中小企業の未来を変えるインターンシップ活用術 ― 採用・育成・業務改善の一石三鳥戦略 第4回:業務改善・マニュアル化のチャンス!学生に教える過程が“組織力”を強くする
杉山 晃浩
インターンシップ受け入れの目的は「採用」や「教育」だけではありません。実は、インターン生に仕事を教えるという行為が、結果的に業務の見直しや改善、そして組織力の向上にまでつながっていく――そんな現象が、実際の現場で多数起きています。
今回は、インターンシップを通じて中小企業の業務がどのように「見える化」され、「改善」され、そして「仕組み」として根づいていくのか。その効果を具体的な例とともに解説します。
1.「教えるためには、業務を整理しなければならない」という前提
インターン生に仕事を任せるためには、「何を・いつ・どうやってやるか」を説明できなければなりません。つまり、業務内容の棚卸しと構造化が必須になるのです。
普段、長年働いている社員が無意識にこなしている作業は、言語化されていないケースが多く、「何となく」や「慣れ」で動いている部分が多々あります。
インターン生に教えるときには、以下のような問いが生まれます:
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なぜこの順番で作業をしているのか?
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この仕事は誰が担当するべきか?
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教える時にどこに注意させるべきか?
この問いへの回答を用意するプロセスそのものが、業務の見直し・見える化・マニュアル化の第一歩になります。
2.実際の変化①:手順書の整備が進む
宮崎県内のある製造業では、インターン受け入れを機に、それまでベテラン職人の“頭の中”にしかなかった製品検査工程を、写真付きの手順書としてまとめ直しました。
インターン生に分かりやすく説明する必要があったからです。
結果として、
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新入社員の育成時間が半分以下に短縮
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品質チェックのばらつきが減少
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属人化していた技術の継承が進んだ
という副次的な効果が生まれました。
3.実際の変化②:業務改善の“気づき”が現場から生まれる
別のIT企業では、インターン生が担当した業務日報の入力作業に関して、「このExcelファイル、操作が難しくて分かりづらいです」と素直なフィードバックを残してくれました。
これをきっかけに社内で改めて議論が起こり、
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ファイルの統合と整理
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マクロや自動化ツールの導入
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社員向け操作マニュアルの新設
など、業務そのものの効率化につながったのです。
学生の視点は、固定化された社内の当たり前に風穴を開けてくれます。これこそ、インターンシップの“外からの風”効果です。
4.実際の変化③:“教える文化”がチームを成長させる
インターン生を受け入れると、現場では「誰が、どのように、何を教えるか」という連携が必要になります。ここに、社員同士のコミュニケーションと情報共有が発生します。
これまで、各自が自分の仕事だけに集中していた職場が、
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「この説明、こうした方が伝わりやすいよ」
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「この作業、二人で教えた方がいいかも」 といったやり取りを通じて、チームとしての連携強化が進んでいきます。
教えるためには、分かりやすく伝える必要があり、分かりやすく伝えるためには、共通の言葉や考え方が必要です。
これが、社内の“教育スキル”や“説明の標準化”として蓄積され、組織力=チームの再現性と一体感を育むのです。
5.マニュアルは“学生のため”であり“会社の資産”である
学生に教えるために作った手順書やチェックリスト、OJTメモ――それらは、すべてそのまま自社の教育資産になります。
一度作っておけば、
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新入社員研修で使える
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アルバイトやパートへの説明にも転用できる
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外注先や提携先との連携資料としても活用可能
「教えるための準備」は、「会社の土台を整える」こととイコールなのです。
さらに、マニュアルづくりには社員自身の“頭の整理”という副次効果もあります。書き出すことで、「無駄な工程」「改善できる手順」にも自然と気づくようになります。
まとめ:インターンシップは“業務改善プロジェクト”でもある
中小企業にとって、インターンシップの受け入れは「採用活動の一部」にとどまりません。それは、
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属人化の打破
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教育資料の整備
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業務フローの見直し
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社員間の連携強化
といった経営基盤そのものの強化プロセスなのです。
インターンシップとは、学生に学びの場を提供する制度であると同時に、企業自身が成長する機会でもあります。だからこそ、短期間の受け入れであっても、「教える設計」に本気で取り組む価値があるのです。
次回は、実際にインターンシップを通じて企業が得た“成果”や“広報効果”に焦点をあて、社外からの評価や採用活動への波及効果について紹介していきます。
▼ 第5回:「学生の声が企業の未来をつくる!インターンがもたらす採用力とブランド力」