「明日から来なくていい」は危険です ― 通勤中のひき逃げ事故で社員が逮捕されたときの正しい対応
杉山 晃浩
「所長、大変です…」
ある朝、社長から慌てた電話が入ります。
「うちの社員が、通勤途中に交通事故を起こして、そのまま逃げたらしいんです。警察に逮捕されたって家族から連絡がありました。」
しかも、被害者はケガをしている。
ニュースになるかもしれない。
取引先に知られるかもしれない。
現場もザワついている。
すると、多くの経営者が最初にこう考えます。
「もうクビだろ」
「会社に迷惑をかけたんだから当然だ」
「明日から来なくていい」
しかし、この“感情的な初動対応”が、あとで会社を危険にすることがあります。
実は、社員の逮捕や交通事故対応は、会社側が間違えると、
・不当解雇
・懲戒トラブル
・未払い賃金請求
・労働審判
・SNS炎上
・取引先信用低下
につながることがあります。
特に最近は、ネット上に「会社対応は違法だ」という情報も増えています。
昔のように、
「社長が怒ったから終わり」
では済まない時代です。
だからこそ、中小企業ほど“冷静な初動対応”が必要になります。
「ひき逃げ=即解雇」は本当に正しいのか
まず大事なのは、
逮捕=有罪ではない
という点です。
警察に逮捕されたとしても、まだ裁判で有罪が確定したわけではありません。
さらに、交通事故にもいろいろあります。
・本当に故意だったのか
・パニック状態だったのか
・本人は気づかなかったのか
・飲酒はあったのか
・被害は軽傷か重傷か
・示談の可能性はあるのか
内容によって重さは大きく変わります。
しかし、会社側が事情確認をほとんどしないまま、
「会社のイメージが悪くなるから解雇!」
と動くケースも少なくありません。
これはかなり危険です。
なぜなら、就業規則に根拠が弱かったり、調査不足だったりすると、会社側が負けるケースもあるからです。
特に中小企業では、
・懲戒規定が古い
・私生活上の問題への記載がない
・弁明機会を与えていない
・社長判断だけで進めている
ということが珍しくありません。
つまり、
“社員の問題”が、
“会社の労務問題”に変わる
のです。
会社がまず確認すべきこと
こういう時ほど、経営者は落ち着く必要があります。
最初に確認すべきなのは、次のような点です。
事故の内容
単なる接触事故なのか、重大事故なのか。
被害者状況
ケガの程度はどうか。
警察対応
逮捕なのか、任意聴取なのか。
本人の説明
本人は認めているのか。
会社への影響
報道・SNS・取引先影響はあるか。
出勤可能か
勾留されているのか。
就業規則
懲戒規定は整備されているか。
ここを整理しないまま動くと危険です。
実際には、
「社長が怒ってLINEで解雇通知」
みたいなケースもあります。
しかし、これが後から大問題になることがあります。
実は会社も見られている
社員が問題を起こすと、
世間は社員だけを見ているわけではありません。
実は、
「会社がどう対応したか」
も見られています。
たとえば、
・隠蔽しようとした
・SNSで内部情報が漏れた
・社内で犯人扱いした
・本人家族へ過剰圧力をかけた
・退職強要した
こうした対応は、二次炎上につながります。
特に今は、家族や知人がSNSに書き込むケースもあります。
すると、
「この会社ヤバい」
という話が一気に広がります。
つまり、
問題社員対応は、
“会社の危機管理”でもある
のです。
自宅待機はどう考える?
よくあるのが、
「とりあえず出勤停止にしたい」
という相談です。
これは実務上よくあります。
ただし、自宅待機にも注意点があります。
たとえば、
・賃金を払う必要があるか
・期間は妥当か
・命令根拠はあるか
・業務上必要性はあるか
などです。
適当に
「来るな」
だけでは危険です。
特に、本人がまだ有罪確定していない場合、
“会社都合扱い”
の問題になることもあります。
だからこそ、
就業規則の整備
処分フロー整備
が重要になります。
「うちは小さい会社だから」が一番危ない
中小企業の経営者からよく聞く言葉があります。
「うちは小さい会社だから、そんな大げさなことにはならない」
しかし、今は違います。
スマホ1台で、
誰でも情報発信できる時代です。
しかも最近は、
・ドラレコ
・防犯カメラ
・SNS拡散
・ネットニュース
によって、地方でも一気に情報が広がります。
さらに、人手不足の時代です。
会社の評判悪化は、
採用にも大きく影響します。
つまり、
問題社員対応が、
“採用問題”にもつながる
のです。
就業規則が古い会社ほど危険
ここで大事になるのが就業規則です。
ところが、多くの会社では、
・10年以上見直していない
・昔のひな形
・ネットの無料規則
・実態と合っていない
という状態があります。
これでは危険です。
特に、
・懲戒規定
・私生活上の非違行為
・信用失墜行為
・自宅待機
・SNS問題
あたりは、現代型リスクに合わせて整備が必要です。
昔は存在しなかったリスクが、今は山ほどあります。
だから私は、
就業規則は
「会社を守る保険」
だと思っています。
しかも、攻めにも守りにも使えます。
感情対応が会社を壊す
問題社員対応で一番危険なのは、
社長の怒り
です。
もちろん、怒る気持ちはわかります。
被害者がいる事故ならなおさらです。
しかし、経営者が感情だけで動くと、
・違法処分
・裁判
・離職連鎖
・社内不信
・採用悪化
につながります。
特に若い世代ほど、
「会社が冷静か」
を見ています。
つまり、
問題発生時に、
会社の本性が出る
のです。
だから“初動対応”が重要になる
実は、問題社員対応は、
最初の48時間
くらいで方向性が決まることが多いです。
最初に混乱すると、
その後ずっと尾を引きます。
だからこそ、
・誰が判断するか
・何を確認するか
・どこまで聞くか
・どう記録するか
・どの専門家に相談するか
を整理しておく必要があります。
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このチェックシートでは、
・社員逮捕時の初動確認
・やってはいけないNG対応
・懲戒処分前の確認事項
・自宅待機判断
・就業規則確認
・専門家相談目安
などを、プルダウン形式で簡単に確認できます。
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も自動で出るようにしてあります。
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最後に
社員の問題行動は、
いつどこの会社でも起こりえます。
大事なのは、
「問題が起きない会社」
ではなく、
「問題が起きた時に崩れない会社」
を作ることです。
そのためには、
・就業規則
・初動対応
・管理職教育
・懲戒ルール
・相談体制
が必要になります。
もし、
「うちの規則で大丈夫かな…」
「この処分、危なくないかな…」
「感情で動きそうで不安…」
と思ったら、
早めに専門家へ相談してください。
問題社員対応は、
“正義感”だけでは会社を守れない時代になっています。