「もうダメだ…」と思った瞬間、答えが浮かんだ──社労士試験とそら豆の思い出
杉山 晃浩
令和8年度の社会保険労務士試験は8月23日に実施されます。
今ごろ受験生の皆さんは、最後の追い込みに入っていることでしょう。
参考書や問題集とにらめっこしながら、「本当に間に合うのだろうか」「覚えたはずなのに忘れてしまう」と、不安な日々を過ごしている方も少なくないと思います。
そんな受験生の姿を見るたびに、私自身が受験勉強をしていた頃のことを思い出します。
今となっては笑い話ですが、当時は本気で悩み、本気で焦り、本気で合格したいと思っていました。
そして、その頃の思い出には、なぜか「そら豆」が欠かせません。
今よりも厳しかった(ような気がする)社労士試験
私が受験した頃の社労士試験は、現在とは試験制度が異なっていました。
当時は記述式試験がありました。
選択肢の中から選ぶのではなく、自分で言葉を書かなければなりません。
当然ながら、
- 言葉そのものを覚えていなければならない
- 漢字を間違えてはいけない
- 空欄のままでは点数にならない
という世界です。
今振り返ると、かなり緊張感のある試験でした。
さらに恐ろしかったのが「足切り」です。
総得点が高くても、特定科目の点数が基準に達しなければ不合格になります。
「全体では合格点なのに不合格」
ということが普通に起きる試験でした。
社労士試験が難関資格と言われる理由の一つは、この足切り制度にあると言っても過言ではありません。
小倉祇園太鼓がうるさくてイライラしていた私
私が受験勉強をしていた頃、住んでいたのは北九州市でした。
ちょうど試験直前の時期になると、小倉の街では小倉祇園太鼓の練習が始まります。
夜になると、
ドンドコドンドコ……
ドンドコドンドコ……
と太鼓の音が街中に響き渡ります。
本来なら地域の伝統行事ですから素晴らしいことです。
しかし、受験生だった当時の私はそんな余裕がありません。
参考書を開きながら、
「頼むから静かにしてくれ……」
と本気で思っていました。
今思うと本当に恥ずかしい話です。
太鼓を叩いていた人たちは何も悪くありません。
悪いのは余裕を失っていた私です。
しかし、それほどまでに追い込まれていたのも事実でした。
受験勉強とは、それだけ人を狭い視野にしてしまうものなのかもしれません。
「記憶力が上がる」と聞いて飛びついた
そんなある日です。
テレビでみのもんたさんのテレビ番組を見ていました。
その中で紹介されていたのが、
「そら豆の皮は記憶力向上に役立つ可能性がある」
という話でした。
番組内では実験も行われており、記憶力が向上したという結果が紹介されていました。
今なら、
「本当に科学的根拠はあるのだろうか」
と冷静に考えるかもしれません。
しかし当時の私は受験生です。
藁にもすがりたい気持ちでした。
そこで私は即座に行動しました。
冷凍食品売り場でそら豆を購入し、毎日食べ始めたのです。
しかも皮ごとです。
朝食で食べる。
昼食で食べる。
夕食で食べる。
一日10粒程度を目安に、毎日のように食べ続けました。
家族から見れば、
「この人はなぜ毎日そら豆を食べているのだろう」
と思われていたかもしれません。
それでも私は真剣でした。
少しでも合格に近づきたかったのです。
試験会場で見た光景
そして迎えた試験当日。
当時の社労士試験は、午前中に記述式試験が行われていました。
試験が始まると、会場内の空気は一気に張り詰めます。
鉛筆を走らせる音だけが聞こえる静かな空間。
しかし、試験が終わると異変が起きます。
問題が難しかったのです。
手応えを失った受験生たちが次々と帰り始めました。
「もうダメだ」
そう思ったのでしょう。
午後の試験を受けずに帰る人も少なくありませんでした。
午前中には満席だった大きな大学の講義室が、午後には驚くほど空いていました。
ポツン。
ポツン。
と受験生が座っている。
そんな光景を今でも覚えています。
私にも訪れた「もうダメだ」の瞬間
実は私自身も危ない場面がありました。
ある問題で、どうしても空欄に入る言葉が思い出せなかったのです。
覚えたはずなのに出てこない。
参考書では何度も見た。
模擬試験でも解いた。
それなのに出てこない。
焦れば焦るほど頭が真っ白になります。
受験経験のある方なら分かると思います。
知っているはずなのに思い出せない。
あの絶望感です。
私は心の中で思いました。
「もうダメかもしれない……」
と。
突然、答えが浮かんだ
ところがです。
しばらくして、不思議なことが起きました。
突然、頭の中に言葉が浮かんできたのです。
まるで誰かが教えてくれたかのように。
「あっ!」
と思いました。
急いで解答欄に書き込みました。
もちろん、これが本当にそら豆のおかげだったのかは分かりません。
科学的に証明できる話でもありません。
偶然だったのかもしれません。
単なる思い込みだったのかもしれません。
しかし、私にとっては間違いなく「奇跡の瞬間」でした。
そして、その後無事に合格することができました。
合格を支えるのは最後の最後の執念
今では社労士として多くの受験生や若手社労士と接する機会があります。
その中で感じることがあります。
合格する人は、最後まで諦めません。
試験直前になっても勉強する。
試験会場に行く。
最後の1問まで考える。
途中で投げ出さない。
結局のところ、それが合格を引き寄せるのだと思います。
そら豆を食べることが合格につながるとは言いません。
しかし、
「何としてでも受かりたい」
という気持ちが私をそら豆売り場へ向かわせたことは間違いありません。
そして、その執念が最後の一押しになったのかもしれません。
今年受験する皆さんへ
社労士試験まであと少しです。
不安になるのは当たり前です。
覚えたことを忘れてしまうのも当たり前です。
模試の結果が悪くても、本番で逆転する人はたくさんいます。
だから最後まで諦めないでください。
試験会場で「もうダメだ」と思う瞬間があるかもしれません。
私にもありました。
それでも最後まで問題を見続けてください。
もしかすると、その瞬間に突然答えが浮かんでくるかもしれません。
そしてもしスーパーでそら豆を見かけたら、ぜひ思い出してください。
昔、小倉祇園太鼓にイライラしながら、毎日そら豆を食べ続けた一人の受験生がいたことを。
その受験生は、後に社会保険労務士となり、今こうして皆さんを応援しています。
今年受験されるすべての皆さんの健闘を心から祈っています。頑張ってください。
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