面接で精神疾患・発達障害は見分けられる?採用担当者が知るべき正しい見極め方

杉山 晃浩

「面接では問題がないように見えたのに、入社後、仕事がうまく進まなかった」

「精神疾患や発達障害のある人を、面接で見分ける方法はないだろうか」

採用や入社後の対応で苦労した経験がある経営者ほど、このように考えるかもしれません。

特に中小企業では、採用した一人が職場に与える影響が大きいため、「採用の失敗を避けたい」と思うのは当然です。

しかし、最初に結論を申し上げると、通常の採用面接で、応募者に精神疾患や発達障害があるかどうかを正確に見分けることはできません。

また、表情、話し方、視線、受け答えなどから病気や障害の有無を推測し、それを採否の判断に使うことは、適切な採用方法とはいえません。

企業が面接で確認すべきなのは、病名の有無ではなく、その人が募集している仕事を遂行できるか、必要な支援や配慮があれば力を発揮できるかという点です。

今回は、「病気や障害を見抜く面接」から「仕事との相性を正しく確認する面接」へ切り替える方法を解説します。

表情や話し方だけで判断すると採用を誤る

「目を合わせないから発達障害かもしれない」

「質問への回答が遅いので、精神的な問題があるのではないか」

「落ち着きがないから、仕事も長続きしないだろう」

このような判断には、根拠がありません。

面接で緊張すれば、普段より表情が硬くなったり、回答に時間がかかったりします。考えてから丁寧に話す人もいれば、視線を合わせ続けることが苦手な人もいます。

反対に、受け答えが明るく流ちょうだからといって、入社後も問題なく働けるとは限りません。

精神疾患や発達障害の診断は、医師などの専門家が、本人の状態や生活への影響などを総合的に確認したうえで行うものです。

短時間の面接で、採用担当者が診断のような判断をすることはできません。

さらに、面接官が「このタイプは危ない」という先入観を持つと、その考えに合う言動ばかりを探すようになります。

その結果、本来は仕事に必要な能力を持っている応募者を不採用にしたり、反対に、面接が得意なだけの人を高く評価したりする可能性があります。

見た目や印象から病名を推測することは、応募者を傷つけるだけでなく、会社にとっても採用の精度を下げる行為なのです。

採用選考の基準は「その仕事に必要かどうか」

厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の適性と能力に基づいて採用することを求めています。

面接の質問や評価基準は、募集する仕事に必要な能力を基準に、あらかじめ決めておくことが大切です。

障害や難病があることだけを理由に、特定の応募者を一律に排除することも、公正な採用選考とはいえません。

詳しくは、厚生労働省「公正な採用選考の基本」をご確認ください。

たとえば、経理担当者の採用であれば、確認すべきなのは次のような内容です。

  • 数字を正確に取り扱えるか
  • 締切から逆算して仕事を進められるか
  • 不明点を確認できるか
  • 間違いに気づいたとき、報告して修正できるか
  • 必要なパソコン操作ができるか

精神疾患や発達障害があるかどうかは、これらの能力と同じものではありません。

障害などがあっても、仕事の内容や進め方が本人に合えば、十分に力を発揮できる人はいます。

一方、診断を受けていない人であっても、確認せずに仕事を進める、期限を守らない、ミスを報告しないという問題が起きることはあります。

採用で重要なのは、病名を探すことではありません。

仕事で必要となる行動を、実際に取れる人かどうかを確認することです。

面接前に「仕事の現実」を具体的にする

応募者を正しく評価するには、会社側が仕事の内容を明確にしておかなければなりません。

「臨機応変に対応できる人」

「コミュニケーション能力の高い人」

「ストレスに強い人」

このような条件だけでは、何ができれば採用なのか判断できません。

たとえば「臨機応変に対応する」を、次のような具体的な行動へ置き換えます。

「一日に複数回、予定外の依頼が入る」

「依頼が重なった場合は、上司へ優先順位を確認する」

「お客様からの電話に対応しながら、パソコンへ内容を入力する」

ここまで具体的にすると、応募者も仕事をイメージしやすくなり、面接官も同じ基準で評価できます。

静かな環境で一つずつ作業する仕事と、電話や来客が多く、予定が頻繁に変わる仕事では、求められる行動が異なります。

仕事の内容を曖昧にしたまま応募者の性格を評価すると、結局は面接官の好みで採否が決まってしまいます。

面接の前に、次の三つを整理しておきましょう。

  • 必ず担当してもらう仕事
  • 仕事を進める際に起きやすい状況
  • 入社後に教育できることと、採用時点で必要なこと

これだけでも、面接の質問は大きく変わります。

「できますか」ではなく過去の行動を聞く

「忙しいときでも対応できますか」

「人間関係のストレスに強いですか」

このような質問には、多くの応募者が「はい」と答えます。

それだけでは、実際の仕事でどのように行動するかはわかりません。

そこで、過去の具体的な経験を聞きます。

「複数の仕事が同時に入った経験を教えてください。そのとき、どのように優先順位を決めましたか」

「指示の内容がわからなかったとき、どのように確認しましたか」

「予定が急に変わったとき、どのように対応しましたか」

「仕事でミスをした経験と、その後に取った行動を教えてください」

「一人で解決できない問題が起きたとき、誰に、どの段階で相談しましたか」

回答を評価するときは、話の上手さより、行動の具体性を確認します。

状況を理解し、自分なりに判断し、必要な人へ相談し、結果を振り返っているかが重要です。

また、応募者全員に同じ基本質問を行い、同じ評価基準で記録します。

面接官によって質問が大きく違う状態では、応募者を公平に比較できません。

病歴を直接聞けばよいわけではない

採用担当者が不安になると、次のような質問をしたくなるかもしれません。

「精神疾患になったことはありますか」

「発達障害の診断を受けていますか」

「今、薬を飲んでいますか」

「過去に休職したことはありますか」

しかし、健康情報は慎重な取扱いが必要な個人情報です。

個人情報保護委員会は、健康情報を取り扱う場合、利用目的や取得方法などに十分配慮するよう求めています。情報の内容によっては「要配慮個人情報」に当たり、原則として本人の同意が必要になります。

