
すると、
「頑張っている人が辞める」
という最悪の流れが起きます。
中小企業では、一人辞めるダメージが大きいです。
だからこそ必要なのが、
「優しさだけ」
でも
「厳しさだけ」
でもない、
“ルールに基づく対応”
なのです。
会社を守るのは「仕組み」です
では、どうすればよいのでしょうか。
ポイントは、
「属人的対応をやめる」
ことです。
つまり、
- 社長の気分
- 上司の感覚
- 現場判断
だけで対応しないことです。
具体的には、
- 面談ルール
- 相談窓口
- 休職制度
- 復職ルール
- ハラスメント対策
- 管理職教育
- 面談記録
などを整えていく必要があります。
ここで重要になるのが、就業規則です。
実は、就業規則は単なる“法律対策”ではありません。
会社を守るための「設計図」です。
特にメンタル不調対応では、
- 休職規定
- 復職判定
- 診断書提出
- 配置転換
- 勤務軽減
などをどう設計しているかで、後のトラブルが大きく変わります。
採用時に「見抜く」ことは難しい
経営者の中には、
「最初からわかっていたら採用しなかった」
という方もいます。
しかし、現実問題として、採用時点で完全に見抜くのは困難です。
本人も気づいていないケースがあります。
だからこそ必要なのは、
「採用後に問題が起きたとき、どう対応するか」
です。
そして今後は、
“メンタル不調者をゼロにする”
ではなく、
“問題化させない組織づくり”
が重要になります。
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「優しい会社」が生き残るわけではない
最後に、非常に重要なことを書きます。
これから生き残る会社は、
「優しい会社」
ではありません。
本当に生き残るのは、
“適切に対応できる会社”
です。
感情ではなく、
仕組みで対応できる会社です。
メンタル不調対応を間違えると、
- 人が辞める
- 採用できない
- 管理職が疲弊する
- 労災化する
- 裁判化する
という大きな経営リスクになります。
逆に言えば、
きちんと整備している会社は、
採用でも定着でも強くなります。
もし、
- うちの対応は大丈夫だろうか
- 就業規則が古い
- 管理職教育ができていない
- メンタル不調対応が属人的
という不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
特定社会保険労務士 杉山晃浩事務所では、
- 就業規則整備
- メンタル不調対応
- ハラスメント対策
- 管理職教育
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など、中小企業向けの実務支援を行っています。
「問題が起きてから」ではなく、
「問題が大きくなる前」に動くことが重要です。