詳しくは、個人情報保護委員会「雇用管理分野における健康情報の取扱い」をご確認ください。

採用選考で健康情報を確認する必要がある場合でも、何でも聞いてよいわけではありません。

仕事の安全な遂行などに照らして、客観的かつ合理的に必要な範囲へ限定し、情報を取得する目的や管理方法を明確にする必要があります。

「念のため」「採用後に困りたくない」という理由だけで、応募者全員の病歴や通院歴を詳しく聞くことは避けましょう。

家族の病歴や障害について尋ねることも、本人の仕事の能力とは関係がありません。

配慮の必要性は病名ではなく仕事との関係で確認する

応募者が仕事をするうえで、何らかの配慮を必要としている場合があります。

このときも、診断名を詳しく聞き出すことが目的ではありません。

たとえば、次のように確認します。

「当社で働くにあたり、面接や業務上、配慮してほしいことはありますか」

「ご説明した業務を行ううえで、会社へ事前に相談しておきたいことはありますか」

「業務内容や職場環境について、確認しておきたいことはありますか」

応募者から希望が示された場合は、その配慮が必要な場面、具体的な方法、会社で実施できる範囲を話し合います。

合理的配慮には、一律の正解があるわけではありません。

たとえば、口頭の指示に加えて要点を文書で渡す、作業の優先順位を明確にする、面接時の支援者の同席を検討する、筆談や試験時間の調整を行うなどが考えられます。

厚生労働省の合理的配慮指針にも、募集・採用時や採用後の具体例が掲載されています。

ただし、応募者の希望をすべて無条件に受け入れるという意味ではありません。

仕事内容、会社の設備、費用、ほかの社員への影響などを踏まえ、本人と話し合いながら実施可能な方法を探します。

面接記録には「印象」ではなく「事実」を残す

面接後の記録に、次のような言葉を残していないでしょうか。

「メンタルが弱そう」

「少し変わっている」

「空気が読めなさそう」

「発達障害のように感じた」

これらは、面接官の印象や推測であり、採用判断の根拠として適切ではありません。

記録するのであれば、仕事に必要な評価項目と、確認できた事実を残します。

たとえば、「説明が一度で理解できなかった」ではなく、「作業手順の説明後、応募者から確認質問が三つあり、最後に本人が手順を要約できた」と記録します。

「コミュニケーションが苦手そう」ではなく、「顧客から苦情を受けた経験について、上司への報告内容と再発防止策を具体的に説明できた」と記録します。

事実を残せば、別の面接官も判断の妥当性を確認できます。

また、病気や障害に関する情報を取得した場合は、閲覧できる人を限定し、採用選考に必要な範囲を超えて社内共有しないことも重要です。

採用後の問題をすべて本人の特性にしない

入社後にミスや遅れが続くと、会社は本人の性格や障害を原因にしたくなります。

しかし、実際には会社側の受入体制に問題があることも少なくありません。

指示する人によって内容が違う。

何を優先するか決まっていない。

教育担当者が不在で、質問できない。

業務手順が文書化されていない。

注意するときに、人格まで否定している。

このような職場では、障害の有無にかかわらず、新入社員は力を発揮しにくくなります。

採用面接の精度を高めることと、入社後の教育を整えることは一体です。

仕事の手順、相談先、報告の時期、期待する水準を明確にすることは、特定の人だけではなく、すべての社員にとって働きやすい環境づくりにつながります。

無料の「公正採用面接チェックシート」をご用意しました

「今の面接方法が、病気探しや印象評価になっていないか確認したい」

「何を質問し、どのように評価すればよいかわからない」

そのような経営者、人事責任者のために、「病気を見抜かず、仕事との適合性を確認する 公正採用面接チェックシート」を作成しました。

次の6分野、全26項目を確認できます。

  • 職務と評価基準の準備
  • 質問内容の公正性
  • 行動事実の確認
  • 健康情報・個人情報の取扱い
  • 合理的配慮への対応
  • 面接記録と採否判断

プルダウンで現在の状態を選択すると、点数、達成率、分野別判定、総合判定が自動表示されます。

また、病名を聞く、見た目から障害を推測する、配慮の申出だけで不採用にするなど、特に注意が必要な運用には「重要警告」が表示されます。

面接ですぐ使える質問例と、不適切になりやすい質問の言い換え例も収録しています。

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見抜くべきなのは病気ではなく、仕事との相性

採用面接の目的は、応募者の病気や障害を見破ることではありません。

その人が、募集している仕事でどのように行動できるかを確認することです。

病名を探そうとすると、面接官は表情や話し方に気を取られ、本当に確認すべき能力を見落とします。

一方、仕事を具体的にし、全員へ同じ基本質問を行い、過去の行動を事実として確認すれば、採用判断の精度は上がります。

必要な配慮についても、診断名だけで決めつけず、本人と具体的に話し合うことが大切です。

まずは、自社の面接票に「メンタルが強そう」「明るい」「普通に見える」といった曖昧な評価が残っていないか確認してください。

そして、「この仕事で必要な行動を確認できる質問になっているか」という視点で、面接方法を見直してみましょう。

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※本記事は採用実務に関する一般的な情報です。個別の採用判断や健康情報の取得・管理については、社会保険労務士、弁護士、産業医、ハローワークなどの専門機関へご相談ください。

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